土質力学7
圧密
圧密
圧密は,地盤が沈下してしまう現象の一つです.地盤が沈下する要因として多いのは,地下水や地中水が排水されることです.収縮限界を越える含水比の土は,間隙が押し広げられています.その水分がなくなると体積が減少します.地表面だとひび割れが発生し,地下深いところであれば,沈下に至るわけです.昔は,地下水を汲み上げ過ぎて地盤沈下が発生する事例が多く見られました.
土中の水分が排水される要因には,上からの荷重もあります.載荷されることによって徐々に排水され,沈下する現象が圧密です.粘質土の地盤は,毛管水が多いのでなかなか排水されませんが,長時間載荷され続けると,いつの間にか沈下していたという事態になります.ピサの斜塔は,この圧密現象によって傾いているそうです.軟弱地盤と呼ばれる土は,粘質土の多い地盤を指し,圧密への対策が非常に重要です.
飽和した粘質土の上に面荷重pを載せると,土粒子の噛み合わせで支える有効応力σ' と,間隙の中の水が支える間隙水圧uのそれぞれが支え合います.p = σ' + u となります.粘質土の場合は,飽和していると,間隙の水のほとんどが毛管水で,土粒子の噛み合わせは期待できず,間隙水圧だけで支えている状況です.それが応力を受けることで時間とともに排水され,排水しきれば有効応力だけで支える状況になります.圧密によって排水されて,間隙比が小さくなり,歪みとなって現れます.歪みεは,土の高さhがどれだけ変化したかΔhの比Δh / hで表します.
この歪みεは,荷重pに対して比例関係にありますが,時間とともに歪みは大きくなっていきます.実験の際には,pで載荷して24時間後,2倍の荷重2pを載荷し,さらに24時間経過させてさらに2倍の荷重4pを載荷するるという実験を繰り返して行います.そこで得た荷重と歪みの比例係数は,体積圧縮係数mvと呼ばれています.24時間で排水された水の量は,透水係数kが影響していますから,mvとk,水の単位体積重量γwを使って圧密基本方程式(教科書 式6.7)を得ることができます.この式では,圧密係数Cv = k / (mv γw)を使って表していますが,なぜこの圧密基本方程式が得られるか,それ導いた資料をこのページの下に付けておきます.
圧密基本方程式は,偏微分方程式なので,簡単に解くことができません.そこで,土の厚さや時間を絶対量ではなく,比で表すことで簡単な式にして使います.時間係数Tv = Cv t / H^2
ここで,Hは土の厚さを意味しています.この式だけでは,圧密の状況を推定できないので,圧密度Uを導入して Tv と Uの関係を式で表します.圧密度Uは,最終圧密沈下量Sに対する,時間t経過した時の圧密沈下量Stの比 St / Sで表したものです.Tv と Uの関係式も複雑なので,いくつかのパターンを想定してグラフ化(教科書 図6.4)し,そのグラフを読み取って圧密の沈下量を推定します.
例えば,最終圧密沈下量の半分沈下するまでの時間を求めたければ,教科書 図6.4から圧密度U=0.5の時の時間係数Tvを読み取り,上の式からtを求めれば,秒の単位で計算されます.
次に,t秒後の圧密沈下量を求めたいときは,時間係数Tvを上の式で計算し,教科書 図6.4から圧密度Uをグラフから読み取ります.あとは最終圧密沈下量Sに圧密度Uを乗ずれば沈下量が得られます.
なお,TvとUの関係のグラフは様々なパターンがあるので,推定したい圧密現象は,どれに当たるのかを選ばなければなりません.飽和された粘質土で,上からも下からの排水されるような,盛り土で圧密を起こす場合は,①を選びます.このときは土の厚さは2Hとなっていますから,Hは土の厚さの半分を代入することになります.同じように盛り土で圧密させるとき,下に不透水層(基岩など)があって飽和されているのが下の部分の場合は,②を選びます.
圧密は,事前に対策をすることが重要です.最も簡単なのは,盛り土で先に圧密させておくという方法です.大きな構造物を置かないのであれば,時間はかかりますが,この方法は有効です.
次は土中の水を排水させることです.サンドパイルといって,土に穴を開け,そこに砂を詰めれば,その砂を伝って水が蒸発するという方法です.深く穴を掘れば,深い部分の排水もできる利点はありますが,サンドパイルの施工費用に加えて,盛り土同様ある程度の時間は必要です.
範囲が広くなければ,杭を基岩まで打って対応するのも対策の一つです.時間をかけて待つこともないので,基岩が深くなければ有効な手段でしょう.