ここは最重要部分。他の部分は守らない人でもここだけは守りましょう。逆にここを守らないで他の部分に防具をつけるということはよほど特殊な場合でない限りやらない方がいいです。
歴史上の胸部の防具はほとんどが胴全体を守っていました。でも今のゲームなんかだと腹部や背部を防御せずに胸部のみを守るものも多いですね。
そういう胸部のみの鎧を認めるかどうかは結構難しいところです。腹部や腰部も非常に狙われやすいところなので歴史上の防具が胴全体を防御していたの も納得できますが、その一方で腹部まで一枚板に近い状態で覆ってしまうと腰を曲げることが難しくなります。下に落ちているものを取るときなど、苦労すると 思います。
でも何故かヨーロッパのものは、チェインやスケイルのものを除くとほとんど一枚板。古代ローマの量産型プレート・アーマーであるロリカ・セグメン タータ(lorica segmentata)なんかが、プレートものでの数少ない例外です。それに対して日本や中国のように小さなパーツ(日本では「札(さね)」という)を繋 いで作る鎧の多い地域では、胴を自由に曲げることのできる鎧が多くなってます。
余談ですが、日本の大鎧の胴、あの前面は一見一枚板のように見えますが、あれは「弦走(つるばしり)」といってパーツを繋いで作った胴の上に更に鹿 の革を張ったものです。弓の弦が鎧のパーツに引っかからないようにする工夫で、これのせいで胴が曲がらない、ということはないと思います。まあ、多少は曲 げにくいんでしょうけど。
(後記。上に書いた弦走の説明は古典的なもので、近年「大鎧の形を保つためのもの」とか、「弦走は別の部分の名称である」という説もあるようです。)
というわけで、胸部のみの鎧というのも、あってもいいけど歴史的にはないのでちょっと引っかかる。引っかかるけどあってもいい。う~ん。
但し、ただしですよ。女性の鎧で胸部の脂肪の厚い部分のみを覆ったもの(ちょっと言い方がまわりくどい)、あれだけは止めて下さい。いや、あの厚い 脂肪の下にも肺などの重要器官はあるからその点はいいんですが、どういうわけか?胸元の心臓のある部分付近を「わざと」防御していないものが多い。
ちょっと想像してみて下さい(男性の方ならこれ想像するのは楽でしょう)。防具の左胸上部内側の部分に突きが入ったとき、防具に当たって止まります が、その刃先は滑ってそのまま防護してない心臓の方に行き、なんと心臓部に刺さる。あの形状は要するに、胸元付近の突きが胸当てに当たったときに、みんな 滑って胸骨や心臓の部分に刺さってしまう、そういう恐ろしいものなんです。
装備しているときよりしてないときの方が安全なものなんて、私は防具と呼びたくありません。まあ、服やアクセサリーの一種なんでしょうね。というわけで私はそういう女性キャラクターを見ると、「あ、こいつは死にたい奴だな」と思ってしまいます。
だから、私が絵に描いた胴鎧も、しっかりと一枚板で心臓部まで防護したものです。やっぱり、できるだけ心臓部は守った方がいいですよ。