三脚の設置
トランシット は,測点の真上に,水平面と平行になるよう設置しなければなりません.三脚の設置は,最初に行う非常に重要な作業です.
三脚の台座が水平で,測点の真上に位置するように,三脚の長さを調整しながら設置します.平坦地であれば,三脚の長さは3本とも同じにし,正三角形になるように設置すれば,三脚台座はほぼ水平になります.
慣れないうちは,求心器(さげ振り・垂球とも呼ばれる)を三脚台座に取り付けて,台座の真下がどの位置にあるのかを確かめてください.斜面に設置するときは,この求心器があると楽に設置できます.
トランシット の取り付け
三脚台座にトランシット を取り付けます.求心器を使って,測点のほぼ真上に取り付けた場合は,平盤気泡管による整準に進みます.
求心器を使わなかった場合は,求心望遠鏡をのぞいて,測点が真ん中に来るように三脚の位置を調整します.
求心望遠鏡のピントは,接眼レンズについているピントリングを回すことで合わせます.対象物用のピントリングと十字線用のピントリングの二種類あります.対象物のピントを合わせてから十字線用のピントを合わせてください.
もう少しで真ん中に来るという場合は,三脚台座に取り付けたネジを少し緩め,求心望遠鏡を覗きながらトランシット をずらして真ん中に持っていきます.ずらせる範囲は,限られています.目一杯ずらしても真ん中に来ない場合は,三脚ごとずらす必要があります.
円形気泡管による三脚台座の整準
測量機器を水平に設置することを整準と言います.まずはじめに,三脚の長さを調節して,三脚台座を水平にします.このとき,トランシット の整準ネジは,まだ使いません.三脚の長さを調整することによる整準は,求心望遠鏡の真ん中の位置が保たれたまま整準することができます.
三脚の石つきに片足を置き,三脚の先が動かないようにして,三脚のクランプを緩めて伸縮させます.円形気泡管を見ながら,気泡が真ん中に来るように調節します.1本の三脚だけで気泡が真ん中に来ることはないので,2本目の三脚の長さ調整で最終的に真ん中に持っていくことを念頭に合わせていきます.
平盤気泡管による整準
トランシット の下部にある整準ネジを使って,精密に整準します.水平クランプを緩め,平盤気泡管が,三つある整準ネジのうち,自分側の二つの整準ネジの中間に来るようにトランシット を回転させます.
二つの整準ネジを両手で持ち,共に自分の内側に回す(左手は左回り,右手は右回りに回す)と,左側は下がり,右側は上がりますから,気泡は右に動きます.気泡を左に動かしたいときは,自分の外側に回します(左手は右回り,右手は左回り).平盤気泡管は,非常に敏感なので,ゆっくりと時間をかけながら気泡を真ん中に調整してください.
自分側の二つの整準ネジについては水平になったので,向こう側の触っていない整準ネジを調整します.トランシット を回転させ,平盤気泡菅を90度回転させます.そして,向こう側の整準ネジだけで気泡を真ん中に調整します.
求心と整準のチェック
整準が終わったら,測点の真上にトランシット が設置されているか,求心望遠鏡で確かめてください.求心器を使わずに三脚を設置し,平盤気泡管による調整で,大きく動かした場合は,ズレていると思います.
何れにしてもズレている場合は,センタリング装置のクランプを緩め,トランシット を平行移動させて調整します.
調整後はクランプを締め,整準が保たれているか確かめてください.何回か,これを繰り返して,納得のいくまで精密に整準を行なってください.
もし,センタリング装置を使っても測点を真ん中にできない場合は,三脚に取り付けたトランシット のネジを緩めて平行移動させます.それでも真ん中に来ない場合は,三脚の設置からやり直すことになります.
視準と測角
トランシット を目標物に向けることを視準と言います.測量において,角度は,左から右回りで測るのが一般的です.北から東回りで方位角を表現することに由来しています.
トランシット に電源を入れ,水平クランプ・高度クランプを緩めて,水平方向に一回転,望遠鏡を鉛直方向に一回転させます.するとビープ音が鳴り,測角可能な状態になります.VAは鉛直角,HAは水平角を表します.
測角においてはまず,左の対象物にトランシット の望遠鏡を向けます.望遠鏡の上に黒い小さな筒があり,それを照準器として使って大まかに向け,水平クランプと高度クランプを締めます.望遠鏡を覗き,ピントを合わせます.対象物のピントは,対物レンズと同じ大きさのピントリングが,接眼レンズ側についています.対象物にピントを合わせた後,十字線のピントを合わせます.十字線のピントリングは,接眼レンズについた小さいリングです.
ピントを合わせたら,水平微動ネジと高度微動ネジを回すことで微調整し,十字線の真ん中に対象物を合わせます.このとき,基準点が見える場合は基準点の中心に合わせ,基準点が直接見えない場合は,ポールの最も下側に合わせます.ポールが鉛直に立っていない場合があるからです.
この基準点からの角度を測る場合は,ここの角度をゼロに設定するため,リセットボタンを押します.するとビープ音が鳴り,HAはゼロになります.
そして右の対象物にトランシット を正確に向けて,角度を測ります.得られた角度は,正読みの角度です.
次に反読みでも測ります.反読みでは,望遠鏡を鉛直方向に180度回転させるます.すると対物レンズが自分を向くので,水平方向にも180度回転させ,その状態で測角することを反読みと言います.測角値には誤差が含まれているので,トランシット 固有の測角誤差を軽減させるため,異なる状態で測り,平均化します.正読みと反読みの差が30"以内であれば,問題ないですが,それを超える場合は,整準や視準に問題がなかったか,もう一度確認する必要があります.
トンラシットの片付け
次の測点に向かうときは,トランシット 片付け,専用のケースに収納します.このとき,整準ネジやセンタリング装置は,真ん中に位置するように戻しておきます.そうしないと,次の測点での整準に手間取ることになります.常に元の状態に戻すことを忘れないでください.