アノウ

戦国時代、城を築く際、自然石を巧みに組み合わせて堅牢な石垣を築き上げる石工集団がいた。その名は、穴太衆(あのうしゅう)。「石の声を聴き、石に従うべし」――それが彼らの極意であり、それができて初めて一人前の穴太衆とされた。

準備

使用カード:

 4人で遊ぶ時 トランプ 1組52枚(Jokerを除く)

 3人で遊ぶ時  トランプ 1組36枚(各マークの 2~5と Jokerを除く)

得点記録紙:

 得点を記録するための「メモ用紙」と「筆記用具」

マーカー:ひとり 4個

カードの強さ:

 4人で遊ぶ時 (強) A > K > Q > J > 10 > 9 > 8 > 7 > 6 > 5 > 4 > 3 > 2(弱)

 3人で遊ぶ時 (強) A > K > Q > J > 10 > 9 > 8 > 7 > 6(弱)

ゲームの勝敗

プレイヤーは穴太衆となって、計画どおりに石垣を築き上げることをめざします。ゲーム終了時、石垣の高さが計画を下回ればそれだけ得点も低く、かといって、計画を上回れば失点となってしまいます。一番得点の高いプレイヤーが穴太衆の棟梁に選ばれます。

ゲームの準備

各自、4個ずつマーカーをとり、自分の前に並べます。マーカーの前には獲得したカードを並べるため、隙間を空けて並べます。この、各自並べたマーカーの場所を石垣構築予定地と呼び、獲得したカードを石垣と見立てて並べます。

あとで説明するルールにしたがって、カードを獲得していき、獲得したカードを各自の石垣構築予定地に配置していきます。ゲームの流れを説明する前に、このゲームのポイントとなるこの石垣構築予定地について説明します。

石垣構築予定地

石垣構築予定地に配置するカードは、以下のルールに従って配置しなければなりません。

  1. マーカーの左から順にカード1枚、カード2枚、カード3枚、カード4枚の配置となるよう目指します

  2. 各マーカーはカードのマークに対応し、各マーカーの最初の1枚のカードを配置したら、以降はそのマークのカードは該当のマーカーの場所に配置しなければなりません。どの列をどのマークにするかはプレイヤーの任意ですが、同じマークを複数のマーカーに割り当てることはできません(4つのマーカーで4つのマークそれぞれに対応させます)

  3. 石垣構築予定地に配置するカードは、どのマークを何枚配置しているかわかるよう、少しずらして配置します

親の決定

一番最近お城を見たプレイヤーが親(ディーラー)になります。

ディールの開始

親(ディーラー)はカードをシャッフルしたあと、自分(親)から時計回りに 1人 1枚ずつ、順番にカードを配ります。

4人で遊ぶ時は配りきって各自 13枚ずつ、3人で遊ぶ時は 6枚残して 各自10枚になるよう配ります。3人で遊んだときの、配らなかった 6枚は次のディール(後述)まで使わないので、テーブルの隅に伏せたままの状態で置いておきます。

上の例では、4人で遊ぶので各自 13枚になるよう配ります。カードはすべて使い、残るカードはありません。配るときは親から始めます。

配られたカードが各々の手札です。これで準備ができました。

この、カードを配るところから手札を使い切るまでを 1ディールと呼び、ゲームは(プレイ人数にかかわらず) 3回のディールを通じて勝負します。

トリック

親の手番から始め、左隣へ順番に手番が回ります。多くのゲームと異なり、親(ディーラー)からの手番であることに注意してください。

リード

手番の最初の人は、手札の中から好きなカードを 1枚、 表 にして出します。この最初に 1枚出すことを「リード」と呼びます。

上の例では、親のリードで「Jのダイヤ」を出してリードしたところです。

手札から 1枚出すと、その人の手番は終了です。つづいてその左隣の人の手番になります。このようにリードした人から順に、時計回り(左隣の人へ順番が移る)にひとり 1枚ずつ手札を出していきます。

自分の番にできること

自分の手番が来たら、手札の中からカードを 1枚、表にして出します。この時、リードされたカードと同じマークのカードを持っていれば、必ず同じマークのカードを出します(これを「フォロー」と呼びます)。

上の例では「Jのダイヤ」がリードされ、順に「9のダイヤ」「7のダイヤ」とダイヤのマークのカードが出され、最後の手番のひとが「5のダイヤ」を手札から出したところです。

