第9話:都市計画審議会活性化のための提言

第9話

都計審活性化のための提言

都市計画審議会をすぐにも改革できる提案を

(NPO)日本都市計画家協会が発表した

どれほどの自治体がこれをとりいれてくれるか

(伊達解説)

「都市計画審議会活性化のための提言」を、(NPO)日本都市計画家協会が発表した。

これは主に市町村の都市計画審議会を対象に、法令改正等を必要とせずに、すぐにでもとりくめる方策を中心にとりまとめたものである。

日本各地の自治体には都市計画審議会があり、その都市の都市計画を定めてその都市のまちづくりを進めている。

都市計画を決定する権利を持っているのは知事や市町村長だが、そのまえに都市計画案をこの審議会に必ず諮らなければならない。

法的にはこの審議会がOKしないと決定できないわけではないが、事実上は審議会のOKが前提である。

その審議会について検討しようと、(NPO)日本都市計画家協会に設けた「都市計画審議会ウォッチングネットワーク研究会」(TOkeisin Waching Netowork Society=TOWNS)を、2007年に結成して活動してきた。わたしもそのメンバーの一人である。

研究会メンバーは全国各地の都市計画審議会を傍聴し傍聴記を書く。実際に都市計画審議会委員や委員経験者のメーバーもいて、審議会の現状を把握し、これでよいのか、どうあるべきかと討議して検討を重ねてきた。

わたしは、はじめは横浜近隣の各市の都市計画審議会を傍聴していたのだが、横浜市が都市計画審議会の市民委員を公募していることを知って、応募したら運良く当選した。

それが2008年の後半であり、その11月から年4回開催の審議会に欠かさず出席してきた。

審議会の前に、議題の現地を見てきることを自分に課した。都市計画は土地に関わるから、その場所を見ないとわからないのだ。また、市の事務局には議事資料を読んでも分からないことを事前に質問に行くのである。

そうやっていると、審議会の各回の議題の中には議案のままではどうも納得できないものもあるし、議案はよくてもそこに至るまでの市民への対応に疑問があるものもある。

議事内容への疑問を呈する案件が、これまでの毎回の審議会で、少なくともひとつはあった。原案を修正して出し直すように求めるのだが、一度も賛成を得られたことはない。審議の進めかたについても、いろいろと疑問もある。

TOWNSは各地の都市計画審議会の実情を調べつつ討議を重ね、都市計画審議会のありかたを示す提言案をまとめた。

その案を(NPO)日本都市計画家協会理事会において検討、修正のうえで承認し、協会の名で「都市計画審議会活性化のための提言」を5月19日に出したのである。

都市計画審議会は都道府県と市町村にあるが、今回は主に市町村の都市計画審議会を対象にしている。提言の内容は、そのために法令改正等を必要とせずに、すぐにでもとりくめる方策を中心にとりまとめている。(伊達解説終り2010/06/13)

(NPO)日本都市計画家協会

「都市計画審議会活性化のための提言」全文

2010年5月19日

NPO法人 日本都市計画家協会

都市計画審議会活性化のための提言

NPO 法人日本都市計画家協会は、都市・地域計画の専門家、まちづくりに興味のある人、まち歩きの好きな人など多様な人が参加してまちづくりを通して社会貢献しようと自主的に活動している組織です。

その中に設けた「都市計画審議会ウォッチネット研究会」(略称:TOWNS)では、自治体の都市計画が現状よりも実効性があり信頼されるものとなるためには、都市計画審議会の役割が非常に重要であると考え、まず、各地の都市計画審議会の傍聴にとりくみ傍聴記を当協会のHP*に公開してきました

* http://jsurp.net/xoops/modules/tinyd10/index.php?id=2

研究会では、傍聴記の内容や各自の現場経験をもとに、行政職員、市民、大学教員、コンサルタント等の都市計画審議会委員経験者を含む研究会メンバーが議論を重ねた結果、よりよい都市計画の実現のためには都市計画審議会が活性化され、より大きな役割を果たしていくことが重要との結論に至りました。

