<あ>漢方処方


〇阿魏丸《東醫寶鑑》

「阿魏(軟らかく酢で煮て)1両、山子・莱服子・神麹・麦芽・陳皮・青皮・香附子各2両」を粉末とし、蒸餅で丸めて服用」◎肉積と食積の塊になった症。


〇阿魏元《東醫寶鑑》

「阿魏(酒侵化)・桂皮・莪朮・麦芽(炒)・神麹(炒)・莱服子・青皮・白朮・乾姜各5銭、百草霜3銭、巴豆37粒の皮と油は捨て、作末して薄糊で緑豆大の丸剤。生姜湯で20~30丸のみ、麺にあたった者は麺湯で呑む。」◎麺と生果を食べ過ぎて消化せず、積となって腹痛・嘔逆する者を治す。◎又、肉積を治す。


〇阿魏散《中薬臨床応用》

「阿魏18g、五倍子12g、生信石12g、蟾酥12g、鹵砂18g、明礬12g、藤黄30g、熊胆6g、竜脳3g、乳香30g、没薬30g、銅緑10g」◎腫瘍に外用。粉末を混合し、毎回適量をガンの表面に塗布する。◎体表のガンや子宮頸ガンに。


〇阿膠鶏子黄湯[1-1]《通俗傷寒論》《中医処方解説》

「阿膠6g、白芍9g、石決明15g(先煎)、釣籐鈎9g、生地黄12g、炙甘草3g、茯神12g、絡石藤9g、牡蛎24g(先煎)、鶏子黄2個」◎滋陰養血、柔肝熄風

◎大定風珠に準じる。


〇阿膠鶏子黄湯[1-2]《重訂通俗傷寒論》

「阿膠・釣藤鈎各2銭、白芍薬・絡石藤各3銭、石決明5銭、地黄(生)・牡 蛎(生)・茯神各4銭、鶏子黄2個、甘草(炙)6分」水煎服。 ◎熱邪が陰をやぶり、唇舌かわき、経脈はひきつり、手足がうごめく。


〇阿膠散[1-1]《小児薬証直訣》

「阿膠1両半、馬兜鈴半両、牛蒡子・杏仁各7分、甘草1匁、粳米1両」 ◎小児の肺虚、気粗に、喘促する者を治す。◎治小児肺虚、気粗喘促、 ◎此方は労嗽して諸薬効なく声唖咽痛して咽喉不利する者によろし。「麦門冬湯」と伯仲にして潤肺の効は勝れる。《勿誤薬室方函口訣》◎「補肺阿膠散」《銭乙方》に同じ。

〇阿膠散[1-2] 《小児薬証直訣》=「補肺阿膠湯」「補肺散」

「阿膠・馬兜鈴・牛蒡子・杏仁各3.0、甘草2.0、糯米煮汁100ml」◎治小児肺虚、気粗喘促、此方は労嗽にて諸薬効なく聲唖咽痛めて咽喉不利する者に宜し。麦門冬湯と伯仲にして潤肺の効は勝れりとす。《勿誤薬室方函口訣》


〇阿膠散[2]《古今医鑑》

「猪令湯車前子」


〇阿膠散[3]《仁斎直指方》

「生脈散茯苓・阿膠・白芨・茯苓・地黄」 ◎肺傷嗽血を治す。《雑病翼方》


〇阿膠湯《雞峰普斉方》 =「阿膠散[2]」に同じ。

「猪令湯車前子」◎血淋を治す。


〇阿膠附子湯《黴瘡約言》

「阿膠5.0 、附子1.5、 甘草2.5」《実用漢方処方集》◎梅毒による潰瘍、陰茎の腫脹疼痛。◎虚証に使用する。


〇安胃散《東醫寶鑑》

「人参・白朮・木香・檳榔・半夏(麺)・肉豆蔲・丁香・橘紅・缶香・青皮・白茯苓・甘草各8分」を挫作1貼を、水で煎服。◎食欲不振に。


〇 安胃湯[1-1]《万病回春》《東醫寶鑑》

「白朮・白茯苓・山薬(炒)・当帰・陳皮・半夏・藿香各1銭、黄連(姜汁炒)・蓮肉各8分、人参・縮砂各5分、甘草3分、生姜3、大棗2、烏梅1」水煎服。 ◎反胃を治す。◎反胃の者は胃虚し、食と吐して納らざるなり、此方に宜し。


