基線解析とは干渉測位法において、受信・記録されたデータをもとに、基線の長さと方向を決定する作業である。
測量士補重要事項 基準点測量 GNSS測量 (kinomise.com)
解析をする前に、まずは路線を組む必要がある
「路線」とは、既知点から他の既知点まで、既知点から交点まで又は交点から他の交点までをいう。
H28_junsoku_honbun.pdf (gsi.go.jp)
1. 設定確認
解析の前に、「アンテナ高読み替え」や、アンテナ高の設定が正しいか確認する
①アンテナ高読み替え
画面上部にある「設定」またはツールバーの「オプション設定」をクリックし、「アンテナ高読み替え」の設定を確認する
PCV補正に対応済の受信機の場合は「アンテナ高を読み替える」にチェックは不要になる
②アンテナ詳細設定
測点データの観測点ごとにある黄色のマークを右クリックして「編集」を選択し、アンテナ高の設定が正しいか確認する
電子基準点のアンテナ高は、測定位置を「アンテナ底面高を直接入力」にした「0.000」でよい
2. ベクトルの設定
①ベクトルの選択
解析に不要なベクトルは直接クリックか、左の表にあるベクトルを右クリックして「選択切替」で非表示にできる
誤って非表示にしても、「選択切替」で復活する
「表示モード」にある左側のボタンを押すと、使用するベクトルは黄緑、使用しないベクトルは黒で表示される
この表示モードでもベクトルを直接クリックして選択を切り替えられる
このモードではベクトルは消えないので、ベクトルの選択切替が簡単にできる
*非表示について
右側にある水色の円で、点名やベクトルを非表示にすることができる
矢印をクリックすると、表示モードに関係なくベクトルが非表示なる
点名で観測点の名称(座標編集で設定した点名)、紺色の円で観測点(丸い点)、水色の円で点グループ(画面上の水色の円)が非表示になる
②向きの変更
ベクトルの向きは、左の表で選択して、「ベクトルの向きを反転させる」(L⇔のマーク)で変えられる
ベクトルは始点と終点が一つの線で繋がるようにする
つまり、観測した場所から最も近い既知点(解析固定点)と、別の既知点が、ベクトルをたどって繋がるようにすればよい
③順番を変える
路線を一つの流れにするためには、ベクトルの解析の順番を変える必要がある
ベクトルが最も近い既知点から別の既知点まで繋がるように順番を変えることで、路線が組める
選択したベクトルを「ベクトルの解析順を一つ上げる」または「ベクトルの解析順を一つ下げる」(U▲D▼のマーク)で順番を変えられる
表にあるベクトルは、上の方ほど解析の順番が早くなる
順番の変え方は以下の通りとなる
(1)観測した場所から最も近い既知点があるベクトルを一番上に移動させる
(2)既知点同士がベクトルでたどれるように順番を変える
(3)終点の既知点があるベクトルを最後に移動させる
(4)同じ路線を使用している場合は、観測した場所から距離が近い方のベクトルの順番を上げる
*セッションの追加について
路線を追加するにはセッションを増やす必要があることも
セッションを増やすには下の表で右クリック「セッション編集」で「追加」
日時を設定すればベクトルもコピーされる
○○○Aが一つのセッションであり、数値は1月1日からカウントした日になっている
セッションが増えるとA,B,C…と名前が変わる
増やしたセッション内でもベクトルの設定をすること
3. 解析準備
①固定点の設定
ベクトルの順番を変更したら、解析固定点を設定する
解析固定点は、丸い点をクリックして「解析固定点」と表示されれば設定される(水色の円でもできる)
ただし既知点で座標がある点でないと解析固定点に設定できない。また、解析固定点は、観測データもないと設定できない
既知点の設定や、既知点の座標の入力がまだの場合は「座標編集」で行う
解析固定点は、スタティック観測を行った場所から最も近い既知点を選択すること
②オプション設定
(1) 解析固定点を設定したらプロセスガイドの「解析」の横にある「Opt」(オプション設定)をクリック
(2) 解析の順番を設定した場合は「解析手順」でセッション内のベクトル解析順序を「設定に従う」にする
※ベクトルの順番を変更しているので、この操作は必須
(3) 「設定の優先順位」にあるチェックボックスも入れて「終了」をクリック
4. 基線解析
①設定を終えたらプロセスガイドの「解析」をクリック
②「次へ」をクリック
③「選択されているベクトルのみを解析」を選択して「次へ」をクリックし、基線解析を行う
セッションが複数ある場合は「セッション単位で解析」でセッションごとに設定したベクトルの基線解析を行う
*単独測位値で解析を行うという表示が出たら
解析の設定やベクトルが間違っていると「単独測位値」となり、このまま解析を行うとエラーになる
解析時に以下の警告が出た場合は、設定を間違えている可能性があるので、キャンセルして設定をやり直す