私たちの知り得た都市計画審議会には活発な議論がみられない例、時代の変化への対応が十分とはいえない例もあったからです。

都市計画審議会の活性化とは、単に議論が活発に行われることを意味するのではなく、公開原則の下に審議会の積極的かつ自主的な意思によって、適切な情報にもとづき幅広く充実した公正な議論を行い、意思決定することと考えます。

このたび、これまでの検討の結果から、都市計画審議会の機能と使命を私たちの認識として整理し、これをふまえて、都市計画審議会の活性化のために重要と考える事項をとりまとめ、都市計画家協会としての提言としました。

この提言は、各自治体(主に市町村を念頭においています)がすぐにでもできることから手を着けていただきたいと考えて、現行制度のもとで可能な、すなわち国の法令改正を待たなくても実行可能な措置や対応を対象にしております。なお、法令改正が必要な措置については、別途、当協会において検討を進めております。

本提言をたたき台にして各方面で活発な議論がされること、そして、採用可能な事項は、実際の審議会運営に適宜とりいれていただくことを期待いたします。

本提言に関するご意見等を積極的に当協会までお寄せください。

Ⅰ 都市計画審議会の機能と使命-私たちの認識

1.都市計画審議会に求められてきた機能

都市計画行政は、広い地域や広い分野に影響を与え、しかも専門性を有する行政分野であることから、①首長や担当部局の独断専行によらないこと、②一部の地域や業界の利益のみが優先されるものとしないこと、③専門的な知識に裏付けられた検討のもとに進められることが不可欠です。

そのため、都市計画審議会には、ア.関係者間の利害を調整する機能、イ.案件の正当性・妥当性をチェックする機能が求められてきました。

加えて、ウ.決定手続きの形式を整える機能、すなわち、都市計画審議会の「議を経」たことにより手続きの形式を整えるという機能もあります。

それぞれの機能が果たされている状況は、次のようなものと考えます。

ア.利害調整機能

市町村都市計画審議会では、関係行政機関である警察及び消防のほか、商工団体、農業団体、あるいは町会連合会等から、いわゆる充て職の委員が任命されることがあります。

しかし、実務上必要な調整は、関係行政機関については、審議会とは別に都市計画決定等の案策定の早い段階から行われますし、その他の団体等の意見は、別途提出の機会がある場合が多く、審議会に実質的な利害調整の場としての機能が求められることは少ないように思われます。いいかえれば、一同に会する都市計画審議会で異論が出ないことが利害調整済みであることの証であるともいえます。

なお、「逐条問答「都市計画法の運用」(第2次改訂版)」(建設省都市局都市計画課監修、平成2年7月1日)には、「都市計画の決定において、都市計画審議会の議を経ることとされたのは、都市計画が都市の将来の姿を決定するものであり、かつ、土地に関する権利に相当な制約を加えるものであるから、各種の行政機関と十分な調整を行い、相対立する住民の利害を調整し、さらに利害関係人の権利、利益を保護することが必要であり、このため、都道府県知事が都市計画の決定等を行うに当たっては、学識経験者、地方公共団体の長、議員、国の出先機関の長等からなる都市計画地方審議会の議を経ることにしたのである。」と利害調整機能のみが挙げられています。

イ.正当性・妥当性のチェック機能

十分な議論にもとづいて案件の正当性・妥当性がチェックされているとはいえない状況がみられることもありますが、その理由として、以下が挙げられます。

そもそも担当部局が都市計画審議会での実質的な検討を望んでいない。

・職員に、都市計画の専門家は自分たちであるという誇りがあり、審議会委員はややもすれば都市計画制度の理解も現場に対する土地勘も十分ではない「素人」と位置づけられやすい。

・その反対に、人事異動が多く都市計画の専門家が育たない、あるいは専門知識の無い職員が都市計画部門に配置されるため、職員に審議会を活用する力量や学識経験者委員とわたりあえる自信が十分になく審議会が重荷になっている。

