効果的な授業の実施方法

授業を実施する際には、授業で扱う知識やスキルの教授や履修状況の確認にとどまらず、学習状況の把握や教員と学生との意思疎通、学生間の協同学習など、多様な教授活動を効果的に組み合わせることが大切です。

効果的なハイブリッド授業の実施では、5つの教授行為をバランスよく取り入れる

図の5つのパートは、教員からみた学生との教授行為について整理したものです。教授行為には、教員が学生に授業に関する情報を伝える「コミュニケーション」、講義など学生に知識を教授する「インプット」、課題など学んだ知識やスキルを確認する「アウトプット」、学生間の協同学習を促す「コラボレーション」、テストなどで知識やスキルが定着したか評価する「アセスメント」 があります。

5つの教授行為

コミュニケーション(意思疎通):教員が学生に授業に関する情報を伝える


授業では、受講方法、活動の進め方、評価方法などの情報を伝えるために、教員と学生がコミュニケーションをとる方法について検討する必要があります。授業前にオンデマンドで講義などを配信する際には、質問用の掲示板を設置するなど、教員と学生でやりとりする方法について検討します。さらに、Web会議アプリケーションを使った同時配信授業を行う際、学生によっては参加方法に手間取ったり、インターネット環境の不具合により途中で受講できなくなったりすることも想定できます参加方法や問い合わせ先について、事前にかつ詳細に伝えるようにします。

インプット(講義):講義など学生に知識を教授する


講師の顔を見せながらリアルタイムで講義をしたい場合、ホワイトボードやタブレットPCなどを用いて板書を提示したい場合は、対面授業またはオンライン授業を行います。

知識の教授が中心で一方向の講義であれば、オンデマンド型を選択します。オンデマンド型では、講義ビデオを作って配信する方法のほかにも、レジュメを配布して音声で解説するというやり方もあります。動画や音声による解説が不要であれば、PDFにした資料を配布したり、教科書の範囲を提示して読んでもらうという方法もあります。

アウトプット(課題):課題など学生が学んだ知識やスキルを確認する


この授業に参加した学生が目標に達したかどうか確認するためには、学生のアウトプットによって判断する必要があります。

たとえば、確認テストやレポート、リフレクションを実施します。また、授業前後に学習内容について意見をフォーラム(Moodleの掲示板)で受け付けることにより、フィードバックやフォローすべきポイントが明確になります。

コラボレーション(協同学習):学生間の協同学習を促す


対面授業やオンライン授業で、学生間の協同学習を取り入れることで、学ぶ知識やスキルの深い理解を促します。リアルタイム型の授業では、ビデオ会議アプリケーションのブレイクアウトルームを使うことによって、参加者を少人数のグループに分けてコラボレーションすることができます。また、インターネットの不具合など問題が生じた際に、教員やTAと連絡をとる方法を通知します(ビデオ会議アプリケーションのチャット、メール等)。とくに同時配信で参加している学生の状況が把握しづらくなるため、グループワーク終了後に発表の時間を設けます。Googleドライブなどに共有フォルダーおよびワークシートを用意して、教員と学生、学生間でワークの内容を共有するという方法もあります。

アセスメント(評価):知識やスキルが定着したかを評価す


知識やスキルが定着したか確認するために、確認テストやミニレポートなどによって評価をする必要があります。これらは学生の目標の到達度を把握するとともに、授業評価の指標としても役に立ちます。また、同時配信授業で出席状況を確認するために、メールアドレスの登録が必須のミーティングを設定するという方法があります。加えて、ビデオ会議アプリケーションの投票機能を用いて、授業の参加状況や理解度を確認するという方法もあります。

実施上のポイント

「反転授業」の導入

「反転授業」とは、事後課題の役割を「反転」させる授業形態のことす。

教員は授業に先立ち、講義コンテンツやレジュメなどの教材を用いて知識を教授し、学生は知識の習得を済ませます。そして、教員は授業時間に知識の応用を促進するための協同学習を中心として計画し、学生は学んだ知識を「使うことで学ぶ」活動を行います。
こうすることによって、授業時間をコラボレーションやアウトプットの活動に時間を割くことができ、効果的に知識の定着へつなげることができるようになります。

「講義」と「活動」の組み合わせ

効果的なブレンド型授業を実現するためには、「講義」と「活動」を適切に組み合わせる必要があります。その組み合わせを考えるときに重要となるのが「学習目標」です。学習目標に達するために何を教えて、活動を通してどのようなスキルを身に付けさせるのかを検討します。

授業形態を選択するポイント

授業形態を選択する際には、「何を教えるのか」「どのような活動をするのか」「同期・非同期どちらの手法を取るか」検討することがポイントです。

何を教えるのか

授業の目指すところとして「学習目標」があります。授業は何時間授業を実施したかではなく、その授業で教員が「何を教えるのか」、そして学生は「何を学んだか」によってその効果が確かめられます。はじめに授業で目指すところ(学習目標)を明確にすることにより、どのような活動をする必要があるのか、オンラインでの実施は適切か、同期・非同期のどちらの手法を取るのかを選択しやすくなります。

どのような活動をするのか

学生が授業の目指すところ(学習目標)までにどのような道筋を辿る必要があるのか、以下の3つの観点から検討します。
  ・学生がその活動に取り組むために必要な予備知識を事前に提供しているか
  ・なぜ学生にその活動に取り組むことを求めるのか
  ・その活動は、学生がどのようなことをするときに役立つのか
  ・学生の活動を、どのようにして評価するのか

同期型・非同期のどちらの手法を取るか

知識を伝達しながら質疑応答を交えて教えたい場合、対話など同期的なやりとりをすることによって効果が高まる場合には同期型による対面授業もしくは同時配信授業が向いています。一方、繰り返し教材を見ることで知識の習得が促進される場合は、非同期型のオンデマンド授業のほうが効果は高くなります。

同期的なやりとりが不要なディスカッションであれば、掲示板やワークシートを活用して、非同期型で実施することも可能です。

対面授業でロールプレイや実技などの活動を取り入れる際、事前に場面設定やシナリオ、デモンストレーションなどをオンデマンド教材にして、事前に視聴してきてもらうという方法も考えられます。

具体的な授業の実施方法とツールは、以下よりご覧ください。

ブレンド型授業の特徴、授業設計のポイント、実施例などを紹介しています。

ハイフレックス型授業の特徴と留意点、必要な機材と実施方法 などを紹介しています。

効果的なブレンド型授業を設計・実施するための方法について紹介するとともに、このページから「授業デザインツールキット」をダウンロードしていただけます。

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