〇安胃湯[1-2]《万病回春》《方彙口訣》

「人参1.5g、砂仁1.5g、黄連2.0g、蓮肉2.0g、藿香3.0g、陳皮3.0g、当帰3.0g、山薬3.0g、茯苓3.0g、白朮3.0g、半夏3.0g、烏梅1.0g、甘草1.0g、生姜、大棗肉」水煎、温服。


〇安胃湯[2]《古方選注》

「川椒、烏梅、黄連、人参、枳実、乾姜」 安栄湯《東醫寶鑑》「熟地黄・白芍・川芎・当帰・阿膠・香附子・桑寄生・白朮・黄芩・縮砂各1銭、糯米100粒」水煎服。 ◎胎気が堅固でなく、いつも流産する者。この薬で予防する。


〇安蛔湯《万病回春》

「人参・白朮・茯苓・烏梅・花山椒・乾姜」◎脾胃虚寒し、回虫を上から吐き出し、或いは下から便とともに出す。


〇 安肝湯《安藤昌益伝》

「使君子・檳榔・大腹皮・蓮肉・苦参各3.0、楊梅2.0、蜀椒1.0、附子、木 香、硫黄」《実用漢方処方集》◎治小児腹膨張、青筋出、肌膚甲錯、或いは喜唾、有虫候者。《勿誤薬室方函口訣》


〇安肝湯《安藤昌益伝》

「使君子・檳榔・大腹皮・蓮肉・楊梅・蜀椒・苦参・附子・木香・硫黄」 ◎小児、腹部膨張し、青筋出て、肌膚甲錯し、或いは喜唾して虫候のある者を治す。 ◎此方は小児腹満、青筋の症、陰陽錯雑、虚実混淆して、世医、脾疳などの方を施し、死せず癒えず、如何ともし難き者、此方を用いて意外の効を奏す。心得て試むべし。《勿誤薬室方函口訣》


〇安宮牛黄丸[1-1]《温病条弁》

「牛黄・欝金・犀角・黄連・朱砂・梔子・雄黄・黄芩各1両、珍珠5銭、氷片・麝香各2銭半」(巻1)


〇安宮牛黄丸[1-2]《温病条弁》【中成薬】

「牛黄・欝金・犀角・黄芩・黄連・雄黄・朱砂 ・山梔子各4・0g、冰片・麝香各1・0g、真珠2・0g」

◎感染性疾患で顕著な熱痰・意識朦朧の者。 <1 >嘔吐のあるときは藿香湯or生姜湯で服用し、 <2 >虚弱者は人参湯で、 <3 >産婦は生姜湯で服用する。


〇 安宮牛黄丸[1-3]《温病条弁》《中医処方解説》=「抗熱牛黄丸」

「牛黄・欝金・犀角・黄芩・黄連・雄黄・山梔子・朱砂各30、竜脳・麝香各7.5、真珠15」蜜で丸剤。1丸を3gとし、1日1丸服用。◎清熱解毒、安神開竅。◎急性熱病or脳血管障害などで、高熱・意識障害が有る者。◎温病で邪が心包に入り、意識昏迷しひきつけ、舌が動かなくて言語ができにくい。《漢方医学概論》


〇安血飲《中薬臨床応用》

「三七末3g <沖服 >、白芨15g、藕汁酒杯1杯 <沖服 >、茅根30g、竜骨15g、牡蛎15g、製大黄6g」◎吐血・喀血。


〇安息香丸《中薬臨床応用》

「安息香・沈香・丁香・木香・小茴香・藿香各9g、縮砂・甘草各15g」を作末して蜜で丸剤にし、毎回3gを紫蘇湯で服用。◎小児の寒による腹痛で、脚をまげ泣く者に有効。


