今回は昨今言われている、酪農業の苦境について注目してみたいと思います。
とりわけその中でも大きな要因の飼料費の高騰について調べてみました。
近頃、酪農家が苦境に立たされているというニュースご覧になった方いませんか?
要因の一つが飼料の高騰なのです。
一部しか見られませんが「酪農スピードニュース」さんの記事の、グラフをご覧ください。
そして、これは日本だけの話にとどまりません。ヘッドラインしか見られませんが、以下の様な記事もあります。
外国は餌代含む各種資材高騰にリニアに反応し、最終製品である乳製品価格が上昇しています。
こういった状況下では経営者がとりうる戦略の一つは生産を伸ばすことでしょう。しかし、コロナで乳製品消費量が著しく減少。牛乳が余っている状況となっております。
生乳の消費量は以下の通り
そして加工の方も・・・
こうした状況で酪農家は今年度生乳生産を最大101%に抑制する計画下にいます。
酪農家が置かれている現状は餌を含む各種資材の高騰により悪化した収支を、増産で回復できない状態に陥っているのです。
原料は主に主要穀物のコーン・小麦・大豆とその他の各種栄養素を混ぜた飼料の事です。
酪農経営にも様々なスタイル(放牧・つなぎ飼い・フリーストール飼い)があり、どのスタイルでも基本的には粗飼料(牧草・コーンサイレージ)+配合飼料で牛は飼われています。
牧草やコーンサイレージの栄養価は低めで、これらのみ給与すると1頭当たりの生産を伸ばすのは難しいとされています。
イメージとしては人が、雑穀のみで生きて行く感じかな。ダイエットするにはいいのでしょうけどね(笑)。
そこで高栄養の配合飼料を給与する事で、栄養のバランスを整えます。
表示票とは、配合飼料の中にどの様なものがどんな割合で配合されているのか記載したものです。
食品の包装裏に書いてあるアレと同じものです。
割合の差はあれど主要穀物であるコーン・小麦・大豆が入っているのが確認できますね。
上記を見てもらえればここ数年で急に価格が上昇しだしたことがわかると思います。
これを反映して配合飼料の価格が上昇したのです。
これはある飼料の価格の推移 です。
ご覧の通り価格は右肩上がりに上昇しています。
最近は消費者の皆さんの理解も進んできているので、ご存じのことと思いますが、酪農は需給の調整が著しく難しい産業です。
過剰だとからといって、生産をパタリと止める事はできません。
生産を最低限に抑えつつ、牛が健康維持できる餌は与えないとダメなんです。
たとえ廃棄することになっても、搾乳する事が体調の維持に不可欠です。
現在、酪農の現場は消耗戦の様相を呈してます。
当然離農する人も出てきております。
今後仮に、世界がコロナ禍から脱し、日本にインバウンドが復活したとしても増産はままならないでしょう。
「そうなったら海外から買えばいい」とおっしゃる方も居るかもしれません。
前述の通り海外の価格も高騰しています。日本でコロナ禍が解消するという事は、海外でも需要が増加しているはずです。
さらに、日銀も簡単に政策変更をしないと思いますから、円安傾向は継続。
海外産品は安価には輸入できないでしょうね・・・。
酪農家としては、何らかの政府からの対策をあてにするより手が無い状況です。
また「農業は補助金づけ」とのそしりを受けるかもしれませんが、生産基盤は崩壊寸前です。
失くした生産基盤を取り戻すことがいかに困難なのかは、今の半導体業界を見れば一目瞭然でしょう。
消費者・納税者の皆さんにはご理解いただきたと思います。
(浅野正慶)