(追記)このたび、戦場のヴァルキュリア2の公式ブログで行われております、「戦場のヴァルキュリア2 発売直前まつり」 (http://ameblo.jp/val-log/page-7.html#main)に、このページを使いまして参加することにしました。写真のあ るページを直接指定、ということなので、このページのURLを使いますが、もし興味のある方は、この項目のトップである、戦場のヴァルキュリア 考証いろいろから見て頂いた方がいいと思います。投稿内容の写真が目当ての方は、文章すっ飛ばしてこのページの写真を探した方が早いかもしれません(笑)それでは…
10章最大の考証的突っ込みポイントはこれ。
列車砲って、進行方向と違う向きに撃てるの?
ゲーム中では、装甲列車エーゼルが前後に動きながら、連結されている列車砲を、進行方向に対して横向き…少なくとも30度から90度くらいの角度…に向けて撃っています。
そもそもなんで装甲列車に非装甲の列車砲を一緒に連結しているのか、あの狭い橋の上で、砲の操作要員はどこにいて、どうやって砲の運用を行っていたのか (列車砲の運用には多数の兵員が必要です)、狙う地点の射程が近すぎる(列車砲の射程は通常数km~数十km)等々、突っ込みどころは多いのですが、やは り一つ挙げるとするとここ。
砲を撃てば、当然その反動は、砲を撃った向きと逆向きにかかります。ですから、通常の列車砲は、進行方向と同じ向きに射撃し、反動で砲全体がレール上を 動くようにします。これを、横向きに撃ったらどうなるかと言いますと、反動もレールに対して垂直方向にかかりますので、結果脱線するどころか、狭い橋の上 から落下…
つまり、ザカと第7小隊の皆さん、何もわざわざ危険を冒して爆弾なんて仕掛ける必要はなかったんですね。できるだけ砲を発射する向きがレールと垂直にな るように、かつ砲との距離が遠く、仰角が小さくなるように砲を撃たせるよう、適当に逃げ回っていれば、そのうち装甲列車は砲の反動で、自ら脱線、谷に落ち ていったわけです。
列車砲の射程を考えれば、何も他の装甲列車と一緒に橋の上で運用する必要はどこにもなく、もう少し離れたところから撃っていればよかったわけですし、そ もそも少人数の歩兵部隊相手に列車砲が有効か否かというところも突っ込みどころな訳で…グレゴールが兵器の運用方法を知らなかった、としか、言いようがあ りません。しかもそれで自分の命まで縮めています。ちなみに、緩衝(駐退)複座装置により、発射時の反動を抑えることはできます。ゲーム中のこの砲の発射 シーンを見る限り、緩衝装置は働いてはいますが、それでも十分ではないでしょう。射程が短いので、火薬が少ない弱装弾を使った可能性はありますね。
実際に進行方向と違う向きに撃てる列車砲はなかったのか、といいますと…列車砲に関する資料は少ないので、今回は『ドイツ列車砲&装甲列車 戦場写真 集』(広田厚司・光人社)を参考にしました…第二次世界大戦時のドイツにおける、15cmと17cmの列車砲は、進行方向と異なる向きに撃つことができま した。しかしこのときには、砲の向きと反対側に、緩衝装置と駐鋤(要するに砲の衝撃に対して支えるための突っ張り棒)を地面に設置しています。橋の上では これが設置できないので、砲撃もできないでしょう。
と、まあ、これで話は一応終わっているのですが…戦車や火砲なんかはまだ、見る機会があるかもしれませんが、果たしてこの列車砲、実物を見る機会はあるのでしょうか?これを気にしてしまったのが、ある意味運の尽き。
列車砲なんて現代戦ではもはや使われない(弾道ミサイルがありますので)過去の遺物なのですが、上記の本やwikipediaあたりを調べてみますと、残っているんです、これが。
一応直接のリンクは避けますし、英語ですが、
http://www.ordmusfound.org/
こちらが公式ですが、日本語情報ご希望の方は、「アメリカ陸軍兵器博物館」で検索してください。ミリタリーマニアな人にはアバディーンで通じてしまうよう ですが…アメリカ東海岸、Maryland州Aberdeenにある、アメリカ陸軍の兵器博物館。ここにドイツの28cmK5列車砲が、展示されているん ですね。
これはアメリカに住んでいるうちに行くしかないとは思ったものの、かたやAberdeenは大西洋にほど近い東海岸沿い、私が住んでいるのは太平洋にほ ど近いアメリカ西海岸。飛行機でも6時間くらいかかり、東京近辺から周辺のアジア諸国に行くより遠かったりします。おいそれと行けるものではないのです が、なんとか時間とお金のあるときに、ワシントンDCからレンタカー飛ばして行ってきました。
道路脇の線路に、どうみても普通に見えない車両が。
ドイツ軍は数種類の28cm列車砲を作りましたが、その中で最後にして最良と言われている、28cmK5列車砲です。
こう見てみると、砲の巨大さが分かりますよね…ただそれと同時にわかってしまうのが、側面の落書き。ほとんど現存していない貴重品なんだから、大切にしてくださいよ~皆さん。
1944年1月、イタリア戦線において、連合軍のアンツィオ橋頭堡に対し、2門の28cmK5砲が砲撃を行い、アメリカ軍兵士は"Anzio Annie"(アンツィオ・アニー)と呼んで恐れたとか。ドイツ軍側の愛称は、各砲ごとに、それぞれ「レオポルト」と「ロベルト」だったのですが…愛称に も国民性が出る??
