子どもの口腔崩壊・未受診問題

「見える化」プロジェクト

~学校歯科治療調査の取り組み~

大阪府歯科保険医協会・政策部は2018年10月13日、香西克之氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科教授、写真)を講師に招き、市民公開講座「子どもの口腔崩壊と歯科健康格差対策を考える」を開きました。 講演要旨を紹介します。

香西克之教授(広島大学)の提言【第3回】

歯科医師と学校の連携と質の高い小児の口腔ケア


子どもの歯科健康格差対策に当たって、歯科医師側に求められる課題もいくつかある。

その一つが小児歯科治療の専門的知識を持つことだ。歯の萌出年齢や順序、年齢とう蝕好発部位などの基本的な知識をはじめ、研修等を通じた小児歯科治療の知識を身に付けてもらいたい。

現在は自由標榜制度のため、6割程度の歯科医療機関が一般歯科医と小児歯科を併記標榜している。しかし、小児歯科専門医はわずか1137人、小児歯科学会員は5000人となっている(2018年2月時点)。

乳幼児健診、学校歯科医に求められるチェック項目として、乳幼児健診・妊産婦健診では▷lift lipを指導できる▷萌出順序・乳歯列を説明できる▷歯列発育に伴うう蝕好発部位の変化を説明できる▷妊婦の口腔ケアを説明・指導できる――こと。学校歯科保健においては、▷小児歯科学、口腔衛生学の最新知識を説明できる▷CO、GOを診査し、事後措置を知っている▷口腔管理や口腔外傷のマネージメントが出来る▷養護教諭の質問に回答でき相談にのって活動できる――など、要求されるスキルがあると思う。

学校歯科健診では、検診方法の適正化やリスク検査を導入するなど、検診者間の格差をなくすことや、学校歯科医による検診結果の格差が生まれないような研修や、学校側の体制として、養護教諭の歯科保健への積極的参加や、幼稚園や保育所から小中高校への個人データの共有などが求められる。また歯科医師の学校安全保健委員会への積極的参加など、歯科医師と学校の連携が強化されるなど、子どもたちの歯科健康格差を無くすために必要だと考えられる。

出来る限り口腔崩壊や歯科健康格差が無くせたらと言う思いから多くの課題を列挙することとなった。私は、いつも小児は成人を小さくしたものではないと強調している。子どもたちは、成長発達過程にある身体や精神の特徴、器官の大きさ、機能、形態など、成人とは異なっている。学校歯科医、一般歯科医の先生方に、小児歯科治療における幅広い知識や情報、スキルを身に付け、信頼される質の高い小児への口腔ケアの支援を実現していただけたらと思う。(おわり)