今回は酪農家が置かれている現状について書いていきます。
コロナ下では飲食店や観光業の苦境がクローズアップされました。
蔓延当初はは酪農への影響は軽微なもので済むと思われていました。
その後事態は一変、酪農家にも着々とコロナの影響が及んでいたわけです。
2021年の酪農情勢を振り返り、見逃せない話題として餌代の高騰が挙げられるでしょう。
この傾向は去年から始まっていて、農水省も昨年こんなパンフレット(PDF)作ってたりします。
過去5年のデータをみればわかる通り、この1年位のエサの価格高騰がいかに急ピッチなものだったのかよくわかります。
同時に、配合飼料メニューを構成するエサのうち、とうもろこし価格の上げが配合飼料の上げの大きな要因だったことがよくわかります。
これは先程の農水省パンフレットにも書いてありますが、配合飼料にはトウモロコシが多く含まれているので、当たり前なんですが・・・。
【需給要因】
生産量が少ないものは価格が高くなるのが世の常です。ただ、以下の記事を見ても実はトウモロコシの生産自体はそれ程少なかったわけではないことがわかります。
そして国際的な需給はこんな感じ。
このサイトの元データをダウンロードし適当ですが、訳をつけました。
記事中にも指摘されていましたが世界的に見た需要と供給のバランスは実はそれほど狂ってはいないと言うことがわかります。
【資金流入】
農水省 穀物市場への投機資金流入による食品価格高騰への影響この最初のグラフ【図1】参照。
シカゴ商品取引所 (CBOT)への先物取引の売り買いの枚数。
先物取引は一般的なイメージとは違って、農家にとってとても身近なシステムです。
上記サイトの先物市場の生い立ちの部分を読んでみると、なるほどと膝を打つはずです。
とにかく資金が2006年頃から流れ込んできているのは間違いないようです。
このグラフは2015年までのもの。
さて、2015年以降はどうなのか。
CBTコーン(CFTC建玉明細報告) | 北辰物産株式会社 (hoxsin.co.jp)
こちらは2015年からのCFTCでのコーンの建玉明細のグラフ。
ちなみにさっき出てきたCBOTはアメリカに数ある先物取引市場の一つ。CFTCはそれら先物市場をまとめて監督してるところ。厳密に言えば先程のサイトとは違うものを比べています。
分かって欲しいのは、高い水準の資金流入が続いているという事です。
【船賃の推移】
https://news.yahoo.co.jp/articles/e842f0931143c887851c9953f0230daee5b018a1の記事参照。
上記記事の画像を参照。コンテナ運賃の上りがえぐい(笑)。
「でも穀物だとかはコンテナで運んで来てないじゃん!!!」との声も聞こえてきそうですね。
BDIY 銘柄 - バルチック海運指数 名称 - Bloomberg Markets
上記サイトで比較期間を5年で設定し参照。
餌代の高騰の要因として言われたことが船賃の値段。
通常穀物は「ばら積み船」という船に積み込まれ輸出入されます。そのばら積み船の船賃を、英国のバルチック海運取引所(Baltic Exchange)というところが、世界中の業者さんから聞き取りをして指数としてまとめてくれています。それがバルチック海運指数。
このグラフでもしっかり上がってますね・・・。
こりゃ、船賃も価格高騰の一因ではある事は間違いないようです。
一般社団法人 Jミルク データベース 国内外の酪農乳業に係るデータ参照。
このグラフは乳製品の在庫量の推移を表したもの。
このグラフを見れば在庫量がマズい水準にあるのは一目瞭然ですね。
でも出回り量もバカみたいに下がっているわけではないんですね。
2021年3月あたりのポコンと上がっているのは一体なんなんでしょう?
僕にもわかりません。
【メガファーム設立数の増加 】
北海道の飼養頭数と飼養農家数の推移です。
農家数の下げトレンドは継続しているのですが、2017年位から飼養頭数が増加に転じていますね。
2017年? そう、当社の創業年です。このころはクラスター事業で大規模経営酪農家(メガファーム)が増えてき時です。
頭数が増えてきた所で、コロナが直撃。消費量が減退して、本州へ移送していた分が余剰に・・・。
と言うのが今回の生産調整への道筋の様ですね。
こうして見ると今年は酪農家にとって辛い事が多々ありました。
間違いない事は、これは一朝一夕で解消しようの無い問題だという事です。
来年はこの課題を抱えながら酪農家は営農していかないといけません。
最初の道新の記事に戻ると、1%の枠を新規就農者用に振り分け、さらに余った枠を規模拡大希望者に振り分けるみたいですね。
2017年頃に設立ラッシュで設立されたメガファームの経営者さん達は、そろそろ負債償還(借金返済)が始まるころです。
まあ、うちも含めてですよ(笑)
収入源である牛乳の出荷量を抑えられたら、後は経費削減しか手は無く、そこに来て先程取り上げたエサの高騰・・・。
でも償還額は一定で下げる事は出来ないと・・・。
う~ん、キツイ。
まあ、こんな情勢下でもしっかり経営している牧場は沢山あるんですけどね。
当社としては、細かい所まで目くばせして経営を安定させるしかありません。
EBITDAという経営指標があるのをご存知でしょうか?
内容は検索してもらうとして、当社の様な成長ステージで言えば初期段階の牧場は、この指標を改善すべく日々努力するべきだと思っています。
さて、来年はどんな年になるのか、今後も継続して精進していきます。
(浅野正慶)