また前置きが長くなってしまいました。この話だとつい長くなります。
では実際に、冒険者の武装について考えてみることにします。
ただ、冒険者というだけでは世界設定がはっきりしませんから、今回はファンタジー世界をベースにして考えてみます。「SFだってFF7だってファン タジーでしょ?」と言われても困るので、中世ヨーロッパ世界をベースとし、魔法やモンスターというミステリアスな要素が多少混じった世界…と規定しておき ます。まあ、ちょっと前まではファンタジーと言えばこういう世界だったんですけどね。そのうちこういう世界を「MF(Medieval Fantasy)」として区別する必要が出てくるのかもしれません。
「ベースが中世ヨーロッパなら歴史を調べればいーんでしょ」と歴史を紐解いてみましたが…これが意外とうまく行きません。何故かというと西洋中世には冒険者の歴史や文化なんてものが存在しないからです。
中世ヨーロッパ世界を概観してみると、森の中に小さな都市が点在し、その周囲に都市の胃袋を賄うだけの村があり、この村々と都市とが1つのパッケー ジになっています。パッケージの中では勿論人や物資の出入りはありますが、この村と都市との間の行き来は「冒険」というほどのことにはなりません。いや、 そういう比較的往来しやすい所に村がある。食料のような最重要物資を運ぶのにいちいち「冒険」してたら安定供給なぞおぼつかない。また、パッケージの外と の交流は希薄です。
更に、冒険者という職業を成立させるだけの財宝がどこかの遺跡に眠っているわけでもありませんし(大航海時代まで行けば別ですが)、そんなに凶悪な モンスターが襲ってくるわけではありません。勿論民話のレベルではいろいろなモンスターが出てきますが、どうもこれは「自然に対する恐怖が生み出した想像 上の産物」のようで、実際に怖いのは天災や疫病、戦争や領主の圧政などでして、襲ってくるのもせいぜい夜盗や狼くらいのものです。これでは冒険者が産業と して成り立ちません。従って中世ヨーロッパに冒険者はいない。
勿論例外がないわけではありません。ヨーロッパの内部でもかなり長距離を移動する商人達のキャラバンというのはあったようで、こういう集団は襲われやすいので当然武装してました。でもこれはあくまで「商人」で、何でも屋の冒険者とはちょっと違います。
もう一つ、「十字軍」というのがありましたね。聖地エルサレムを奪回するためにヨーロッパ全土から軍勢がイスラム圏に遠征したわけですから、これは これでひとつのミッションと言えるでしょう。しかし、これが冒険者にとって反面教師にはなっても、とてもじゃないけどそのまま参考にはならないんですよ。 遠征軍はイスラム教徒と戦うことは考えていても「そこまで行く」という移動の要素を軽視していたんですね。そのため移動の途中で病気になったり、目先の利 益につられて全然関係ないところに行ったりして、出発はしたけれど実際に戦うところまでいかなかった人たちが多数いました。装備も「冒険するための装備」 にはほど遠いものです。
中世ヨーロッパがこのような状況では、そこからそのままサンプルを抜き出して「これがベスト!」とはいかないようです。まあ、勿論大いに参考にはしますけどね。まあ、あとは考えてみますか。