今回は牛の個体識別センターが公開しているデータをグラフ化して紐解いてみようと思います。
これは個体ごとに付番される10桁の番号。
9桁の個体識別番号と最後のチェックデジット1桁で構成された番号となっております。
チェックデジットとは、前の9桁に複雑な計算処理を施し、その番号が正当なものなのかをチェックする数字なんですね。
計算としてはこんな感じ
識別番号奇数桁(1,3,5,7,9桁目)の数を合計
識別番号偶数桁(2,4,6,8桁目)を合計
奇数桁の合計に3をかける
偶数桁の合計と奇数桁×3をプラス
上記の値を10で割り余りを出す
10から上記の値を引く
なんじゃこりゃ?と思うかもしれませんが、これこそ様々なシステム入力時のミスを未然に防ぐ防波堤の様なものなのです。
ちなみにExcelでチェックデジットを確認したい場合は以下の様な式で計算できます。
A1セルに個体番号識別が入っていた場合のチェックデジットはこんな式で計算できます。
=10-MOD((MID(A1,1,1)+MID(A1,3,1)+MID(A1,5,1)+MID(A1,7,1)+MID(A1,9,1))*3+((MID(A1,2,1)+MID(A1,4,1)+MID(A1,6,1)+MID(A1,8,1))),10)
個体識別番号を下記のサイトに入力すると、その牛が誕生してからの生産履歴を調べる事が出来るのです。
例えばうちの牛、16285-04628を検索してみると・・・
まずは総頭数のデータから
提供されているデータは月ごとに分けられています。 これらをすべて結合。
全国の総頭数から北海道の分を差し引いて、都府県と北海道との比較をします。
ホルスタイン種
ジャージー種
乳用種
交雑種(肉専用種×乳用種)
黒毛和種
褐毛和種
日本短角種
無角和種
黒毛和種×褐毛和種
和牛間交雑種
肉専用種
その他
と沢山牛の種類が登録されているのですが、今回はメジャーなホルスタイン種・交雑種(肉専用種×乳用種)・黒毛和種を年次別に比較します。
頭数が少ないと比較の対象にならないからです。
さてホルスタイン種の推移です。雄が減って雌は回復基調というところでしょうか。
「雄と雌は50%の確立で生まれるのでは?」と疑問に思ったあなた。鋭いです
昨今、雌雄判別精液というのが開発され、雌雄の産み分けが可能になった影響が出ているのだと思います。
酪農家さんは搾乳可能なホル雌を欲していますから、皆この技術に飛びつきました。
その結果がこの歪な雌雄比率に表れているのでしよう。
なんか特徴的な上下を繰り返してますね。もしかしたら市場の平均価格と関係があったりして・・・。
北海道のみの市場平均価格のデータを過去の日記に掲載したことがあります。そのデータを当てはめてみると ・・・
どうやら2016~2019年の牛バブルの影響も幾分あった様に見受けられます。ですが、相関が有るとまでは言えないような・・・。もしかしたら、牛の総頭数中での、割合が変わったのかもしれません。
いや!!、都府県の割合の突出ぶり・・・。
これは、本州の酪農家さんの飼養形態に由来するのでしょう。本州の酪農家さんは自身の牛群を飼養する為の十分な土地を確保する事が難しいのです。
「それでは牛を飼えないのでは?」
との疑問も浮かんできますよね。
その是非はともかくとして、基本的にはエサさえ確保出来るなら、牛を飼養する事は可能です。その餌を自作地から確保しようが、海外から輸入しようが、飼養の条件を満たすことはできるでしょう。
ただし、海外からの輸入飼料は為替・外的要因によって調達コストが流動的にならざるおえません。昨今言われている酪農家の苦境の根源でもあります。
その様な状況下では、資本の回転率の高い搾乳牛・生まれてすぐ販売可能なF1や和牛を産ませる事は経済合理性にも合致する方針と言えるでしょう。
共通点
これら3つのグラフ見比べると2016年頃に減少に歯止めがかかり以降、増加に転じているのが読み取れます。市場価格が上昇したことが原因なんですかね・・・。専門家の方の見解を聞きたいところです。
なぜギザギサの特徴的な波形をしているのでしょうか?酪農家の直観なんですが、
「夏の暑さで牛がへばり、涼しくなってきた秋に発情する牛が多くなり、コンディションも良いので高受胎率、約280日後(乳牛の妊娠期間)に出産ラッシュ・・・。」という筋書きでしょうか。
以下の資料で授精数や受胎率について書いています。
ホル♂の頭数の減少が顕著な事を前述しました。
通常ホル♂は和牛肉より肥育期間が短く回転率は良いのですが、和牛に比べて肉質が低いという特徴がありました。
安い価格帯の肉市場向けには重宝されていたと思います。
この頭数が大幅に減ったのですから、当然肉の量も減ってるはず。
その肉需要はどこにいったのでしょう?
調べる為に、以下のサイトを覗いてみました。
右が一人当たりの供給量。
左はどれだけ需要を満たせているかの割合。
牛肉の減った分は豚・鳥におきかわったのかもしれません。鳥と豚双方は右肩上がりに伸びてますものね。
目を引くのが卵の供給量!!。・・・安定してます。
左のグラフを見た方の中で「輸出量が無いじゃないか!!」と思われた方。鋭くないですww
拡大してみればわかるのですが下の方に底這って確実に存在しています。
ただこれでも納得できない方、右のグラフは輸出量だけを示したものです。
どうですか、この右肩上がりっぷり!!!いやいや、なかなか頑張ってますよ。
これからだ!!!というかんじではないでしょうか?
さて今回は公表されているデータからどんな事が読み取れるのか探ってみました。
データ分析の専門家ではない私でも、グラフにしてみれば色々な気づきもありました。
ホル♂の頭数の激減ぶりや、肉の輸入動向。個人的にアガったのは和牛肉の輸出量ですね。この傾向が進めば牛の販売価格も上がるかな?なんて期待してしまいました。
自分が気になることで、専門家の人が未着手な所は沢山あると思います。
みなさんも色々なデータを入手して傾向を見てみてはいかがでしょうか?
浅野正慶