都市計画審議会における審議では、本質的な意見を出しにくい雰囲気がある。

・審議会の議案となるのは手続きの最終段階なので、その時点で異論が出ると一連の手続のかなりの部分をやり直す必要があるなど、担当部局の負担が大きくなる。

・かつ、チェック機能を真に果たすためには現地調査はもちろん、検討の経緯等を細かに分析、把握する労力、能力及び時間的余裕が必要となる。

○これについては、素案段階、原案段階で都市計画審議会に報告している自治体もあります。案件によっては現地で意見交換を行う自治体もあります。

チェック機能を果たせる学識経験者委員が少ない。

・そもそも地方都市では都市計画関連の学識経験者が少ない。

・都市計画関連のあらゆる分野が学識経験者によってカバーされるわけではないので、委員の中に対象案件の専門家がいるとは限らない。

・学識経験者とは何かがあいまいなまま、商工団体や農業団体の代表者、行政経験者、関係行政機関の職員が学識経験者として任命される審議会もあり、そのような学識経験者委員の発言は、学識にもとづく発言というよりも利害関係者の立場からの発言となりやすい。

・細分化された一分野を専門とする委員は、自己の専門性の範囲でしか発言しないことがある。一方、他分野については、他の委員に任せて発言を控える傾向も見られる。

・都市計画以外の専門家(たとえば弁護士)は、その専門分野に関連する事項のみチェックするのか、学識経験者に共通するはずの論理的思考の面からチェックするのか、良識や大所高所からチェックするのか、期待される役割についての理解が共有されていない場合がある。

特に都市計画の専門家の学識経験者委員に欠席が多く、その委員の発言が得られない。

・日程調整が十分されない。

・そもそも委員を引き受けられるだけの日程の余裕がない委員が多い。

・適任と考えられる学識経験者に集中し、かけもちする委員が多い。

・形式的な審議となる場合が多いと、出席の優先順位が低くなりがちである。

ウ.手続き形式を整える機能

都市計画決定に際しては、法により「議を経」ることが求められていることから、たとえば、都市施設の法律用語変更に伴って対応する個々の都市施設名称を変更する場合のようにまったく形式的にこの機能が果たされる場合があります。

このような形式的な変更事項の処理については、審議会に常務委員会を置いてそこでの議に委ねる自治体もあります。

実質的な審議が求められる場合なのに、ア、イの機能が果たされないでの機能のみが果たされているように受けとられる結果、傍聴者から「形骸化した」という批判がされることがあります。

2.都市計画審議会に期待される使命

現在の都市計画法が制定されてから40年以上が経過する間に、都市計画をめぐる状況は、大きく変わってきました。

「市町村の都市計画に関する基本的な方針(通称:都市計画マスタープラン又は市町村マスタープラン)」策定時の住民参加や開発をめぐる紛争の経験等から都市計画に関心をもち、自分たちが積極的に関わって街をよくしようと考える住民が増えてきました。

また、地方分権にともなう都市計画の自治事務化は、都市計画と住民の間の距離を縮めましたし、行政一般に対する住民の意識も変わってきました。

近年の変化について「都市計画運用指針」(平成18年11月30日、国土交通省)は、次のように書いています。

「近年、行政一般に対して、行政手続の透明化や情報公開、説明責任の遂行が求められており、都市計画のように国民の権利義務に直接影響を与えることとなる行政手続については、特にその要請が高まっている。また、環境問題や少子・高齢化問題に対する関心が高まる中で、住民自らが暮らす街のあり方についてもこれまで以上に関心が高まっており、都市計画に対して住民自らが主体的に参画しようとする動きが高まっているところである。」

