Sequence analyses of the 28S rRNA gene D1/D2 region suggests Dacrymyces (Heterobasidiomycetes, Dacrymycetales) is polyphyletic
博士論文につながるアカキクラゲ研究第1弾.
アカキクラゲ類(用語解説1)は担子菌類の中でも進化史の初期に出現した木材腐朽菌と考えられており,木材分解者の進化を考える上で注目に値するグループである.本菌群の多様性や生態を解明することから,木材腐朽菌の進化と陸上生態系の発達史に関する理解を深めることができると考えている.
本研究では核rRNA遺伝子を用いた分子系統解析により,アカキクラゲ目内の系統関係を推定した.結果,目内の高次の系統関係を解くことはできなかったが,主要な属である Dacrymyces が多系統群(系統的に雑多な群)である可能性が示された.これにより,アカキクラゲ目内の科や属レベルの分類は再考を迫られる.
従来,アカキクラゲ目の科・属レベルの分類では担子器果(きのこ)の形態が重視されてきたが,この分類基準では系統を反映した分類体系を構築できていない.この結果を受けて,アカキクラゲ類の属分類における新たな分類基準について議論した.
図.アカキクラゲ目の最尤系統樹
【用語解説1】アカキクラゲ類
キクラゲ類に似たゼラチン質の子実体を形成するが,キクラゲ類とは系統的に異なる担子菌類.その多くは木材を分解して生活しており,オレンジや黄色の美しいきのこを形成する.アカキクラゲ類は森林生態系における重要な分解者であり,木材を分解する担子菌類の進化を考える上で注目されるグループである.しかし,本菌群の多様性や生態についてはまだよくわかっておらず,特に日本では70年以上前になされた研究以降まとまった報告がない.
Shirouzu T., Hirose D., Tokumasu S.
Sequence analyses of the 28S rRNA gene D1/D2 region suggest Dacrymyces (Heterobasidiomycetes,
Dacrymycetales) is polyphyletic.
Mycoscience, Springer Japan, 48, pp388–394, 2007