*「既知点が設定されていない」警告について
基線解析や点検計算で「既知点が設定されていません」という警告が出ることがある
これは任意の既知点を設定していないためであり、任意の既知点はオプション設定の「偏心・任意の既知点」から設定できる
出た場合は「OK」でよい
5. 結果の確認
結果はプロセスガイドにある「記簿」に出る
(1)プロセスガイドの「記簿」をクリック
(2)解の種類とバイアス決定比を確認する
解の種類がFIXと記載されていなければならない
バイアス決定比も95以上(メーカー推奨値)となっていればよいとのこと
「記簿」にある座標値XYZは、ITRFの値となっている
平面直角座標系の座標値を入手したい場合は「座標設定」で記簿にあるITRFの値を入力すると、平面座標系に換算され、座標値がわかる
ここまで実行すれば、最短で新点の座標を入手できる
*精度について
ITRFを換算した座標の誤差は数cmくらいかと思われる
楕円体高が17cm、標高が17cm、Xは0.8cm、Yは2cmほどか
※高さ以外はあてになるかと思われる
※経度と緯度は設定に関係なくほとんどあてにならない
セミ・ダイナミック補正を使用した場合は精度が変化する
数mm程度の誤差になることもある
(1)基線解析で使用(「基線解析で使う」にチェック)した場合
Xが3cm Yが14cm 標高が2cm 楕円体高が2cmほどか
※セミ・ダイナミック補正は基線解析で使用しない方がよい
※なぜか高さの精度は一番よい
(2)基線解析で使用しない場合
Xが1.4cm Yが2.5cm 標高が5cm 楕円体高が5cmほどか
基線解析では、この方法が最も精度がよいと思われる
※実用網平均計算後の帳票でも精度を確認できるが、楕円体高の結果は出ない
*ITRFについて
ITRF系(International Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)とは、
IERS(国際地球回転観測事業)という国際的な学術機関が構築している3次元直交座標系です。この座標系では、地球の重心に原点を置き、X軸を本初子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、Z軸を北極(地軸の北端)の方向にとって、空間上の位置をX、Y、Zの数字の組で表現します。
※国際地球基準座標系(ITRF)では、IERS基準子午線を本初子午線としています。IERS基準子午線は、グリニッジ子午線(英国のグリニッジ天文台のエアリー子午環を通る子午線)の102mほど東を通過します。
6. 解析評価
①基線解析の後に、左側の表にあるベクトルを右クリックし「解析評価」を選択する
ここでは位相の差や、衛星の受信の状況が分かる
折れ線グラフは衛星の位相残差を表している
下の表には衛星の受信状況(記録の状態)を表している
端から端まで繋がっていれば衛星を受信し続けられたことを表し、途切れている場合は受信が途絶えたことを表す
基線解析で、FIXしていれば、右側で「FIX」と表示される
※点検を行った場合は、結果がOKまたはNGで表示される
②衛星の制限と仮解析
(1)衛星の制限
解析衛星で、なるべく端から端まで繋がっている衛星を使用して「仮解析」を行うと、精度が上がったり、点検計算が上手くいく可能性がある
折れ線はなるべく同じ形になっているものを選択するとよい
折れ線グラフであまりにも振れ幅が大きいものは避けるとよい
解析に使用していないものは点線になる
※衛星は減らしすぎると「解析失敗」となってしまうため、少なくとも4つ以上選択すること
(2)時間の指定
端まで繋がっている衛星を使用しても結果がよくならない場合は、折れ線グラフの下にあるつまみを移動させて、解析を開始する時間の指定を行うと改善される可能性がある
時間の指定は、左右にある時間の枠で上下ボタン(▲と▼のマーク)をクリックしても変更できる
※時間、分、秒ごとに変更するには、それぞれの数値をクリックしてボタンを押す
開始時間と終了時間は赤い縦線で表示される
(3)仮解析
「仮解析」を行うと、解析衛星で選択した衛星と設定した時間で解析を行い、FIXしているか、閉合点検や重複点検の結果が出る
「仮解析結果の処理」を「保存する」にして仮解析をして閉じれば、結果を保存できる
「全解析」は衛星の選択に関わらず、解析のオプションで設定された値を使用して基線解析を行う
「設定保存のみ」をクリックしてから「全解析」を行えば、現在編集しているベクトルの設定で、全てのベクトルの解析を行う
仮解析の横にある「<<」をクリックすると仮解析した履歴を表示することができる
解析評価にある「解析法」は、観測点同士の距離によって自動で変化する(オプション設定の「解析パラメータ」で解析方法を自動にした場合)。
Next: 点検計算
※ここからは、観測の精度(正しく行われたか)を確認していく