〇安神益志湯[1-1]《寿世保元》

「柴胡・人参・麦門冬・知母・竹茹・五味子・茯苓・当帰・地黄・黄連・遠志・甘草」◎傷寒虚煩し、心驚・微熱・四肢無力・倦怠する者を治す。又、◎刑剋の証拠無く、昏沈人事を知らず、六脈ともに静かな者を治す。 ◎此方は、傷寒の壊症にして、六経正面の諸薬効なく、又《温疫論》などの方にも応ぜず、労疫にも非ず、百合にも非ず、餘熱荏苒として解せず、六脈ともに静かにして、精神振はざる者に験あり。《勿誤薬室方函口訣》◎疫後、健忘の者は此方に宜し。《先哲医話》◎《本朝老医伝》曰く、熱の解し難きに当たり、頻りに此湯を用いれば必ず発汗 して解す《傷寒翼方》


〇安神益志湯[1-2]《寿世保元》

「柴胡4.0、人参・麦門冬・知母各3.0、竹茹2.0、五味子0.5、茯苓・当帰・地黄各4.0、黄連1.0、遠志3.0、甘草2.5」《実用漢方処方集》


〇安神丸[1]《東醫寶鑑》

「人参・白茯苓・酸棗仁(炒)・当帰・生地黄(酒炒)・黄連(酒炒)・陳皮(去白)・天南星(姜製)各1両、朱砂・天竺黄各5銭、琥珀・雄黄・真珠・朱黄各2銭」作末し、梧子大に蜜で丸め、朱砂で衣をつけ、空腹時に温酒又は米飲で30~50丸服用。◎癲癇・驚狂・痰火に。


〇安神丸[2]《蘭室秘蔵》 =「朱砂安神丸」

「朱砂、黄連、生地黄、当帰、甘草(炙)」


〇安神定志丸《医学心悟》

「茯苓・茯神・人参・遠志・石菖蒲・竜歯・辰砂」◎癲癇、心悸亢進して寝られない。


〇安神湯[1-1]《東醫寶鑑》

「黄蓍1銭半、羗活・黄柏(酒浸)各1銭、柴胡・生地黄・知母(酒浸)各5分、防風2分半、生甘草・炙甘草各2分」を水で2回煎じた後、「川芎・蔓荊子各3分」を加えて、もう一度煎じて半分になったら、食後に服用。◎気虚・血虚からくる頭痛・目のまわりが黒くなる。


〇安神湯[1-2]《医学入門》《古今方彙》

「黄蓍2銭半、羗活・黄柏各1銭、甘草(炙)2分、柴胡・升麻生地黄・知母各5分、防風2分半、甘草(生)2分」水煎し、川芎・蔓荊子を入れ、再煎し食後臥に臨み熱服する。◎頭痛、頭旋、眼黒を治す。


〇安神湯[2]《寿世保元》《古今方彙》

「人参、黄連(姜炒)各1銭半、甘草5分、竹葉、生姜」煎服。◎夜啼止まず、心経に熱有り虚あるを作すを治す。


〇安神復元湯[1-1]《寿世保元》

「黄蓍・人参・当帰・酸棗仁・枸杞子・黄芩・知母・柴胡各2.0、黄連・黄柏・升麻・甘草・蔓荊子各1.0、防風・麦門冬・茯神・竜眼肉・遠志各3.0」◎耳鳴り、耳内の掻痒。


〇安神復元湯[1-2]《寿世保元》《古今方彙》

「黄蓍・人参・当帰・酸棗仁・枸杞・柴胡・黄連(酒炒)・黄芩(酒炒)・黄柏(酒炒)・知母・防風・麦門冬・茯神・小草・升麻・甘草・蔓荊子・竜眼」水煎服。◎思慮して心を煩し、而して耳鳴り、及び耳の内痒きを治す。