都市計画の分野でこれらの変化を受け止める場として、現状では、住民と都市計画行政をつなぐ唯一の常置機関である都市計画審議会が最もふさわしく、都市計画審議会は、

A.都市計画行政の透明性を高める使命

B.都市計画に対する理解を深める使命

を担うものと期待されます。

しかし、一般に、現状の都市計画審議会は、このいずれについても満足できる状況に至っていないようです。

A.都市計画行政の透明性を高める使命

求められる透明性には、

都市計画決定の内容や手続きについての透明性

手続きの最終段階である審議会運営における透明性

の2つがあります。

このうちについては、都市計画審議会の審議の過程において、チェックの対象とされるはずですが、委員の間ではこの点の重要性があまり意識されていないようです。

については、担当部局にも事務局にも審議会会長にも認識が十分でない自治体が多いように思われます。傍聴手続きの面だけでなく、審議会の議事運営において、たとえば、傍聴者に見えるか、聞こえるか、理解できるかなどの配慮が総じて欠けています。

また、議事内容と審議会議事録の公表については、一般に情報公開条例に情報公表制度として規定され、最低限の対応はされているようですが、その内実は、公表方法、公表内

容の粗密、公表結果へのアクセスの難易、公表時期などが自治体により審議会により大きく異なっています。

B.都市計画に対する理解を深める使命

現状では、都市計画審議会の傍聴者が少なく、都市計画決定の手続きの過程における公聴会等への参加も意見書等の提出も、一部の案件を除いて少ないようであり、住民の都市計画に対する関心は一般に高まってはいますが、顕在化するまでには至っていません。

そのためもあるかもしれませんが、都市計画審議会が都市計画行政についての市民の理解を深める使命を担うべきであるという認識は、担当部局にも事務局にも審議会会長や委員にもあまりないように見受けられます。

住民啓発が必要ですが、それ以前に、委員に対する啓発が必要な審議会もみられます。

Ⅱ 都市計画審議会活性化のための提言

以上をふまえ、質の高い議論が十分になされ、求められる機能を果たし、期待される使命を担い、議論の結果が都市計画行政に反映されることを願って、都市計画審議会活性化のために重要と思われる事項や検討していただきたい事項をとりまとめ、提言いたします。

提言1 審議会が果たすべき機能と担うべき使命の確認について

自治体には、まず、都市計画審議会の活用状況について以下の視点から点検し、各自治体のおかれている状況に応じて、都市計画審議会が果たすべき機能と担うべき使命を確認

することを望みます。

都市計画決定手続きの形式を整える機能を果たすだけになっていないか。

チェック機能をより充実させないでよいか。

利害調整機能は、都市計画審議会以外の場でどのように果たされているか。関係行政機関の委員の役割は何か。

都市計画行政の透明性を高める使命、都市計画に対する理解を深める使命が果たされているか。

附帯決議や建議その他の方法による意見提出がしにくい雰囲気がないか。

提言2 チェック機能について

都市計画審議会の機能として、チェック機能の一層の充実を図るために、以下のような対応が必要です。

担当部局は、計画立案の早い段階から都市計画審議会に意見を求めること。その際、重要な案件については、可能な限り複数案を提示すること。

担当部局の案件説明には、案件提出の意図や意味が伝わるように以下を含むこと

・案件決定の目的

・案件決定がもたらすメリットとデメリット

・デメリットへの対応策

・案件に対する合意形成状況と賛否それぞれの意見内容

・案件を決定しない場合の損失や問題点

・関連して必要となる施策の状況

・関連委員会、審議会等における検討状況

可能なかぎり、都市計画審議会として現地調査を行うこと

学識経験者委員には、中心的にチェック機能を果たすことが期待されるので、以下を求めること

・自身の専門分野について、専門的な見地からの意見を述べるだけでなく、専門分野周辺の関連分野も含めた総合的な見地からの意見を述べること

・短期的視点のみで述べるだけでなく、中長期的な視野で述べること、また中長期的な「あるべき」論のみでなく、短期的な課題対応にも配慮して述べること

・地域や業界の利害を超えた公正な観点から意見を述べること

・自身の意見を述べるだけでなく、他の委員からの疑問点が十分に解明されるよう、補足の説明や質問をすること

・やむを得ず審議会を欠席する場合は、事前に文書等により意見を提出すること

⑤都市計画決定等の提案制度や地区計画等の申し出制度による土地所有者等からの発議に係る案件については、提案者や申し出者に対する説明責任を果たすため、次の提言3と合わせて、公正な視点からのチェックを行うこと

