波羅立ち猜時記(2010年8月版) まちもり散人

はじめに

コンピューターを毎日いじっているが、まったくもってこんな役に立つ機械はないと思う一方で、こんな未完成なものを売りつけてけしからん、そのうえ使い方の説明の日本語がまったくもってなっとらんと、腹が立つ日々である。

コンピューターばかりか、世の中分からんこと、なっとらんこと、そして危ないことが増えてくる。

例えば、電気自動車なんてものをもてはやすのが分からない。電気自動車は排気ガス出さないけど、電気を製造するときにガスも核廃棄物もどしどし排出しているから、これはちっともクリーンじゃないぞ、なっとらん。

もうひとつ例えば、大規模超高層マンションなんて、あんな危険きわまる代物を、どうして世間では売り買いするのか、まったくもって理解できない。阪神淡路大震災であれほどその危ないことを証明されたのに、もうわすれたのか。

アラウンド古稀のわたしはアラコキというらしい。ウソコキも上手になった。アラコキほどの馬齢を重ねると、それなりに知識は多く積み重なってくる。そしてまた、それなりに枯れてきたり、余裕の心になってくるはずである。

ところが、わたしの知識と世の中の知識が、どうもずれて来ている様子があるのだ。

だから、世のものごとがどうもおかしなこと、わからないことが多くなり、それが腹立つのである。

腹立つ方向は、なにも人様ばかりではなく、自分自身に対して腹立つことも多い。

食い物に関しては、年とると不幸なのは、どんなに美味いものを食っても、どこかでこれより美味いものを食ったなあ、思い出すことである。若い頃はなにを食っても美味いと思っていたのに、不幸になった。

変な言葉遣いをする若いやつらに出会うと、そんな口の利き方は無いだろうよと言いたくなるが、そこをグッと我慢する。これまた腹ふくるる業なのである。

そう思って腹を立てる自分に腹が立つ。もっと素直に、美味いもの食ったと喜べ、若者の感性を理解しろと、自分に言い聞かせる。

あ、いかん、年寄りの愚痴を言うのではないのであった。

目 次

第1章 自分のPCなのに分からん

第2章 ブログが分からん

第3章 ハイテクITが分からん(業界編)

第4章 ハイテクITが分からん(言葉編)

第5章 デジカメが分からん

第6章 電気自動車が分からん

第7章 電話もテレビもおかしい

第8章 日本語がおかしい(会話編)

第9章 日本語がおかしい(単語編)

第10章 医療がおかしい

第11章 マンションがあぶない

第12章 東京駅があぶない

あとがき

長い人生で仕事やその周辺、そして趣味でたくさんの文章を書いてきた。いわゆる商業出版物は、共著も含めて10冊くらいだろうか。

でも仕事でまとめた報告書なる印刷物は、200冊を越えるだろう。それらは商業出版ではないが、わたしとしては面白がって私見もたくさん書き込んだものである。雑誌への寄稿はもっと多いだろう。

それらの昔の頃からの書き物を整理し、一部は書き直し、htmファイルにして、2000年ごろからインターネットサイトに掲載を始めた。

そのうちに書き下ろしも載せるようになり、ついにはブログも始めた。ぼう大なサイトになってしまった。

http://homepage2.nifty.com/datey/ http://datey.blogspot.com/

じつは10年くらいまえに、主なものをまとめて出版しようかと思ってその気になった。だが思い直した。これほどにインターネットが普及すると、紙情報よりもこちらのほうが優れていると思うようになった。絶版はないし、誰でもアクセスできるし、ほとんど無料なのである。

そこで、日ごろから書き溜めていること、ウェブサイトに載せているもの、どこかに出すために書いたものなどの内で、わたしが専門とする都市計画や建築史などではなくて、日々の猜疑心に富む僻目観察のバラバラ文章群を、書き直し編集して、「猜時記」と称してまとめてみたのである。

そして机上でデザインして編集、ときどき机上でプリントして装丁・製本、趣味の手作り本にしてそのときどきの見せたい人に配るのである。今日これをお読みの方は、その被害者のお一人である。徘徊老人に免じてご容赦を。

2010年8月 まちもり散人