〇安神復醒湯[1-1]《寿世保元》

「当帰・川芎・芍薬・熟地黄・酸棗仁・遠志・山薬・竜眼肉・大棗各3.0、益智仁2.0、生姜1.0」◎不眠。


〇安神復醒湯[1-2]《寿世保元》《古今方彙》

「当帰・川芎・白芍薬(酒)・熟地黄・益智仁・酸棗仁・遠志・竜眼肉各等分、生姜、大棗」水煎。◎不寐を治するの套剤なり。

〇安神復醒湯[1-3]《古今方彙》

「当帰・川芎・白芍薬(酒炒)・熟地黄・酸棗仁・遠志・山薬・竜眼各等分」姜棗を入れて水煎服。


〇安神補心湯《東醫寶鑑》

「当帰・生地黄・茯神・黄蓍各1銭2分、麦門冬2銭、白芍・白朮各1銭、遠志・酸棗仁(炒)各8分、川芎7分、玄参5分、甘草3分」水煎服。 ◎驚悸を治す。


〇安神養血湯《温疫論》

「地黄・当帰・芍薬・茯苓・橘皮・桔梗・遠志・酸棗仁・竜眼肉」◎労復、熱甚だしく、虚甚だしい者。◎治労復、熱甚、虚甚、此方は労復の虚熱を解す。大抵は小柴胡湯・麦門冬湯の類にて治すれども虚熱去らざる者には此方を用いる。《勿誤薬室方函口訣》


〇安息香丸《全幼心鑑》《中薬臨床応用》

「安息香・沈香・丁香・小茴香・藿香各9g、縮砂・香附子・甘草各15g」作末し蜜丸。毎回3gを紫蘇湯で服用。◎小児の寒象を伴う腹痛で、脚をまげて泣く。


〇安胎飲[1]《東醫寶鑑》

「白朮2銭、黄蓍1銭半、当帰・白芍・熟地黄・縮砂(研)・陳皮各1銭、川芎・紫蘇葉各8分、甘草4分」水煎服。「白朮8g 黄蓍6g 当帰・白芍・熟地黄・縮砂・陳皮各4g 川芎・紫蘇葉各3.2g 甘草1.6g」《方薬合編》 ◎妊娠5~6ヶ月、胎動不安の者。常服すると良い。流産予防。


〇安胎飲[2]《方薬合編》

「人参・陳皮・大腹皮・白朮・当帰・川芎・白芍・香附子・縮砂・紫蘇葉・茯苓・甘草・灯心草・粳米各1.2g」◎妊婦の痘疹・腹痛・流産予防。


〇安胎飲[3]《医学入門》《古今方彙》

「当帰・芍薬・生地黄・白朮各1銭、人参・川芎・陳皮各5分、紫蘇葉・砂仁・黄芩・甘草各3分、生姜」煎じ温服。 ◎胎気不安にて腰腹微しく痛み、飲食美ならざるを治す。


〇安胎丸《東醫寶鑑》

「黄芩3銭、白朮1銭半」を作末し、粥で梧子大の丸剤。白湯で50~70丸飲む。 ◎妊娠4~5ヶ月目に、いつも流産し、不安な者。


〇安胎散[1]《万病回春》

「当帰・白朮各2銭、川芎1銭半、生地黄・益智仁・条芩・香附子(童便炒)・蘇梗各1銭、砂仁8分、黄連(炒)8分、甘草3分」作1剤。生姜3片入れ水煎温服。◎妊娠養血。◎胎を安んずる者は血を養い、脾を健やかにして熱を清す。もとより熱ある者に宜し。《古今方彙》


〇安胎散[2]《東醫寶鑑》

「熟地黄3銭、川芎・枳穀各1銭半、糯米1合、生姜3、大棗2」水煎服。 ◎驚いた為に、胎児が動き、腹痛・下血する者。


〇安胎止瀉湯《外台秘要方》

「当帰・阿膠・地黄・黄連・芍薬各1両、鶏子黄・朮米」◎妊娠下重、痛み腰背に引くを治す。


〇安胎当帰湯《医学入門》《古今方彙》

「当帰・川芎各8分、人参・阿膠各6分、大棗子、艾葉」水酒にて煎服。 ◎挙動、驚悸、胎動、下墜、腹痛、下血するを治す。


〇安胎和気飲《傷科補要》

「当帰・白芍・生地黄・川芎・条黄・白朮・縮砂」◎妊婦が傷を受け、腹痛が現れたもの。


〇安中散[1-1]《和剤局方》《中薬臨床応用》

「肉桂2・5g(服)、延胡索・小茴香・高良姜各9g、牡蛎18g(先煎)、縮砂6g、茯苓15g、白芍(酒炒)9g、甘草6g」水煎服。 ◎脾胃虚寒による腹痛・食欲不振・上腹部の膨満・嘔吐・下痢。


