04.05/10:谷口文和:電子音響技術と歌声

投稿日: 2012/04/26 8:17:14

谷口文和プロフィール

学外から来てもらった講師です。今年度まで亜細亜短期大学、来年度から京都精華大学の新設学部、ポピュラーカルチャー学部に参加する先生です。

『音楽とは何か(仮)』近刊予定(6月刊行ときいてたけれど、延びたそうです)。

「電子音響は何を表現できるか」「聞こえるもの、という側面から歌声について考察してみること」というテーマから、いわゆるヴォーカロイドや人力ヴォーカロイド、そしてSF映画におけるピコピコ音で表現される話し言葉をとりあげて、「声」のように聞こえるのはなぜか?ということを検討し、結論として、「何かを電子的に歌わせることは、人間の歌声を再現することではなく、歌というフォーマットを通じて新たな存在を生み出すことではないだろうか」というところまで話を持っていってました。

この日、中川は、谷口くんに横浜在住のプロのエンジニア/マニピュレーターの中村さん(KangarooPawという名前も持っているようだ)を紹介してもらって三人で12時くらいまでずうっと話してたので、授業中に話していたことかその後に話していたことかあまり区別がつかないところもあるのですが、ともかく、中川が理解した限りでは、谷口先生が最終的に考えたいことは「形式が生み出す表現のあり方」ということなのかもしれないと思いました。

つまり”ヴォーカロイドに「歌わせる」ことや何らかの音を「声のように」使うという形式”は、新しい音響素材を使うからではなく、「歌う」という形式や「ポップソング」という形式(フォーマット)を使うからこそ、新しい音響表現の可能性を開拓しているのだ、ということを実証的に示そうとしたのかもしれない、と思いました。

最後足早になってしまったのは残念でしたが、詳細は、近刊の新著を読むことにしましょう。

個々の事例の取り上げ方がスリリングでした。

初音ミクや鏡音リンなどのヴォーカロイドやアイドルマスターの「声」やさらには「柚子音ぽん」の「声」を事例として取り上げて、それらが「声」として聞こえる構造について検討していたのに反応があったのは、近年の大学生たちにヴォーカロイドがますます浸透しつつあるからだったなのかもしれません。

ただ中川は、『禁断の惑星』(1956)のRobbieと『スター・ウォーズ エピソード4』(1977)のR2D2における電子音の使われ方の差異の比較検討―なにか不気味なものとしてのロボットの雰囲気の表象だった電子音が、およそ20年後には十分「ロボットの声」として通用するようになっていた、という比較検討―が面白かったです。

論点が多い授業内容でしたが、そうですね、ポイントは何でしょうね。

ひとまずは「人力ヴォーカロイド」と「柚子音ぽん」とはどのようなものか説明できることと、それらは、例えばどのような問いをもたらすものだったかを説明できること、としておきましょう。大きくは「電子音響が表現できるものは何か?」となりますが、「声」という言葉を使って説明してもらいたいところです。

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以下、今日の授業で流した使用動画リストです。授業後に谷口先生にもらいました。

◯【鏡音リン】 ココロ

【ニコニコ動画】【鏡音リン】 ココロ 【オリジナル曲】

◯【人力VOCALOID×宇多田ヒカル】「ココロ」

【ニコニコ動画】【人力VOCALOID×宇多田ヒカル】「ココロ」

◯人力ボーカロイド支援ツールらしきものを作ってみた その1 導入

【ニコニコ動画】人力ボーカロイド支援ツールらしきものを作ってみた その1 導入編

◯アイドルマスターL4U! 「my song」 伊織アカペラ

【ニコニコ動画】アイドルマスターL4U! 「my song」 伊織アカペラ

◯アイドルマスター (人力)伊織ロイドで「君に、胸キュン。」

【ニコニコ動画】アイドルマスター (人力)伊織ロイドで「君に、胸キュン。」

◯【UTAU音源配布】ゆずぽんメランコリー【柚子音ぽん】

【ニコニコ動画】【UTAU音源配布】ゆずぽんメランコリー【柚子音ぽん】

◯【UTAUカバー】Yellow【柚子音ぽん】

【ニコニコ動画】【UTAUカバー】Yellow【柚子音ぽん】

◯『禁断の惑星』(1956)Forbidden Planet Trailer

◯『スターウォーズ(エピソード4)』(1977)より

◯冨田勲《惑星》(1977)より「Jupiter」