長津江水電株式會社 虚川江第一發電所

~事業紹介~

―虚川江電源開発―

虚川江發電所は赴戦江、長津江と同じく、鴨緑江の支流を成し、この水を堰き止めて日本海岸の南大川に落とし、そこに高落差を得て5カ所に發電所を設け、合計約20万kWの電力を発生せしめんとするもので、赴戦江及び、長津江の方式と軌を一にしている。ただ、虚川江の二つの支流、「黄水院江」及び、「熊耳江」の双方に堰堤を設け熊耳江堰堤、蓮頭坪堰堤の水はこれを一応、黄水院堰堤、莎草坪堰堤に導水し、且つ黄水院江の上流に更に2個の堰堤を設けて莎草坪ダムの貯水を調整する点、及び南大川沿岸に於いて各発電所の放水を次々に下流の發電所に導水して利用するのみならず、その多数の支流を利用して小貯水池を設けて水を集める点に於いてや、計画が複雑となっている。而して工事の規模の雄大にしてその準備付属工事の大仕掛けなることは、赴戦江、長津江を凌ぐものがあるが、工事は赴戦江、長津江の現地の経験を以て極めて安心して施工されつつあるのである。

―端豊鐡道と建設軌道―

虚川江發電所地帯は端川より端豊鐡道により数10km北に入ったところであるから、建設工事従業員1500人の生活を保障するために各種の付帯設備を必要とするのは勿論であって、会社は工事現場の付近一帯に渡り、社宅、合宿、病院、学校等の設備の完備に遺憾なき期している。

又、工事進行に当たっては多種多量の機械器具、原料材料の必要なるは言を俟たぬ所であるが、輸送設備として特記すべきものに端豊鐡道株式會社がある。即ち長津江水電株式會社では端川より洪君に至る数十kmの鐡道敷設を計画し、端豊鐡道株式會社を創立してその建設経営に当たらしめることとした。同社の線路は昭和13年5月より一部輸送を開始し、虚川江開発事業の進行に寄与しているのみならず、昭和14年9月より一般の貨物及び旅客の輸送をも行い、付近一帯の交通運輸に貢献しつつある。現在毎月貨物輸送量は2万トン以上に及んでいる。

―虚川江發電所群―

虚川江發電所群に関しては以下の如くである。(計画発電量)

虚川江第一發電所 水路延長 11.6km 有効落差456m 出力70000kW

虚川江第二發電所 水路延長 18.6km 有効落差166m 出力30000kW

虚川江第三發電所 水路延長 15.1km 有効落差125m 出力42000kW

虚川江第四發電所 水路延長 17.0km 有効落差126m 出力44000kW

虚川江第五發電所 水路延長 ?km 有効落差?m 出力33000kW (終戦により建設中止)

南大川發電所 水路延長 1.6km 有効落差 70m 出力5000kW

貯水池及び堰堤は以下の如くである。

黄水院堰堤 堰堤高68m 堰堤頂長637m

内中里堰堤 堰堤高43m 堰堤頂長435m

莎草坪堰堤 堰堤高34m 堰堤頂長358m

蓮頭坪堰堤 堰堤高10m 堰堤頂長421m

洪君里堰堤 堰堤高100m 堰堤頂長210m

虚川江第一發電所

虚川江第一發電所 全貌を望む

莎草坪湖を望む

※2018年現在

莎草坪堰堤を望む

※2018年現在

虚川江第一發電所 全体を望む

虚川江第一發電所 サージタンク及びバルブ室を望む

虚川江第一發電所 建屋を望む

虚川江第一發電所 建設風景を望む

※昭和13年頃撮影?

虚川江第一發電所 膨張遮断器を望む

※昭和13年頃撮影?

~感想~

虚川江第一發電所は長津江水電株式會社が書類上最後に建設した發電所群になります。發電所の建設には長津江電源開発、赴戦江電源開発と同様に輸送網の整備として工事用軌道である端豊線を設けて資材輸送を確立し、深い渓谷に發電所を着々と建設していったそうです。

第一發電所形状を見ていても、赴戦江第一發電所、長津江第一發電所と非常によく似ているところが見られますね。この朝鮮の發電所と言うのは第一發電所は超高落差、大水量、大出力と最初はかなり大規模な發電所を建設しますが、下流のに行くに従い、落差は低下するので出力も低下しますが、虚川江發電所群はかなり出力が持続されているのが、日本に残されている資料から読み取ることが出来ます。別の観点からすると、元々渓谷が深いこともあって、落差が得られやすかったのではないかとも思いますね。

朝鮮の發電所では赴戦江、長津江でも110kV送電が大發電所群では一般的に使用されていましたが、日本本土でも154kV送電が読書發電所を初めとして大規模發電所では154kV送電が最大くらいとされていましたが、虚川江發電所からは發電所の各出力が膨大であり、且つ満州方面に向けて送電を開始していることから本格的な長距離送電の幕開けとなり、220kV送電と言う未知の超高圧を扱うことになり、電気学会などでも一部の学者が実証試験まで行ったそうです。本格的に使用されたのがこの虚川江の下流にある鴨緑江に建設された鴨緑江發電所の700000kWの当時世界最大規模の發電所であり、発生する大電力を満州、平壌、興南工場、永安、灰岩に送電を安定的に送電を行う実証試験として虚川江發電所群が220kV送電の第一歩として採用されたのではないかと思います。

現在、この虚川江第一發電所を初めとして、下流の發電所も現役稼働をしていますが、第一發電所の取水である。堰堤及び貯水池が無数にあることからかなり分断された貯水池だったのではないかと思います。また、当時の資料では他にも無数のダムが建設されていた様な事柄がありましたが、航空写真で確認したところ、それらしいところがありませんでした・・・・。

又近々、堰堤の水路利用でも調べてみたいですね♪

平成30年4月12日 執筆