2019/11/10
中西部の青い空
1994年、私はアメリカ中西部、ウィスコンシン州に居ました。
カラッと乾燥した空と抜けるような青が彼方の地平線と溶け合う。そんなイメージの中西部に関するニュースを見ました。
記事は中西部の農家が政治的な事で振り回され、苦境に陥っているという内容です。
農業は金銭と共に時間も投下しないといけない産業だと思っています。畑の土壌改良の為に毎年、土改資材を投入しても、土の成分は大きくは変化しません。数年やって始めて少し変わったかな?位のものです。
子牛も成牛になるまでに2年を要します。これは他の農産物でも同じで、満足のいく収量を確保するにはそれなりのコストとともに、長い時間を費やさないといけません。
農家は、数百年かけて堆積された物を微生物が分解した表土で仕事をしているのです。比較的短期に変化する政治的・経済状況によって、経営が大きく左右されるのはとてもつらいと思います。
アメリカは畑が地平線まで続くような、広大な国土を持つ国です。当然そこで生産された農産物を自国国民以外にも供給しなければ、農家は生計をたてられません。
そうなると、農業も貿易産業の側面を持ってきます。ですから、経営が海外の事情にも影響されるようになってしまいます。アメリカの農家は日本より広い視点をもって経営していかなければならないのです。
以下の表がアメリカの乳価です。アメリカの酪農家の乳価は、低いレンジで比較的安定している様に見えます。
表では皆さんに実感してもらいやすいよう、ポンド(453g)の乳価を1kgに換算し、同じ年の為替の平均をかけて日本円で1kgいくらか算出しました。正確な乳価ではないかも知れませんが、実感を持ってもらう為の目安です。
酪農家としてのの第一印象は、
「安い‼️、そして結構、動く!」
と言うものではないでしょうか?
グラフは年単位ですが、アメリカでは月単位で乳価が動くので、酪農家はたまったもんではないですね。農業が輸出産業になると農家は、こういう通貨変動も覚悟しなければなりません。
輸出する側の価格が変動するのですから、輸入する側も変動するのが道理でしょう。自分が買いたいときにたまたま円が強ければ安く買えますが、世の中そんなにうまくいきますかね?
輸入先を多様化して、その時々安い所から買えばいいだろうと思うかたも居るかもしれません。それも、そう簡単にいくのでしょうか?
仮にそういった利便性が高く、価格競争の効いたマーケットが進展しているとしましょう。
その場合、その作物の耕作適地以外の農家は市場から撤退し結局、寡占化するだけの様な気がしませんか?
最終的には、
「その農産物はあの国とあの国以外は作ってないよ」
なんて事になるでしょう。
農業は、それだけ適地適作の傾向が強いんだと思います。
日本でチョコレートに入ってるカカオ豆を作ってる農家はいないでしょ?
例え、居たとしてもそれを国際市場に出して競争力の有る品質、価格で出せますか?という話です。
輸入先の多様化を進めて、多様化が進まない!
そんなパラドックスに陥るような気がしてしょうがないんですが、皆さんはどう思いますか?
そう言うと「全部、国産にしろってか!」って言う人居ますよね。
何もすべて国産にしろとは言ってません。
だいいち、全部国産にしたらカカオ作る農家さん居ないからチョコレート食べれなくなりますよ(笑)
よく考えてみれば、日本は通貨が比較的高く、海外から食材を買って豊かな食生活を営める、幸せな部類の国だと思いませんか?
世界には海外から食料を買いたくても買えない国が、山ほど有りますからね。
この豊かな食生活を維持しつつ、国内の農業も守っていく微妙なバランスの政策をして欲しいですね。
さらに、消費者の消費行動も重要です。消費者の求める消費行動に抗う政策は、必ず潰えます。
農家の人は啓発を。
消費者の人は理解を。
相互に補完しあえれば、「作りつつ、買いつつ」この小さな国土の日本でも、豊かさを失わずに「食って」いける気がしませんか?
中西部の空が、これからもあの青のままで輝いていて欲しい・・・
そう思わされるニュースでした。
参考
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000898.html
https://ecodb.net/exchange/usd_jpy.html
(浅野正慶)