雛形文書を作る
TeXで文書を作るには,ワープロのように何もない状態から書くのではなく,プリアンブルという設定をまず記述し,その上で,文書の始まりと終わりの宣言文を書く必要があります。この部分をあらかじめ書いたものを雛形文書として作っておけば,次からは中身を書くだけですみます。
雛形の基本
最低限の雛形は次のようなものです。(Windowsの場合は,\ は ¥ にします)
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\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\begin{document}
\end{document}
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はじめの1行は「プリアンブル」というもので,ドキュメントクラスとして jsarticle を用いるという意味です。
このほかに,
\documentclass{article}
\documentclass{jsarticle}
などもあります。
ここでは,ユニコードが使えるようにするので [uplatex] をつけておきます。KETCindyのセットとともにインストールした簡易版の場合は,[uplatex] をつけません。
また,
\documentclass[12pt,uplatex]{jsarticle}
としておくと,フォントサイズのデフォルトが12ポイントになるなど,オプションがいろいろあります。
実際の文書は,
\begin{document}
と
\end{document}
の間に本文を書きます。
たとえば,
------------------------------------------------------------
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\begin{document}
次の式を因数分解しなさい。
$x^2-3x+2=$
\end{document}
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と書いてタイプセットボタンを押すと次のような文書(PDFファイル)ができます。$ で挟んだ部分が数式になります。
ところで,up latex にしている意味をここで確認しておきます。
漢字コードでよく引き合いに出されるのが
森鴎外 と 森鷗外
でしょう。後者はユニコードなら問題なく表示されますが,そうでないと表示されません。
------------------------------------------------------------
\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\begin{document}
森鴎外 と 森鷗外
\end{document}
------------------------------------------------------------
なら後ろの 鷗外 が表示されます。
\documentclass{jsarticle}
にして,up latex ではなく platexs でコンパイルすると 鷗 の字が表示されません。
これは,ソースファイル(いま書いている文書。保存して .tex の拡張子がつくファイル)のコード体系がユニコード(UTF-8) であってもそうなります。
数学などでよくつかる丸数字やローマ数字もユニコードなら機種に依存せず表示することができます。
パッケージを使う
さて,実際のTeX文書を書いていくにあたって,図をいれたり,行間を変えたり,ページ番号を非表示にしたりするには,それらの設定を行うためのコマンドを書く必要があります。
たとえば,先ほど作った文書は,何も指定しないのにページ番号がついているでしょう。このページ番号をとるにはそれなりの手続きが必要になるわけです。ワープロでしたら「フッタの設定」になるでしょう。TeXでは,たとえば
\pagestyle{empty}
というプリアンブルを \begin{document} の前に書きます。
図を入れたりする場合はいろいろな設定が必要になるので,それらをまとめたものが「パッケージ」として提供されています。KETCindyを使って,Cinderellaで作図した図を入れる場合は,
\usepackage{ketpic}
が必要です。
このほか,いろいろなものがあります。
筆者が普段使っている文書では
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\documentclass[uplatex]{jsarticle}
\usepackage{ketpic}
\usepackage{amsmath,newtxmath}
\usepackage{graphicx,color}
\usepackage{wrapfig}
\usepackage{setspace}
\setmargin{20}{20}{20}{20}
\pagestyle{empty}
\begin{document}
\end{document}
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のようになっています。
\setmargin{20}{20}{20}{20} は余白の設定です。
さて,上のパッケージのうち,ketpic以外は,TeXLiveをインストールするだけで使えますが,ketpic はTeXLive には付属していないので,ソースファイルと同じフォルダに ketpic.sty を置く必要があります。ketpic.sty についてはKETCindyの「準備」のページを参照してください。
ソースファイルと同じ場所に置かない場合は,次の2つの方法があります。
(1) TeXの処理系が参照するフォルダに ketpic.sty を置く。
(2) ketpic.sty のある場所をパスをつけて指定する。
このうち,(1) は結構面倒で初心者向きではありません。(2)の方法を書いておきましょう。
たとえば,ketpic.sty がデスクトップの KETcindy というフォルダにあるとしますと,
\usepackage{/Users/Hoge/Desktop/KETCindy/ketpic}
のように指定するわけです。
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