インストラクショナルデザイン

授業を設計するためには、教員による講義と学生の活動をどう組み合わせればよいのか、事前課題や事後課題をどのように設定すればよいのかなど、授業全体について検討する必要があります。

インストラクショナルデザインとは

授業を設計するためには、教育工学の中の、インストラクショナルデザイン(Instructional Design:以下、ID)という領域で培われた知見や方法論が役に立ちます。

IDとは、教育活動の効果と効率と魅力を高めるための手法を集大成したモデルや研究分野、またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセスです(鈴木 2005)。IDは「教えることの科学と技術」であり、単なる経験則や人生訓ではなく、科学的に効果的な教え方を追求していくことを目指しています(向後 2015)。「ハイブリッド型授業をはじめよう」で説明している内容のは、主にIDの枠組みに基づいています。

IDの目指す学び


授業を設計する目的は、授業をよりよくするためです。よりよい授業にするとは、効果を高め、効率よく、魅力的な授業にすることだと考えられています。授業の目標にクラスのみんなが到達し(効果)、なるべく短時間でそれを成し遂げ(効率)、そして「やってよかった」「もっと学びたい」という気持ちで授業を終わる(魅力)こと、これがIDで考える「よい授業」です。


  効果:対象とする学習者がある一定の効果を出すこと

  効率:時間的にも物理的にも無駄や手間をかけすぎないで成果を得ること

  魅力:もっと学びたいと思わせる継続動機を与えて、達成感を実感させること


学習の出入口

 学習目標・評価方法・教育内容の整合性


授業を設計する上では、図に示されている3つの要素,学習目標、評価方法、教育内容のバランスを保つことが重要です。

授業をつくるときに,学習目標として,「授業で何を学んで欲しいのか」,つまり教授した結果として,学習者がどのような知識やスキル,態度を身につけるかを明確にします。次に,評価方法では,テストやアンケートなど,「学んだかどうかをどのように判断するのか」について検討します。そして、教育内容では,「何をどのように教えるのか」教授する内容や練習する方法などを確認しながら、教育活動を改善・向上していきます。これらの3要素がバランスよく計画されると整合性がとれた授業になります。

学習の出入口


学びには、はじめ(入口)と終わり(出口)があります。1コマの学びでも、1科目でも入口と出口があります。学びの出口は「学習者の理想の状態」、学びの入口は「学習者の現在の状態」です。「学習」は、この理想と現状のギャップを埋めるための手段です。ギャップは学習者が直面している問題であり、学習の必要性(ニーズ)を示します。

出入口を明確にしないで「どうやって教えるか」といった方法からスタートすると、学習者のニーズに合わない教育内容になったり、最終的に学習者がゴールに到達できない可能性があります。そのため、学習目標や教育内容、評価方法を整理するためにも、はじめに入口と出口を明確にします。

学習目標の明確化

学びの出口として、学習者が学習後にどうなっていればよいかを「学習目標」として表します。目標を明確にすることで、ねらいがはっきりするため、授業の実施方法を検討しやすくなります。

授業には、その目指すところとしての学習目標があります。授業の成果は、教授者が何を教えたのかではなく、学習者がその授業によって、何を学んだかによって確認します。学習目標を明確にするためには、「目標行動」「 評価条件」「合格基準」の3つの観点から考えます。

目標行動


 目標行動は、その学習が終わったあとで、何ができるようになるのかを学習者主体で考えます。目標行動を表すポイントは、教員が「教える」ことや学生が「教わる」ことではなく、終わった結果として何ができるようになるかを明示します。

目標は「……を理解する」ではなく「……ができる」など行動レベルで表現します。

評価条件


評価条件は、どのような条件のもとで、目標の行動ができるのか考えます。仮にテストをするときに、どのような場所や環境で行うのか、参考書や辞書を持ち込めるのかを考えるといったイメージです。

評価条件は、「……ができる」だけではなく,制限を示します。

合格基準


 合格基準は、合格か不合格を判断する基準です。何がどの程度できていれば合格とみなすのか、明確な基準をチェックリストやルーブリックを用いて設定します。

合格条件は、「…以内に」「……の基準で」などを定めます。

学習目標の分類

学習目標の分類方法はいくつか提案されています。ここではガニエによる「学習成果の分類」を紹介します。この分類では対象とする学習を難易度で分けるのではなく、学び終わったときに結果として身についていることの質的な差に基づいて分けています。習得することが認知領域、運動領域、情意領域のうち、どの領域に当てはまるのかに注目して、学習成果や行為を検討します。

学習成果の5分類

学習目標を分類するポイント

分類を考える時は、 はじめに知識(あたま)、技能(からだ)、態度(こころ)のどれに関連するか考えます。知識、技能、態度の3つは密接に関係しています。 しかし、目標とする中心的な部分は、この3つのどれに当てはまるのかを考えます。


学習目標と評価方法の例:テニスの場合

具体的な授業の実施方法とツールは、以下よりご覧ください。

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ハイフレックス型授業の特徴と留意点、必要な機材と実施方法 などを紹介しています。

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