大阪府歯科保険医協会政策部の提言【第4回】
当会では2012年の調査開始以来、子どもの歯科保健対策の改善を求めて大阪府や各市町村との懇談・要請を重ねています。「まずは行政として実態を正確に把握することが重要」として、府内43市町村に小中学校における歯科健診後の未受診の児童・生徒の人数とむし歯が10本以上あるハイリスクの児童・生徒の実態把握を求めてきました。
要請前は健診後の状況について、各学校現場では把握していても、市町村としては集約していませんでした。2019年6月時点では22市町村が未受診の件数を集計し、18市町村がハイリスクの子どもの実数を把握するようになっています。
大阪第2の都市・堺市とは、未受診の実態把握のための方策について担当課と懇談。「未受診」ゼロ作戦と銘打って議会に対策の検討を要請しました。粘り強い運動の結果、今年に入り同市は初めて「未受診」児童・生徒の実数の調査に踏み出すことになりました。
「学校任せ」自治体の姿勢問われる
大阪府との懇談では、歯科口腔保健対策の改善を求め、フッ化物洗口や給食後の歯みがきを府内全域で取り組むよう繰り返し要請してきました。しかし、福祉・教育予算の拡充に消極的な維新府政の下、担当課は「市町村教育委員会の指導のもと実施されるもの」「各学校が実情に応じて実施するもの」と繰り返し、市町村・学校任せに終始しています。
フッ化物洗口や歯みがき指導の実施率を引き上げるためには、行政による支援が不可欠です。▽水道設備などのハード面▽導入のためのマニュアル▽事業予算への手当――など、都道府県が各市町村を補助し、各市町村教育員会が学校を支援する。この共同体制をつくらずして学校で取り組みを進めることはできません。子どもの口腔内健康格差の是正へ向け、自治体の姿勢が問われています。
2012年に開始した私たちの調査は、全国に広がり、受診できない子どもの実態と健康格差の問題を社会に提起してきました。2019年の参議院内閣委員会では、田村智子議員(共産)が本調査を示し、「子ども一人ひとりの健康の増進につながるよう、未受診の状況、その理由・背景について調査・研究を行い、対策を立てるべきだ」と迫りました。政府は、「医療機関への受診状況は法令上定めておらず、調査は強制できない」と調査実施はしないという姿勢です。
子どもの命と健康を守るのは、大人の責任ではないでしょうか。市町村、都道府県、そして国へと全国的に運動を強め、医療にかかれない子どもを生まない仕組みづくりと健康格差の是正を求めていくことが必要です。
当会では今後も、子どもの命と健康を守るために、歯科受診を阻む「3つの貧困の解消」、口腔の健康格差を縮小させる「3つの歯科保健活動の拡充」をキーワードに粘り強く運動を続けていきます。
(おわり)