Evolutionary patterns of host type and chasmothecial appendage morphology in obligate plant parasites belonging to Cystotheceae (powdery mildew, Erysiphaceae)

 ウドンコカビの裂子嚢殻付属糸は越冬戦略における重要な機能を有しており、異なる宿主タイプへのシフトに伴って進化してきたと考えられている.しかし,宿主タイプと付属糸形態の進化過程や進化的関係について,系統情報に基づく統計モデルによる検証はまだなされていない.

 本研究では,系統比較法(Phylogenetic Comparative Methods, PCMs)を用い,Cystotheceaeの宿主タイプと付属糸形態の進化過程を推定し,これらの形質の進化的関係について検証することを目的とした.

 宿主タイプの祖先状態推定により,Cystotheceaeでは落葉樹型が最も祖先的であり,草本型は4回,常緑樹型は2回,それぞれ二次的に進化したと推定された.付属糸形態の祖先状態推定では,分岐型と渦巻型が最も祖先的であり,菌糸型と未発達型がそれぞれ3回と1回,二次的に進化したと推定された.ランダムフォレストの結果,宿主タイプは系統的距離と付属糸形態から高確率で予測可能であることがわかった.また,宿主タイプと付属糸形態の祖先状態推定から,これらの形質状態の同時的なシフトが複数の祖先ノードで生じていることが示唆された.この結果は,宿主タイプと付属糸形態の間に何らかの機能的な関係があることを示唆している.一方,系統樹全体で見た場合,これらの形質間において統計的に有意な進化的依存関係は検出されなかった.

 本研究により,Cystotheceaeの形質進化研究におけるPCMsの有用性が示された.PCMsをより広範なウドンコカビ系統に適用することで,植物絶対寄生菌の表現形質の進化過程進化的関係の解明に貢献するだろう.

図.宿主タイプの祖先状態推定.

図.付属糸形態の祖先状態推定

Shirouzu T., Suzuki T.K., Matsuoka S., Takamatsu S.

Evolutionary patterns of host type and chasmothecial appendage morphology in obligate plant parasites belonging to Cystotheceae (powdery mildew, Erysiphaceae).

Mycologia, 114, pp.35–45, 2022

Abstract