同じマークがなかったら

リードされたものと同じマークのカードがなければ、その場合に限って、「ござらぬゆえ」といいながら、他のマークのカードを出します。

上の例では、ダイヤのマークが手元になかったため「6のスペード」を出したところです。ダイヤのマークを出せないので「ござらぬゆえ」といいながらカードを出します。

トリックの勝者順位付け

全員が 1枚ずつカードを出したら(これを「1トリック」とよびます)、リードされたカードのマークと同じカードのうち、一番強いカードを出した人が、そのトリックに勝ち、強さが「一番目」の人になります。

続けて、次の順番で強さが「二番目」の人を決定します

  1. リードされたカードのマークと同じカードで、二番目に強いカードを出した人

  2. リードされたカードのマークと異なるカードだが、数字(英字)だけを見て強いカードを出した人

  3. 項2で複数の人が候補になる場合、手番順が先になる人

先の例のつづきです。このトリックで出されたカードは「Jのダイヤ」「9のダイヤ」「7のダイヤ」「5のダイヤ」です。リードはダイヤのマークなので、ダイヤのマークの中で最も強いカードである「Jのダイヤ」を出した人が「一番目」の人です。

続けて「二番目」の人を決定します。残ったカードは「9のダイヤ」「7のダイヤ」「5のダイヤ」で、この中で決定します。リードはダイヤのマークなので、ダイヤのマークの中で強いカードである「9のダイヤ」を出した人が「番目」の人です。

石垣構築予定地へのカードの配置

「一番目」の人と「二番目」の人は、次の順番で、トリックに使われたカードからカードを選んで自分の石垣構築予定地へ配置します。

  1. 「一番目」の人が、好きなカードを1枚取り、自分の石垣構築予定地へ取ったカードを配置します

  2. 「二番目」の人が、残ったカードの中から好きなカードを 2枚取り、自分の石垣構築予定地へ取ったカードを 2枚とも配置します

石垣構築予定地へのカードの配置は、マークごとに置く場所が決まっていく点に注意してください。

また、4人で遊んでいるときは、カードが1枚残りますが、残ったカードは裏向きに伏せて捨て札として扱います。捨て札は次のディールまで使いません。3人で遊んでいるときは「二番目」の人はカードの選択余地は無く、残っている2枚を配置することになります。

例のつづきです。「一番目」の人が最初にカードを選びます。今回は皆リードされたカードをフォローしたので、ダイヤのカードしか選ぶことができません。「一番目」の人は、手近にあった「Jのダイヤ」のカードを取り、石垣構築予定地の1枚だけ配置する計画の場所に置きました。この場所はダイヤのカードを置く場所として決まり、これ以後、ダイヤのカードを得た場合はこの場所に配置していかなければなりません。

例のつづきです。「一番目」の人が石垣構築予定地にカードを配置したのを確認してから、次に「二番目」の人がカードを選びます。ここにはダイヤのマークのカードしかないため、やはり手近にあったダイヤのカードを 2枚を取り、石垣構築予定地の 4配置計画の場所に置きました。この場所はダイヤのカードを置く場所として決まり、これ以後、ダイヤのカードを得た場合はこの場所に配置していかなければなりません。カードはマークと枚数がわかるよう、少しずらして配置します。

例のつづきです。4人で遊んでいるときはカードが 1枚余るので、残ったカードは裏向きに伏せて捨て札とします。このカードは次のディールまで使いません。

2トリック目以降

2トリック目からは、直前のトリックで「一番目」の人からリードします。

例のつづきです。「一番目」の人が次のリードをおこないます。今回はリードの人が変わらず、続けてのリードになりました。

ディールの終了

リードする手札がなくなると 1試合の終了です。

ディールの得点計算

各自の石垣構築予定地を確認し、以下の得点ルールに沿って計算します。

  • 石垣の高さ(カードの枚数)が計画と同じか、下回る場合:配置したカード 1枚につき 1点

  • 石垣の高さが計画を超えた場合:配置したカード 1枚につき減点 1点

石垣の高さが計画を超えた場合の減点は、超過分でなく、配置したすべてのカード分です。

また、すべての石垣が計画通りだった場合、次のボーナス得点を加算します。

  • すべての石垣が計画通りの高さ:ボーナス点として 2点追加

ディールの合計得点で 0点を下回る場合、ディールの合計得点は 0点とします。

得点の計算例です。マークごとに算出した得点を合算し、ディールの合計得点を求めます。今回は計画通り石垣を積み上げた人はいませんでした。

親の交代

直前のディールで、ディールの合計得点が最も高かった人が次の親です。

ディールの合計得点が同点の人が複数いた場合は該当者を対象に、直前のディールの親を基準に、時計回りに見て最も近くなる人が次のディールの親になります(ややこしい表現になりましたが、プレイ順 A(親) → B → Cのとき、Aと Bが同点だった場合は Aが次の親 ということです。つまり親が該当者に含まれていれば、続けて親をおこないます)。

