旭ベンベルグ絹糸株式會社 延岡工場 ~人造絹糸製造~

~事業紹介~

―ベンベルグ絹糸―

旭ベンベルグ絹糸株式會社延岡工場は我国唯一のベンベルグ絹糸製造工場で日産15トンの製造能力を有し、世界最大のベンベルグ絹糸工場である。当社の製品は常に水量が多い許りでなく、その品質に於いてもドイツのベンベルグ工場の製品を凌駕している。ベンベルグ絹糸はコットンリンターを原料としてこれを銅アンモニア液で処理して製造される高級の人絹で強度特に高く、且つその織度の極小なること、光沢の上品なると、肌触りのよきことと等、到底ヴィスコース糸の企及し得ない卓絶せる品質を具備している。「今日では人絹のはいらない織物はない」とよく言われるがベンベルグ絹糸の品質は天然絹糸との交織に最も適している又、特殊の織物に於いてはこの交織によって天然絹糸に見られない織味を出すこともできるのである。

ベンベルグ糸の応用は甚だ広い範囲に渡っているが特にベンベルグ半巾の需要は急に激増を示してきた。その半巾は当社の専属工場で製造せられるもので何処の百貨店でも頗る好評を博している。半巾用としての原糸の消費数量は当社の全製造量に比較すれば僅少の部分に過ぎないがベンベルグ絹糸の優秀性を最も手近に証明するものとして興味深い。

―ヴィスコース糸―

当社の人造絹糸事業の最大の特色はベンベルグ糸であるが、当社は又ヴィスコース人絹の製造會社としても古き歴史を有する我国有数の大會社でその製造能力は日産35トンである。当社の製造する「旭マルチ」はヴィスコース人絹製造技術の最高峰を行くものである。

―ステープファイバー―

羊毛代用品としてのステープルファイバーが最近重要国策として特に提唱せられていることは今更喋々を要しない。当社に於いても旭ベンベルグの大津工場に於いて大量にこれを製造している。その日産能力は20トンであるが、卓抜なる技術に基くその製品は既に市場に定評の存するところである。

延岡工場 ベンベルグ選別工場の一部

ベンベルグ絹糸

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ベンベルグ絹糸

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ヴィスコース糸

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ステープルファイバ糸

※市販広告

ベンベルグ絹糸

※工業用 需要家向け

旭マルチ(ステープルファイバ) 店頭商品

※加工後の百貨店展示品

旭マルチ(ステープルファイバ)

ベンベルグ絹糸及び旭マルチ(ステープルファイバ)

※工業用 需要家向け

~感想~

旭ベンベルグ絹糸は現在の旭化成のことですが、野口遵によって独立して設立されたそうですが、日本窒素肥料の役員等により、日本窒素肥料の傘下に引き戻されてしまったそうです。なぜ単独で絹糸工場を設立したのかは少し不明なところですが、滋賀県大津工場を基は主要工場としていたそうです。現在の旭化成もそのまま継承されているので大津工場が主工場のような気がします。

人造絹糸は今でいうポリエステルのことではないかと思いますが、化学繊維と言うだけに、やはり熱、経年劣化に弱いところがあります。旭ベンベルグ株式會社は天然の絹糸と交織すると尚よいと、説明文中より読み取れますが、当時はそこまで経年劣化を考慮していなかったのではないかと思います。

当時、人造絹糸の中でもステープルファイバの需要が高騰したのは陸軍の軍用コートを安価で大量製造するためではないかと思います。今でも勿論使用していますが、「人造」とはさすがに言わなくなりましたね。。。

身近なものの原点を知るのはなかなか面白いものです。

平成30年3月29日 執筆