⑥案件の実施にあたって留意すべき事項や案件決定の効果をより高めるために実施すべき事項、その他審議の過程で議論された重要事項を積極的に附帯意見や附帯決議として表明すること

⑦当該都市の特性等に理解を求めるため、事務局は、学識経験者委員に対し適切に情報提供し、新任の際は視察を行うこと

⑧事務局は、十分な時間的余裕をもって資料を事前に送付するとともに、委員からの要請があれば事前に議事内容を説明し、あるいは委員からの事前意見聴取を行うこと

提言3 会議運営について

単にチェック機能を果たすだけでなく、都市計画行政における透明性を高め、都市計画に対する住民等の理解を深めるために、審議会運営においては以下の点に最大限留意する必要があります。

①都市計画行政担当部局と都市計画審議会事務局は、別の組織とすること。やむをえず同じ組織が担当する場合は、別の担当者とすること

②議論を尽くすこと。委員間に疑問や会議運営に対する不満を残した状態で採決等により結論を出さないこと

③会長は、以下に留意して議事を進行すること

・担当部局に対する個々の委員の質問や確認に終始するのではなく、委員の意見、特に追加情報や計画内容の修正等を求める意見や提案について十分議論し、審議会としての意思表示に至ること

・採決前に各委員に発言を求めること。賛成である、意見がない、分からないという意見も求めること

・特に学識経験者委員に対しては、案件を理解しやすくし、他の委員からの疑問点が十分解明されるような発言を促すこと

・調査審議が客観的・効率的に進むよう、担当部局や事務局による資料作成や説明について助言すること

⑤会長は、採決にあたっては以下に留意すること

・各委員の賛否を挙手あるいは投票等によって確認することとし、一部委員の口頭による意思表示にもとづく曖昧な多数決としないこと

・単なる賛否だけでなく、条件付き賛否も問うこと

・案件内容を充実させるため、積極的に附帯意見や附帯条件の表明を提起すること

⑦審議会開催日程の決定にあたっては、会長と担当部局・事務局の都合だけで決めずに、日程調整を十分行うこと

提言4 審議組織について

都市計画審議会の組織については、質が高い審議を効率よく行うために、必要に応じて、次のような検討が望まれます。

①政令に規定された専門委員や臨時委員を活用すること

②参考人招致などの方法の採用を検討すること

③必要に応じて専門部会を設け、事前審議あるいは建議事項や附帯決議の詳細検討を行うこと

④政令に規定された常務委員会を設け、軽微な事項の処理に当たることも検討すること

提言5 委員の選任について

委員の選任(再任しないことも含む)に際しては、透明性・公正性を確保し、個々の委員の選任について説明責任を果たす必要があります。そのためには、選任に関して以下の点の検討が望まれます。

① 学識経験者委員の選任にあたっては、審議会等の委員経験の豊富な学識経験者のみを候補とするのではなく、学会・職能団体による推薦を受ける、それらの団体が作成する委員候補リストを参照する等の方法も含めて、委員適任者を広く発掘する努力をすること

②議会又は各党派に任されることが多い議員委員の選任についても、議会又は各党派に対して説明責任を課すこと。一部には、議員委員の数が他の委員の数と比べて多い自治体があるが、全体のバランスを考慮して選任すること

