07.05/31:長谷川秀樹:コルシカ島の民族音楽 伝統的ボーヂェから現代音楽ポリフォニーへ

投稿日: 2012/05/24 7:49:52

コルシカ島

中川はいつも授業内容をパソコンでノートを取りながらネットで関連事項を調べてここに記す内容を作成しているのですが、今日は、「コルシカ島」関連のことを調べるとたいていどれも最後には「長谷川秀樹」という名前がついている、という状況に遭遇しました。

コルシカ島といえばせいぜい「ナポレオンの出身地」という程度の知識しかない我々は、今日、日本で一番「コルシカ島」に詳しい人の話を聞いたようです。

音楽の話に限定せずに、他のいろいろな話も聞きたかったところですね。

参考

長谷川秀樹 2002 「コルシカ島(フランス)における伝統音楽とその再生」 『千葉大学社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書 新しい地域文化の形成』85: 1-16。

:長谷川秀樹 2002 『コルシカの形成と変容―共和主義フランスから多元主義ヨーロッパへ』 東京:三元社

コルシカ島ガイド NPO法人日本コルシカ協会ホームページ

コルシカ島の民族音楽 - Wikipedia

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とはいえ今日は、「コルシカ島の音楽」の検討でした。

基本的には、コルシカ島に昔からあった「声の文化(ボーヂェ voce)」を紹介した後、現代のコルシカ島の音楽(コルシカン・ポリフォニー)を紹介する、という流れでした。

「ポイント」というものの設定が難しい回ですが、そうですね、こうしましょう。

今日のポイントは、コルシカ島には、音楽だとは言えないかもしれない「声の文化(voce)」があったが、それは、1980年代のワールド・ミュージック・ブームに乗じて「コルシカン・ポリフォニー」という現代の音楽として拡大していった、ということでした。

ということにしましょう。

実際はちょっと違いますが、詳しくは、長谷川先生にもらったスライドを見て今日の授業を思い出してください。このページの一番下に貼り付けておきます。

◯伝統的ボーヂェvoceの事例

古くはホメロス『オデュッセイヤ』(BC8)に、コルシカの羊飼いが「声を掛け合う」姿が描かれているけれど、それはコルシカ島のことかどうかは確証がないらしいです。

でも、コルシカ島にカトリック(=グレゴリオ聖歌)が導入される12世紀以前に、賛美歌とは異なる形態の歌があったことは確実で、その特徴は、地中海帯状地域に多い「ポリフォニー(多声合唱)」の民族音楽だったと思われる、とのことでした。で、それをvoceと呼ぶ、とのことです。

ちなみに、初めて「国歌」が制定されたのは、1755年にコルシカが独立した時に「国歌」が制定された時だそうです。

その時から今でも「コルシカ民族歌」と位置づけられているのが以下の歌です。

◯コルシカン・ポリフォニー

戦後、伝統的な声の文化が急速に衰退した後、1960年代に再評価の機運が高まり、80年代以降の「ワールド・ミュージック」ブームに乗じて拡大したのが、現代版「コルシカン・ポリフォニー」だそうです。

以下の様なグループが代表だそうです。

興味深かったのは、コルシカのグループはだいたいプロではなくて兼業しており、「文化団体」としてフランス政府からお金をもらって活動を継続している、とのことです。以下のように「プロのような音楽家」なのに、タクシー運転手などの仕事と兼業してるそうです。

I MuvriniA FilettaSurghjentiCanta u Populu Corsu

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授業中に使わなかったボーヂェの説明図
2012-05-31-長谷川秀樹-音響文化その1.pptx
2012-05-31-長谷川秀樹-音響文化その2.pptx