〇安中散[1-2]《和剤局方》《龍野一雄》

「延胡索・良姜・乾姜・小茴香・桂枝各5、牡蛎8、甘草10」を作末し、1日量5.0を3回に分服。 ◎虚証の胃痛、呑酸、或いは腹満腹痛《龍野ー漢方処方集》


〇安中散[1-3]《和剤局方》《漢方後世要方解説》

「桂枝4、延胡索・牡蠣各3、茴香1.5、縮砂・甘草(炒)各1、良姜0.5」(一方、乾姜(炮)1)七味作末し、毎服二、熱酒調下す。婦人は淡酢湯にて調服す。もし酒を飲まざる者は塩湯を用う。◎遠年、日近、脾疼、口酸水を吐し、寒邪の気内に留滞し、停積消せず、脹満、腹脇を攻刺し、及び婦人血気刺痛を治す。 ◎婦人血気、刺痛、小腹より腰に連り、攻重痛するを治す《方輿ゲイ》◎気痛みをなすを治する剤である。脾疼反胃とは、胃潰瘍、胃ガン、胃拡張、胃酸過多症等による腹痛に該当する。虚証にしてやや衰弱の傾向あり、腹壁菲薄にして無力感、臍傍に動悸を触れる場合によい。煎剤散在共に用いられる。雑、心下部疼痛を発し、諸薬効無き虚証のものにこの方の証が多い。《方輿ゲイ》にては散として熱酒にて服するときは効果優れたりと云う。煎服するも効あり、本方の更に虚し、症状強きは「丁香茯苓湯」である。 桂枝=血脈を通じ、腹痛を治す。縮砂=胃を養い痛みを止め、経を通ず。茴香=疝気腹痛腰疼を治し、胃を温む。延胡索=心腹疼痛を鎮め、経を通ず。牡蠣=脇疼を鎮め、老痰を去る。良姜=気を下し、中を温む。


〇安中散[1-4]《和剤局方》

「桂枝4g、高良姜2g、小茴香2g、延胡索2g、縮砂2g、炙甘草1g、牡蛎3g(先煎)水煎服。」《中医処方解説》


〇安中散[1-5]《和剤局方》《漢方治療の実際》

「桂枝4、延胡索・牡蠣各3、小茴香1.5、縮砂・甘草各1、良姜0.5」◎遠年日近、脾疼、翻胃、口に酸水を嘔し、寒邪の気、内に留滞し、停積し消えず、脹満、腹脇に攻刺す、及び◎婦人の血気刺痛を治す。◎此方、世上には嚢の主薬とすれども、吐水甚だしき者には効無し。痛み甚だしき者を主とす。《勿誤薬室方函口訣》 ◎やせ型で体力なく、虚弱で神経質な人に用いることが多く、 <1 >痛みを取り去り、 <2 >消化を助け、 <3 >神経の亢ぶりを抑えます。

【タイプ】 <1 >コーラー・サイダーなどの炭酸飲料が飲めない人に多い。 <2 >甘いものが大好きな人。 <3 >シクシクと痛が続く。

【適応症】《矢野敏夫》 冷え症、神経質で、胃痛や胸やけがあるもの。 胃腸病、胃炎、胃酸過多症、胃潰瘍による胃痛

【注意】 <1 >体力がある強壮な人には、あまり使わない。 <2 >熱症状・炎症がある時には使用しない。 「発熱のある者、炎症性疾患及び潰瘍性疾患の初期における胃痛や腹痛(疼痛を増強させる恐れがある)」《矢野敏夫》

◎もともとは粉末として酒or塩湯で飲むことになっているが、煎湯としても用いる《大塚敬節》


〇安中散 ★適応症及び病名 (五十音順)

