第23回
東京都障害者特別採用制度
東京都障害者特別採用制度
東京都でも特別採用制度を
1981年の国際障害者年は、他にも様々な変化がありました。東京都障害者特別採用制度が始まりました。当時、神戸市などで実施されていて「東京でも」という声が強くなりました。障都連要請行動でも、何度も要求が出されました。ある日、東京都総務局から電話があり「障害者特別採用制度について話を聞かせて欲しい」ということでした。さっそく丸の内の都庁に向かい、私の知る限りの現状、私たちの要求を伝え、神戸から資料を取り寄せて欲しい、と言いました。当時の総務局の係長は非常に熱心で、その後実務を進めました。私も何回か都庁に行き、意見を言いました。
ある日、その係長が目黒区役所にいた私を見つけだして電話をくれて(携帯電話などない時代です)「今すぐ来て欲しい、できれば4時半までに」と。4時少し前だったと思います。若僧の私でしたが、タクシーで目黒から丸の内に駆け付けました。都庁に着くと、係長はさっそく条例案を見せてくれて「今日中に決裁をもらえば、次の都議会条例案に出せる」と言いました。条例案を見ると不充分な面も多く見られましたが、前回からの前進面も見られました。障都連の会議でも「制度をスタートさせることが重要だろう」ということになっていました。何としても特別採用制度を実現させようと言う係長に熱意を感じ、最後まで私たちの意見を確認しようとしてくれたことを嬉しく思いました。
これが東京都障害者特別採用制度の始まりです。これをきっかけに特別区や他の自治体でも始まりました。尽力してくださいました係長は、のちに福祉局の部長を務められました。
「合理的配慮」ですが
東京都障害者特別採用制度実施されてから、いくつかの話を聞きました。
1つは、制度が始まり1~2年経っての話です。採用試験に受かった男性が本庁内の職場に配置されました。その人は、体幹障害があり普通の椅子では不安定になります。倉庫から部長用の椅子を持ってきて座ったら、すごく安定しました。回りの職員の人たちも喜んだそうです。ところが、数日経つと職場の雰囲気が変わりました。新入の人が肘を付いてのけぞり返って座っている。上級職の椅子で。現在で言えば「合理的配慮」ですが、わかってはいるけど違和感がある。考えれば東京都の職場などは、課長・部長・局長と椅子取りゲームの面もありますから。とりあえず、白いカバーは外したそうですが。私はこの話を聞いた時、障害者の権利保障とともに、微妙な問題が出てくるものだ、と思いました。
身体の維持も
もう1つは、制度が始まり10数年経っての話です。特別採用試験に受かり、都庁に勤務した車椅子使用の女性です。廊下やエレベーターで会うと挨拶し、会話をするようになりました。恋人が出来、結婚したという話を聞き嬉しくなりました。ところが数年経ってのある日、深刻な顔をして話し掛けてきました。聞くと課長が彼女に係長試験を受けて、と言ったそうです。今でさえ体がきついのに、係長になったら勤務する時間も責任も増えてしまう、でも部下が係長試験受けることは今の課長の評価にもつながるし、と言うのです。私は回答に困ってしまいました。半年後、彼女から「係長試験に受かった」と報告を受けました。試験に受かった人とは言えない顔をして。私は「係長になっても、体を第一とし、適当にした方が良いよ」と無責任なことを言いました。彼女は、係長になりました。彼女は責任感が強く、一生懸命働きました。夜8時頃、職場から電話をくれたこともありました。しかし、都庁で会うたびに障害が重くなるのがわかるようになりました。そして、長期の病休を取らざる得ない事態が重なり、ついに退職となりました。 彼女の力になれなかった私は、無力を感じています。
最近も、60歳まで都職員として働いた肢体障害者で障害が重度化した方に会いました。
障害者の採用機会の拡大とともに、健康の維持を含む職場環境の問題も課題です。
障都連では毎年要請
東京都障害者特別採用制度に対しては、その後も毎年要請を繰り返し、長年かかり試験場へのワープロの持ち込みや点字受験を実現させました。東京都は、チャレンジ雇用などを行っていますが、抜本的な障害者雇用保障となっていません。本来なら東京都が率先して障害者雇用保障をすべきです。特に、教育委員会が大きく雇用率が低いです。
障都連では、次のような要請項目をあげています。
※長期間にわたり法定雇用率が未達成である、東京都教育委員会が障害者施策推進計画期 間内(令和5年度)に達成できるよう、速やかに計画を策定し実施してください。
※東京都障害者特別採用制度に関すること
*東京都は知的障害者の採用が困難な理由として「成績主義による公正な採用の原則」があると回答していますが、原則は民間も同じです。都として職域の研究や開拓を図り、知的障害者を都職員として採用してください。
*合理的配慮指針(H27.3.25厚生労働大臣告示)に基づいて、都庁舎内などの設備の改善をすすめてください
などです。