H01 4節リンク機構

アニメーションと軌跡の例として4節リンク機構をとりあげます。GeoGebraとCinderellaでの動作の違いがわかる一つの例です。

4節リンク機構は,図のようなもので,点A,Dは固定してあり,線分の長さも固定です。

点CをAのまわりに回転すると,点Eがそれにつれて動きます。


点FはCEの中点です。

問題です。Fの軌跡はどのようになるでしょう。

GeoGebraで作図

線分の長さはどれも一定なのですが,ACは可変になるようにしておきます。次の手順で作図します。

(1) 2点A,Bをとり,「中心と半径上の1点で決まる円」ツールでA,Bを直径とする円を描く。

点Aはあとでアニメーションをするときのために,原点に取っておきます。

(2) (1)の円周上に点Cをとります。

こうすると,ACだけは,点Bを動かして長さを変えることができます。

(3) 「中心と半径で決まる円」ツールで(1) の円の外に少し離して円を描きます。半径は適当に。今は1とします。

(4) 「中心と半径で決まる円」ツールで,Cを中心に大きめの((2)の円と交わるように)円を描きます。

今は 2.5 としておきます。

(5) (3)(4) の交点の一方を作り,C,Dと結んだ線分を作ります。

(6) CDの中点を作ります。

これで4節リンク機構ができました。点Cをドラッグすると全体が動きます。円を非表示にすると,冒頭の図ができます。しかし,点Cが左の方に来ると,線分が消えてしまいます。交点ができないので当然です。

Cinderellaで作図

Cinderellaでも同じ手順で作図できます。ただし,(1)は不要です。「半径つき円を加える」ツールで円を描けば,円周をドラッグすることで円の半径を変えられるからです。したがって,点の名前が1つずつずれます。また,点Aは原点に取る必要はありません。

Cinderellaでも,2つの円が離れれば当然2つの線分は消えます。

ところが,ここで,GeoGebraとCinderellaでは異なった動きをするのです。2つの円が離れたあと,もどして交わるようにすると,Cinderellaでは次のようになります。

2円の交点を2つあるうちの上の方に取ったはずなのに,下の方になっています。もう一度離してから戻すと元に戻ります。「離す」「戻す」を繰り返すたびに上下が入れ替わります。GeoGebraではこのようなことはありません。常に上側の点です。

このことは「不具合」でしょうか。ではどちらの方が具合の悪い図でしょうか。

作図上は,2つの交点のうち上下が入れ替わってしまうCinderellaの方が具合が悪そうです。しかし「リンク機構」を考えると,Cinderellaの方が正しく,GeoGebraの方が具合が悪いのです。リンク機構では,2本の腕がまっすぐになったあと,上下のどの方向に力を加えるかで2つの状態があり得ますね。CinderellaJapanではその2つの状態が交互に現れるのに対し,GeoGebraでは一方しか実現できません。

アニメーションにする

点C(B)をドラッグする代わりにこれを自動で動かしてアニメーションにします。この場合はCinderellaの方が簡単ですので,先にCinderellaでやります。「アニメーション」ツールを使って,点Bをクリックするだけです。画面左下にコントローラができるので,プレイボタンを押します。

点Bは円周上を回るかと思いきや,そうではありません。交点ができる範囲だけ動きます。

GeoGebraでは,アニメーションツールはなく,スライダを自動で動かしてアニメーションを行います。そのために,点Cがスライダで動くようにしなければなりません。今のままでは,点Cは円周上の点に過ぎないので,これをスライダで取得した値で位置が変えられるようにします。

まず,スライダを作りますが,数値ではなく,角度を取得します。

つぎに,点Cの座標を,この角度αできまるようにします。Cが乗っている円は半径が変えられるようにしているので,その半径も取得します。入力バーに

r=Distance[A,B]

と入力すると,半径が r に代入されます。次に

C=(r cos(α),r sin(α))

を入力バーに入力します。原点中心,半径 r の円を表す式です。このために,点Aを原点にとっておいたのです。

これで,スライダによって点Cを動かすことができるようになります。スライダを右クリックし,プレファレンスの「基本」タグで「アニメーション オン」にチェックを入れれば,スライダが自動的に動いてアニメーションができるようになります。画面左下にコントローラが出るので,プレイボタンをクリックすれば動き,停止ボタンを(に変わるので)クリックすれば停止します。

これで動くのですが,Cinderellaのように,「2円が交わる条件下で動く」ようにはできません。

軌跡を表示する

軌跡を表示するツールはGeoGebra,Cinderella,いずれにもあります。

まずはGeoGebraからやってみましょう。「軌跡」ツールを選べばよいのですが,スライダでCの位置を決めるときは無効なので,スライダを消して作図し直すか,UNDOボタンを何回もクリックして前の状態に戻ります。

軌跡ツールをクリックして,点Cと点Fをクリックすれば軌跡が描かれます。

しかし,この軌跡は,作図上は正しいのですが,4節リンク機構としては正しくありません。

同様に,Cinderellaで軌跡ツールを選び,BとEをクリックすると次のようになります。

アニメーションコントローラのプレイボタンを押してみると,確かに描かれている軌跡上をくまなく動くことがわかります。2円が離れる前後で,交点の位置が変わるためです。

GeoGebraではこの軌跡のちょうど半分が描かれていることになりますね。

最後に,はじめの円の半径を可変にしておいたので,変えてみましょう。Cinderellaでは,円周をドラッグすれば半径が変えられます。次のように軌跡が変化します。