[1]胃アトニー

[2]胃ガン:《矢数道明》

[3]胃炎(急性・慢性) ☆急性胃腸カタルには黄連湯、平胃散を用いる《矢野敏夫》

[4]胃下垂:☆およそ胃下垂症・胃アトニー症などの患者には、甘味を好む者が多い《大塚敬節》

[5]胃潰瘍: ☆本患者は3年前にもしばしば胃痙攣を繰り返し、毎月1回1週間ぐらい臥床することが半年ほど続いた。右臍傍に拇指頭大の硬結様抵抗を触れ、家族歴に胃ガンや子宮ガンが数人出ているので3回レ線検査を受け、わずかに幽門部の通過障害があり、胃液検査の結果、酸欠乏症を起こしているので充分癌腫の疑いがあるので、試験開腹を勧められていた。当時私は五積散や香砂六君子湯などを与え、服薬3月ほどで痙攣もなくなる。体重が10kgも減少したのを完全に取り戻し得た。このたびの初診時の訴えは約10日ほど前から再び心下部疼痛が始まったが、以前のように七転八倒する痛みではない。朝起きる頃や、食後1時間ぐらいに痛むという。疼痛は左臍傍に、絞め付けられるように痛み、30分ぐらいジットして耐えて寝ていると解消する。 診候、体格は普通。栄養はやや衰え、顔色はそれほど悪くはないが元気なく、顔貌苦悶状である。皮膚筋肉弛緩し軟弱、心下水分の辺りから左臍傍天枢穴の辺りにかけて著明な動悸を触れ、左臍傍において動悸の処を按すと痛む。疼痛もこの場所に起こるという。疼痛が起こると左の背及び腰にも波及する。食欲は悪くはないが、食後の苦しみが予想され、恐ろしくて摂れない。大便1行で、嘔吐も雑もない。胃内停水を認める。 経過、脈状や腹候によれば脾胃の虚、停痰の症である。現代病名では慢性胃炎か胃潰瘍であろう。小野寺氏圧痛点は陽性で膝の下まで放散する。前回にならって五積散や加味平胃散、次いで香砂六君子湯を与えたが効果がない。このような虚証の慢性胃潰瘍の痛みに苓桂甘棗湯の有効だったことを思い出してこの方に変えたところ、やや好転したが、即効とまではゆかない。そこで安中散茯苓に転方すると10日の服薬で痛みの大半が消失した。引き続き1ヶ月の服薬でほとんど全治廃薬した。《矢数道明》

[6]胃酸過多症による疼痛

[7]胃痛:☆腰背へ痛みが放散することあり。☆虚証の胃痛。☆本症は慢性に経過した胃疾患であって、急性炎症のいわゆる実熱の痛みでは無いことが、第1の条件であると思われる。次に酸水を吐すとあるが、多かれ少なかれ、胃酸過多症を起こしていることが、本方の第2の条件である。しかし私は検査の結果、酸欠乏症と云われた潰瘍性の疼痛に用いて効果があったこともあるから、酸過剰は絶対的条件ではないと思われる。第3の条件は寒邪の気溜滞ということである。たいていの場合、胃内停水を認め、虚寒の症であって、実熱の疼痛では決してない。面黄肌痩・四肢倦怠の文字は、栄養の虚えた虚証を表現している。《矢数道明》 ☆胃の疼痛を主症状とする。胸やけを伴う事が多い。《矢野敏夫》 ☆腰背部に牽引痛を訴えることあり。その際、腹直筋攣急する者は芍薬甘草湯を、下腹の表層圧痛の強い者は当帰芍薬湯を合方する《矢野敏夫》

[8]胃内停水

[9]嘔吐:☆朝食暮吐する者は、古の胃反なり。嚢は水飲胃中に停蓄し、痛強く、水を吐す。胃反は脈虚数、飲食化せずして吐す。嚢より重し。治方は同じからざれども、何れも減飲減食にあり。飲の痛みは「苓桂甘棗湯」あるいは「安中散」に宜し。《通俗医法捷径》☆反胃に用いるにも腹痛を目的とすべし。《勿誤薬室方函口訣》☆反胃や嚢で甘味を好む者に著効がある《福井楓亭》

☆この方は水をひどく吐く者には効無く、腹痛の有る者を目的として用いる《福井楓亭》 ☆嘔吐を伴うこともあるが、吐水があれば、安中散ではないことが多い。《矢野敏夫》

[10]悪心

[11]顔色悪い

[12]過敏性大腸症候群

[13]顔面蒼白

[14]筋肉軟弱(弛緩)

