<障害をもつ人の参政権保障連絡会とは?>
私たちの会は、1994年に結成されました。会の代表委員は現在、井上英夫(金沢大学名誉教授)、市橋博(障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会会長)のふたりで、会員は100人に満たない小さな会です。
会の結成は、玉野裁判という障害をもつ人の投票する権利を争う裁判がきっかけでした。この裁判は、和歌山県御坊市の言語に障害をもつ玉野ふいさんが、1980年に、生まれて初めて選挙の演説会に参加して感動。もらったビラを買い物ついでなどで9軒に配布したことが、公職選挙法違反(違反文書配布)として起訴された事件です。言語に障害がある人が、文書を配布するのがなぜ犯罪なのかと玉野さんは訴え、多くの人々が支援して裁判は最高裁まで争われましたが、その途中で玉野さんは亡くなり、裁判は打ち切られました。
この裁判の支援する会に参加した私たちは、玉野さんの遺志を継ごうと「会」を結成しました。
<これまでの活動>
私たちの会では、①障害をもつ人の参政権の実態を調べ、学習会などを開き、その状況を学び、伝えること、②選挙を担当する総務省や選挙管理委員会、国会などに要請し、改善を求めること、③障害をもつ人の参政権に関する裁判などの支援をする等を行なってきました。
この中で、車イスを利用する人から、投票所に段差があり、一人では入れないとの訴えがあり、総務省や選挙管理員会に調査を要請しました。毎年調査し、改善を要望していますが、未だに入り口と投票所が同じフロアにないところが約50%あります。
投票所の環境改善では多くの声が寄せられ、今後も改善を要望していく必要があります。
<投票する権利を守るための裁判>
裁判支援では、2000年に、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の方が、現行の郵便投票では「自書」(自分で記入する)が必要であり、自書できない人は投票所に行って代理投票をしない限り出来ないのは憲法違反として東京地裁に損害賠償裁判を提起。私たちは、裁判傍聴、署名、裁判所要請など行ないました。2002年東京地裁は、損害賠償は棄却したものの、投票出来ない現状は憲法違反と判決、2003年国会で「郵便投票で代理投票を認める公職選挙法の改正」が行なわれました。
2011年には、成年後見人制度を利用したら選挙権を奪われたとして茨城県の方が東京地裁に裁判を提起、私たちも裁判傍聴などを行ないました。2013年東京地裁は、選挙権は「国民のすべてに平等に与えられる」ものであり、障害をもつ人も「我が国の主権者として自己統治を行う主体である」として、成年後見人制度の投票権剥奪は「憲法違反、無効」と判決しました。
2013年、この判決を受けて国会は、各会派の議員立法によって、公職選挙法の改正を行ない、投票権を奪われていた13万6,000人の投票権が回復しました。
<代理投票を柔軟に>
2013年の法改正に際して、国会では投票権が回復した障害をもつ人の投票をどう保障するのかが議論され、不正投票の防止を目的に代理投票の立会人を選挙管理委員会の職員などに限定しました。同時に「障害をもつ人の投票を柔軟に対応し、投票を保障する」「家族や友人が付き添い、投票する前に職員と十分な打ち合わせを行っていただき、投票する人の意思表示の仕方を確認して、しっかりと反映する」ということを確認しました。
<アンケートをまとめ、知的障害者のためのしおりを発行>
会では、これまでもパンフレットや「参政権保障の提言」などを発行してきましたが、2020年には、前年の一斉地方選挙、参議院選挙を受けて、肢体障害・視覚障害・聴覚障害・精神障害の障害別にアンケート調査を実施。その結果を報告集にまとめました。2022年には「知的障害者・家族・支援者のための選挙のしおり」を発行し、これは共同通信で報道され、今日まで2,000部普及しました。
<参政権保障とは>
選挙は主権者である国民の声を政治に反映する重要な権利です。議会制民主主義の基本です。
私たちは、参政権とは、①誰もが自由に投票出来る『投票する権利』、②選挙に関して的確な判断が出来るように、政党や候補者などについて様々な『情報を知る権利』、③自らの支持する政党や候補者を応援する『選挙活動の自由の権利』の三つの権利が保障されることが必要であると考えています。
ささやかな会ですが、参政権保障を求めて努力したいと決意しています。どうかよろしくお願いいたします。