朝日新聞 Reライフ.netへの訂正要望

《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》

2021年9月24日付 朝日新聞 Reライフ.net 《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》、及び9月26日付 朝日新聞朝刊《腸内整え体も心も健康に》と題した記事について、10月18日付で朝日新聞 Reライフ.net担当編集長宛の訂正要望レターを郵送しました。

回答希望日の11月1日を過ぎても対応が見られなかったため、11月8日、朝日新聞問合せフォームより対応をお願いしました。

11月9日、Reライフ.net編集長からの回答を受け取りました。11月1日付となっていましたが、メールアドレス間違いによる不達でした。検討の結果、訂正の必要はないと判断されたとの内容でした。

11月10日、FSINより全く不適切な内容なので大変残念である旨のメールを送りました。

《FSINからのレター》

2021年10月18日

株式会社朝日新聞社

Reライフ.net担当編集長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

9月24日 Reライフ.net 《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》、及び9月26日 朝日新聞朝刊 《腸内整え体も心も健康に》と題した記事に関する質問及び訂正要望

メディアチェック集団「食品安全情報ネットワーク(FSIN)」は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なボランティア・ネットワーク組織です。

9月24日付で朝日新聞Reライフ.netに掲載された《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》と、9月26日朝日新聞朝刊に掲載された《腸内整え体も心も健康に》とは、いずれも京都府立医科大学教授 内藤裕二さんへのインタビュー形式をとった同内容の記事です。

どちらの記事にも掲載されている次の図につき、下記のような矛盾と疑問があり読者に混乱と誤認を与える内容となっています。

《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》

(朝日新聞Reライフ.net 、2021年9月24日)より引用

例①

「薬剤、化学物質」を「腸年齢」が老いる要因としていますが、「腸年齢」の維持・若返りの要因としている短鎖脂肪酸やポリアミン等も「薬剤、化学物質」です。

そもそも、科学的には元素と元素が結びついたものは全て化学物質であり[1]、「健康的食生活」を構成する食事も化学物質からできています。

例②

「食品添加物、人工甘味料」が老いる要因とされ、「短鎖脂肪酸」や「アミノ酸」が維持・若返りの要因とされています。

しかし、食品添加物の保存料として使われるプロピオン酸やソルビン酸、pH調整剤として使われる乳酸や酢酸は短鎖脂肪酸です。調味料として使われるグルタミン酸やグリシン、アラニンなどはアミノ酸です。

例③

「高塩分食」が老いる要因とされ、「日本食」が維持・若返りの要因とされています。

しかし、日本食とされるものには塩分の多い食品がたくさんあります。例えば漬物、干物、ラーメンなどは日本食の一部と認識されているものです。

例④

「都市化、工業化」という言葉が具体的には何を指すのか不明ですが、もし一般的な「先進国になる」という意味であれば、WHOの統計値[2]では平均余命の上位に日本などの先進国が並び、アフリカ諸国など発展途上国が短命な国にランクされています。そして「都市化、工業化」の進んだ国ほど医療、公衆衛生の充実で平均寿命が長いと考えられています。「都市化、工業化」が「腸年齢が老いる」原因であるなら、平均余命と「腸年齢」は逆相関することになります。「腸年齢の老化」が長寿をもたらすのでしょうか。

例⑤

薬剤、化学物質、食品添加物、人工甘味料は、様々な化学構造を持つ物質の総称であり、生体への影響は個別の物質により全く異なることはよく知られている事実です。あるいは貴紙ではこれらの物質のすべてが「腸年齢」を老化させるとお考えでしょうか。

【訂正要望】

当該図は「内藤教授の資料をもとに作成」とされており、貴編集部の責任において作成されたものとお見受けします。オンライン紙面、朝刊紙面に掲載された内容は科学的な根拠に乏しいうえに、矛盾に満ち、読者に大きな誤解と誤認を与えるものです。なぜ、このような内容の表になったかを改めて読者に説明する必要性が高いと考えます。

老いる要因として薬剤、化学物質、食品添加物、人工甘味料、都市化、工業化を挙げているのは、誰が見ても明らかに誤りです。この表を削除することも含め、不適切な内容の訂正とその訂正理由を貴紙面において明確に示していただくよう要望いたします。

御多忙とは存じますが、11月1日までにご回答をお願いします。回答は電子メールで事務局へお願いいたします。なお電話での問い合わせにも小島が応じます。

※本レターは、FSINのホームページ等において公開するほか、主要新聞社や主要週刊誌、主要テレビ局など約20社にも送りますので予めご了承ください。また、メディア記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開させていただきます。



[1] 独立行政法人 製品評価技術基盤機構ホームページ

https://www.nite.go.jp/chem/management/kaisetsu/01.html

[2] https://www.who.int/data/gho/data/indicators/indicator-details/GHO/life-expectancy-at-birth-(years)


《Reライフ.net編集長からの回答》

2021年11月1日

食品安全情報ネットワーク御中

Reライフ.net編集長 菊池功

(連絡先省略)

謹啓

 「Reライフ.net 《「腸年齢」を若々しく保つ 免疫力アップ 老化防止のポイントとは》、及び9月26日 朝日新聞朝刊 《腸内整え体も心も健康に》と題した記事に関する質問及び訂正要望」を拝受いたしました。

 検討させていただいた結果、訂正の必要はないと判断いたしました。いただいたご意見は編集部内で共有し、今後の編集にいかさせていただきます。

謹白

《FSINからのメール(2021年11月10日)》

Reライフ.net編集長
菊池功様

「訂正の必要はない」と判断されたことを大変残念に思います。

訂正の必要がないなら、その根拠を説明して、読み手に納得してもらうのが、いまだ大きな影響力をもつ報道機関としての大切な役割だと考えます。

こうした誠意に欠けるご回答が、新聞離れを起こしている一因にもなっているのではないでしょうか。


「化学物質」「食品添加物」は様々な化学構造をもつ物質の総称です。
全ての食品成分は「化学物質」ですし、「食品添加物」にはもともと食品に含まれる成分であるものも多いです。
これらを一括りにして生体影響を論じることは全く不適切です。


それにもかかわらず、記事内容を訂正されず公開したままにされるご判断は、読者の科学リテラシーにとって大きなマイナスと考えます。


※11月1日のご回答メールは、メールアドレス違いで届いておりませんでした。