③住民委員を公募する場合は、その目的、公募の条件、選任方法を明示すること

④充て職委員の任命が必要な場合は、臨時委員や専門委員としての選任の可能性を検討すること

⑤事務局から独立した機関により委員を選任する、議会の同意を得るなども考えること

⑥地方都市などで学識経験者委員の選任が難しい場合は、学識経験者委員の全部又は一部を他市町村又は都道府県の委員による兼任とすることも選択肢として検討すること

⑦欠席の多い委員、際立って発言の少ない委員については、不再任とする可能性があることを事前に明示すること

提言6 情報公開及び啓発について

傍聴の扱い及び議事録の作成・公表に際しては、情報公開制度の趣旨と都市計画審議会の果たすべき使命-都市計画行政の透明性を高める使命及び都市計画に対する理解を深める使命に立ち返って下記の事項について検討が必要です。

①傍聴については、傍聴のしやすさと傍聴時における利便を図るため、以下の点について最大限の配慮を行うこと

・広報紙やHP掲載による審議会開催時期の早期公表、傍聴手続きの簡便化(郵送以外の方法の採用など)、傍聴人数制限の回避、傍聴者の待遇改善(資料配布、資料持ち帰り可、机の配備、説明や議論の見やすく聞きやすい座席配置)等

②議事録の作成・公表については、読み手の立場に立って以下の点に配慮すること

・議事録の早期公表、できるだけ詳細な内容の議事録の作成、発言者名の記載、議事録閲覧の容易化(ホームページへの掲載、図書館への配備、貸し出しなど)

③審議会開催日時については、一般市民が傍聴しやすい日時(例えば平日なら夕刻から、あるいは休日等)の採用も考慮すること

また、公募の住民委員を始め、審議会委員に対する啓発を兼ねて、都市計画についての市民向け解説書を作成することも望まれます。 以上

●参考1:現行の法令

1.法が規定する都市計画審議会の3つの任務

法第18条第1項及び第19条第1項は、それぞれ都道府県及び市町村の都市計画決定に際して「都市計画審議会の議を経」ることを求めており、法第77条第1項及び第77条の2第1項は、それぞれ都道府県及び市町村の都市計画審議会について「この法律によりその権限に属せられた事項を調査審議させ、」及び首長の「諮問に応じ都市計画に関する事項を調査審議させる」ため、都市計画審議会を設置すると規定し、それぞれ第2項で、都市計画審議会は、「都市計画に関する事項について建議することができる。」と規定しています。すなわち、都市計画審議会には、①法定の付議事項の調査審議②首長による諮問事項の調査審議③建議の3つの任務があり、③の建議がなされず、②の首長の諮問がない場合でも、①の法定の付議事項(都市計画決定等にかぎりません)の調査審議を行う、すなわち都市計画審議会の「議を

経」る必要があります。

2.政令が規定する任命が必須の委員と選択できる委員

「都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会の組織及び運営の基準を定める政令」は、都市計画審議会の委員として次の2種類の委員を挙げています。

ア.「任命する」と規定された委員

・学識経験者委員

・議員委員

・(都道府県都計審について)市町村長を代表する者、市町村の議会の議長を代表する者

イ.「任命できる」と規定された委員

・(都道府県都計審について)関係行政機関の職員

・(市町村都計審について)関係行政機関若しくは都道府県の職員又は当該市町村の住民

●参考2:TOWNSが傍聴した都市計画審議会

都市計画審議会ウォッチネット研究会では、2007年8月~2009年11月の間に、1県14市3区でのべ41回の都市計画審議会を傍聴しました。傍聴した県市区は次のとおりです。

【県】神奈川県(1回)

【市】群 馬 県:高崎市(4回)、埼玉 県:熊谷市(1回)、三郷市(1回)、東京都:八王子市(1回)、武蔵野市(1回)、町田市(4回)、神奈川県:横浜市(6回)、川崎市(2回)、横須賀市(1回)、鎌倉市(3回)、藤沢市(1回)、相模原市(1回)、静岡 県:浜松市(3回)、福岡 県:福岡市(1回)、【区】東 京 都:世田谷区(5回)、中野区(4回)、杉並区(1回)

傍聴記http://jsurp.net/xoops/modules/tinyd10/index.php?id=6

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