コープさっぽろの60周年を契機に、この北海道の未来を展望しつつ、私たちがどのような方向性を持って事業実践していくかを考えるために小樽商科大学寄付講座「北海道未来学」を開設しています。いよいよ、まとめの第3期が4月から始まりました。多角的な視点で各界の第一人者13名に、この講座で90分のご講演をいただき、当日の講義には小樽商科大学の3年生200人も出席し、さらに翌日からはコープさっぽろ関係者の全員がWEB配信で視聴できるようになっています。結果、職員で約500人、お取引先約1500名が一緒に視聴し、合計2200名も学んでいる人気の高い寄付講座となっています。
その3期目のトップバッターは、華道家の山崎繭加(やまざきまゆか)さんです。講演を聞く前まで「経営学と生け花ってどう結びつくのか?」そして、彼女から指定された参考図書が「センス・オブ・ワンダー」レイチェル・カーソン著(2024年3月筑摩書房発行)でこれがどう結びつくのか本当に謎でした。
レイチェル・カーソンは、アメリカで1960年代に農薬の化学物質による危険性を取り上げた「沈黙の春」で一躍有名となり、人類史上において環境問題そのものに目を向けさせ、世界的な環境保護運動の端緒(たんしょ)を作った生物学者です。本編はわずか30ページなのですが、この物語は彼女の1歳8カ月の甥と一緒に海岸を散歩する記憶から始まります。この「センス・オブ・ワンダー」は、生まれてくる子どもたちに「驚きと不思議に開かれた感受性」が授かることを祈って書かれ、その甥への手紙となっているものです。
この山崎繭加さんは、マッキンゼーを経て東大先端研究所からハーバードビジネススクールに勤務し、2017年から生け花を教える華道家としても活躍している異色の人で「個の花が生きることと生け花として全体が調和することは、経営組織と同じ」という話から講義は始まりました。そして経営学の最先端のハーバードビジネススクールでは、15年前から経営についての考え方も変化し、経営戦略も「外側から内側へ」から「内側から外側へ」が主流になろうとしていて、さらに経営組織の考え方も「組織」起点から「人」起点へ視点が移行してきていて、そのハーバードビジネススクールの象徴的な出来事がリーマンショック後の2010年に発表した新たな教育方針です。経営学にとっては「Knowing 知識(頭)・Doing 実践(体)・Being あり方(心)」の3つが重要だと宣言し、エリートの頭でっかちに偏り過ぎた反省として、実行力とか人間の本来的な心の豊かさを必要とする議論が始まっているのだといいます。ビジネススクールの反省とすぐれた経営者研究からも「Mindfulness(マインドフルネス=今の自分の心の内面と向き合う時間を持つこと)」ができているリーダーほど、成功していることが経営学でも実証されてきているということです。そこで本来、彼女が19歳から続けてきた生け花こそ「マインドフルネス」につながると直感し、華道家として、新しいプログラムづくりに挑戦して成功を収めてきています。この本に山崎さんのサインをいただいたら、そこには、「日常の中に『特別』を見い出す。ありがとう」という言葉が書き添えてありました。このメッセージで、山崎さんをめぐる3つの謎「生け花・経営学・レイチェル・カーソン」のすべてつながり、感動で震える貴重な時間をいただきました。