この砲撃方法ですが、昼間は山中のトンネルに隠して偵察の目を逃れ、夜間にトンネルから引っ張り出して砲撃を行うという、列車砲の利点を生かした、それこ そ小説か漫画のネタにでもなりそうなもの。結局敗退したドイツ軍は、この二門の砲を破壊・遺棄して撤退しましたが、アメリカ軍は残った部品から「レオポル ト」砲を復元して、それがここに残っているという次第。横にちゃんと"Leopold"って書いてありますよね。
これは台車付近。
そしてこれが砲耳(砲が上下方向に俯仰できるよう支える軸)付近の写真です。軸受の部分がその下の台にしっかりボルト止めされており、左右への回転はでき そうにないことが分かります。実際、左右方向の射角はわずかに1度。それ以上の調整にはレールの曲線、カーブしている部分を用いました。
これは砲口付近。ライフリング(施条)が施されているのが見えますでしょうか?
最後に前方からの全体像です。
この博物館、陸軍兵器博物館と銘打っているだけありまして、小銃から機関銃・戦車・火砲等々、陸軍の扱う兵器を幅広く展示しており、マニア必見の博物館 です。ただし日本からの普通の観光ルートに入るようなところではなく、英語しか通じないところですので、そのあたりは覚悟してください。
私が行ったのは、2008年の11/28と29日でした。ワシントンDCの飛行場(IAD)まで飛行機で、そこからレンタカーでワシントンDCの中心部 を迂回し、ボルチモアを抜けてアバディーンに行きました。一時間半~2時間くらい??記憶が曖昧ですし、道路の混みようによって変わると思います。 11/27のうちにここまで移動し、アバディーンのホテルで二泊。インターチェンジの近くに、アメリカ大手チェーンのホテルが何軒かあります。近くに ショッピングモールもあり、普通のアメリカ人レベルで必要なものは大抵ありそうです。
道順は上記博物館のページにあります。念のためgoogleあたりで調べておいたり、GPS(カーナビ)を用意しておくと安全です。ただし、この博物館 は陸軍の敷地内。民間人が入構できるルートは決まっていますので、博物館のページにあるルートと、検索結果を必ず照らし合わせて確認してください。
入構時には手続きが必要です。怪しまれないよう、museumに行きたいとはっきり言い、身分証明書のコピーを取って名前・住所等を書いてサインする程 度のものですが、状況によっては厳しくなったりする可能性もありますので、手荷物や車の中には、危険物は入れない方がいいでしょう。身分証明書は必須で す。日本から来る方であればパスポート、ですかね。まあ日本から来てレンタカー、の時点で、パスポートと国際運転免許証は必携ですが…
ちなみにこの年、11/28はサンクスギヴィングで、博物館は休館!でも入構時に係官は注意してくれませんでしたし、博物館の建物の入り口に休館の張り 紙が貼ってあるだけ。今回の列車砲もそうですし、その他の戦車や火砲の大部分も屋外展示、ほとんど原っぱに置いてあるだけ、軍の敷地内だからと言って特に 警備の目があるわけでもないので、休館でも構わず、見たい放題見ることができます。ただしトイレは建物の中なので、閉館時にはトイレに行けません。
建物はそれほど大きくなく、開館時でもお土産は売っていますが食事は売っていません。近くにSUBWAY(サンドイッチ屋)の看板はあるのですが、軍の 敷地内なので、民間人が入っていいのか分かりません…食事は軍の敷地に入る前に済ませておくことをお勧めします。まあ好きな人なら食事抜いてでも見る方優 先にしたくなるようなところですが(笑)
余談の余談ですが、ワシントンDCにはスミソニアン航空宇宙博物館もあり、特にIAD、ワシントン・ダレス国際空港のすぐ近くには、ウドヴァー・ハ ジー・センター(Udver-Hazy Center)という、軍用機に限らず多数の航空機を展示しているところがあります。空の方面ですが、これまた好きな人にはたまらないところですので、是 非時間を取って見て回ることをお勧めします。こちらはアバディーンよりはるかにメジャー?ですので、地球の歩き方あたりにも案内があります。