ゲーム終了

プレイ人数にかかわらず、3ディールを終えるとゲーム終了です。

各ディールの得点を合計し、最も得点の高かった人が勝ちで穴太衆の棟梁となります。最高得点者が同点多数の場合は、該当者いずれも勝者(棟梁)です。

上級者向けバリアントルール『根石の配置』

以下は公式で紹介されているバリアントルール(バリエーションルール)です。基本のゲームに慣れてからお試しください。

  • ディールの開始時カードを配り終えたあとに、親から時計回りに、順にひとりずつ手札の中から1枚を選んで自分の石垣構築予定地へ表向きに配置していきます。このカードを「根石」と呼びます

  • 上記を二巡し、全員が合計 2枚を各自の石垣構築予定地へ配置します。すでに根石として置いた場所でも、2枚目を置くことができます。

全員が終えたら、以降は通常通りにゲームをおこないます

おうちの方へ

  • 本ゲームは Trick Taking Partyゲーム賞 2017応募作のひとつで、大賞受賞作です

  • 作者の与左衛門氏はその他ドクソン やカマリなどの著作があります

  • 今回紹介のルールは 2022年時点で作者ウェブページにて公開されているルールに準拠しています。ゲーム賞応募時点から 3人で遊ぶ際の使用カードに調整が入っています

  • 作者公開のルール記述にて不明瞭(複数解釈が生じる)箇所については、作者確認の上補足して本ルール解説をおこなっています

  • 1回のディールで獲得できる、ひとりあたりの最高得点は 12点(=1+2+3+4+2)です

  • 手札にリードのマークが無いときでも、どのマークのカードを出すか悩めるのが面白いところです

作者より

 アノウを創ったのは2014年か2015年頃だったと思います。

 当時、「6ニムト」や「ハゲタカのえじき」等のドイツゲームに出会って、こんな簡単なルールなのに、なぜこれほど面白いのかと衝撃を受けました。それで自分も創ってみようと思い、家にあるトランプで何かできないかと思いました。

 参考にしたゲームはラインハルト・シュタウペ氏のトリックテイキングゲーム「ダビデとゴリアテ」。それを、トランプの4スート13ランクならではの構成を活かして、さらに発展させる工夫はないかと考えて閃いたのが、スートごとに1~4枚のカードを獲得するアイデアです。これにより、どんな手札が配られたとしても、プレイの仕方によって勝機を見出すことができる、チャレンジングなゲームになったと思います。

 ゲームのルールが出来上がったところで、さて、ゲームの名前をどうするか。

 1~4枚のカードの列を作っていくことから、それをピラミッドに見立て、それにちなんだゲーム名にしようかと思ったのですが、ピラミッドと付く名前のゲームはすでに世に溢れかえっています。そこで、カードの列を日本のお城の石垣に見立てることにしました。そして、日本のお城の石垣といえば、何といっても穴太(あのう)衆でしょう。というわけで、ゲーム名が決まりました。

 さて、ゲームは出来たものの、発表する機会もなく、パソコンのなかで眠り続けていたのですが、2016年にひげくまごろうさんがトリックテイキング専門のデザインコンテストを企画されたことをたまたま知りました。そこで、応募してみたところ、思いがけず大賞を受賞しました。おかげさまで多くの方が遊んでくださるようになり、幸いご好評を得ているようで嬉しい限りです。

 トリックテイキングに馴染みの薄い人から愛好家まで、幅広く楽しんでいただけると思いますので、ぜひ一度お試しください。

参考文献

  • アノウ - 大一大万大吉の旗のもと 与左衛門の創作トリックテイキングゲーム集

  • Trick Taking Party ゲーム賞2017 の本(TrickTakingParty編 / ひげくま堂 / 2017)

本ページにて使用している TrickTakingParty Game Awards 2017のロゴは権利者である与左衛門氏の了解に基づき、TrickTakingParty主宰者ひげくまごろう氏から特別に提供を受けたものです。第三者の画像流用・二次時利用を固く禁じます。