[15]月経困難

[16]減酸症

[17]十二指腸潰瘍

[18]神経性胃炎

[19]神経性胃痛

[20]心下痞

[21]心下部疼痛

[22]膵臓炎

[23]舌苔:薄い白苔《矢野敏夫》

[24]嘈雑(そうざつ)=胸やけ

[25]動悸:☆「+苓5.0」《柴田》 ☆腹中動悸 ☆臍膀動悸

[26]呑酸

[27]貧血

[28]腹痛(上腹部痛)☆痛みが激しい:「+芍薬甘草湯」☆生理痛もある便秘なし、色白の人:「+当帰芍薬散」☆生理痛もある:「+桂枝茯苓丸」☆腹直筋攣急する:「+芍薬甘草湯」☆遠年、腹痛を患う者:「+姜黄」《先哲医話》☆原因不明の腹痛にも応用。☆腹で動悸する部分が痛いというのは、安中散を用いる目標である《木村長久》

[29]腹部軟弱

[30]腹満:☆腹が張って腹痛する。

[31]婦人血気刺痛:☆この場合は、必ずしも胃痛とは限定されず、下腹部より腰に連なって牽引痛を発する場合である。血気刺痛という文字は血滞気滞によるものと解され、腹中の血行障害とそれに伴う神経性疼痛という意味にとってよいと思う《矢数道明》

[32]閉経:☆逐の諸剤を与え治せざる者は、「安中散」「抑肝散」などを与える。是れみな、南風を得んと欲すれば北を開くの理なり《先哲医話》☆《和田東郭》曰く、婦人経閉などに桃仁・紅花・虎杖・蘇木などを用ゆるは素人療法なり。安中散にて経を通ずることあり。その経閉は何故ぞと工夫して対症の薬を用ゆれば、必ずしも血薬を用いずとも通経すべし《勿誤堂一夕話》

[33]慢性胃炎:☆みずおち(鳩尾)にケイレン性の疼痛があり、皮膚や筋肉が弛緩して脈・腹部軟弱な者。へその横に動悸があり胃内停水を認める者。

[34]慢性胃拡張症:《矢数道明》

[35]慢性膵炎

[36]胸やけ

[37]幽門狭窄

[38]腰背への放散痛:☆痛みの範囲が広い:「柴胡桂枝湯」

[39]脈:弦弱


〇安中調気飲《東醫寶鑑》

「白朮土砂・香附子を水に3日間漬けて炒ったもの各3両、陳皮2両、半夏製(油炒)・白茯神・枳実・神麹(炒)・黄連・姜汁に漬けて猪胆汁で炒ったもの各1両、白芍薬8銭、紫蘇子(炒)・莱菔子(炒)各6銭、川芎・当帰(酒洗)・白豆蔲(炒)各5銭、」


〇安中調気丸《東醫寶鑑》

「白朮(土砂)・香附子を水に3日間漬けて炒ったものを各3両、陳皮2両、半夏(油炒)・白茯神・枳実・神麹(炒)・黄連(姜汁に漬けて猪胆汁で炒ったもの)各1両、白芍8銭、紫蘇子(炒)・蘿葡子(炒)各6銭、川芎・当帰(酒洗)・白豆蔲(炒)各5銭、炙甘草3銭、木香1銭を作末し、竹瀝・姜汁に神麹を入れて糊をつくり、緑豆大の丸剤。白湯で100丸飲む。◎反胃・痰気を治す。


〇安虫散[1]《東醫寶鑑》

「雷丸・檳榔・鶴虱各2銭、使君子7」細末にし、毎回1銭米飲で調服する。 ◎虫痛を治す。


〇安虫散[2]《東醫寶鑑》

「胡粉(炒黄)・檳榔・苦楝・根鶴・明礬(半生)・枯礬各2銭」作末して毎回2銭半服用。 ◎小児の虫痛。


〇安肺散《東醫寶鑑》

「罌栗殻(炒黄色)4両、麻黄・炙甘草各2両」作末し、毎回3銭を烏梅1個と煎服。 ◎痰嗽の新旧に関わらず治す。


〇安楽散《東醫寶鑑》

「人参・川芎・麦門冬・木通・滑石・当帰・灯心・甘草各1銭」水煎服。 ◎子淋を治す。