A 基本的な作図ツール
GeoGebraでは,作図ツールがグループ化されています。これは,CabriII と同様です。これに対し,Cinderellaではすべてが表示されています。そのため
GeoGebra:ツールバーがすっきりしている。そのかわり,目的のツールがどこにあるか覚えないと非能率。
Cinderella:ツールバーがごちゃごちゃしている。そのかわり,目的のツールが比較的すぐ見つかる。
GeoGebraの作図ツールの分類については,「GeoGebra日本」の「基本的な作図ツール」に記載があります。このページを別ウィンドウで開き,見比べながら読み進めるとよいでしょう。
次の目次はこれに準拠し,さらに細かく項目を区切っています。
点
自由点と従属点
点には「自由点」「従属点」の2種類があります。「従属点」は,他の幾何要素に依存する点で,たとえば,2曲線の交点が従属点です。GeoGebraでは,これを「自由度0の点」と表現しています。
インシデント
点がある曲線上だけを動かせる場合,これを「インシデント」といいます。GeoGebraでは,「自由度1」と表現しています。
自由点は,GeoGebraでは青,Cinderellaでは赤,
インシデントの状態にある点は,GeoGebraでは薄青,Cinderellaでは自由点と同じ赤,
従属点は,GeoGebraでは黒,Cinderellaでは暗い赤
で表示されます。
点の作成
GeoGebraでは「点」ツール,Cinderellaでは「点を加える」ツールで任意の場所に点を作ることができます。このとき
・何もないところでクリック : 新しい点ができる
・すでにある点上でクリック : 点は追加されない
・直線や曲線上でクリック : インシデントの状態で点ができる
・2つの曲線の交点でクリック: 交点に従属点ができる
となります。
交点を取るときは,その近くでマウスボタンを押し,交点上でマウスボタンを離すのが確実な方法です。このとき,Cinderellaでは,点が交点上に吸い寄せられるようになります。(スナップという)GeoGebraでも同じような動作になります。
2曲線の交点
2つの直線や曲線の交点は,前述の方法の他,GeoGebraでは点ツールのグループから「2つのオブジェクトの交点」を,Cinderellaでは「2つの曲線の交点を求める」ツールを選んでとることができます。
中点
2つの点の中点は,GeoGebraでは点ツールのグループから「中点または中心」を,Cinderellaでは「中点を加える」ツールを選んでとることができます。
点の移動
点を移動するには,GeoGebraでは「移動」ツール,Cinderellaでは「要素を動かす」ツールを選んでおいて,点をドラッグします。
これらのツールは,標準状態 と考え,何か作図したあとはこのモードにしておく習慣をつけましょう。そうでないと,画面上をうっかりクリックして余分な点を作ることになりかねません。
特異点
関数のグラフの零点(x軸との交点)極大点,極小点,変曲点を作ります。GeoGebraには 極値にExtremum,零点にRoots というツールがあります。Cinderellaには,Cindyscriptのグラフを描く関数 plot() に zeros->true,extrema->true,inflections->true という修飾子(オプション)をつけます。
関数のグラフの節で解説します。
複素数
点のツールボックス(次節参照)にある「複素数」ツールを選んでグラフィックスビューでクリックすると,複素数平面での点がとられます。これについては,「応用」ー「オブジェクトの入力」ー「複素数」を参照してください。
ツールボックス
GeoGebraのツールはグループ化されているので,各アイコンの左下をクリックすることで,その中のツール群を表示するメニューが現れます。この中からどれかを選ぶと,ツールアイコンはそのツールのものに変わります。
これは便利なようで不便な面もあります。点のツールボックスから交点ツールを選んだあと,単に点をとるときはふたたびツールボックスを開かなくてはなりません。
GeoGebraのツールボックス
Cinderellaのツールバー(すべて表示)
ツールのヘルプ
ツールの使い方を表示することができます。方法が2つあります。
(1) 簡単なガイド
GeoGebraでは,ツールをポイントすると簡単なガイドが表示されます。
Cinderellaではツールを選択するとガイドライン(ツールバーのすぐ下)にガイドが表示されます。
(2) ヘルプ
GeoGebraでは,ツールバー右端にある?アイコンでオンラインヘルプが表示されます。オンラインですので,インターネットにつながっていないと表示されません。また,英語です。
Cinderellaでは,ヘルプメニューで「この場所のヘルプ」を選ぶと,ブラウザが開いてCinderellaのDocument (
マニュアル)から該当箇所が表示されます。これはオフラインなので,いつでも参照できます。
直線・線分・ベクトル
直線と線分は,GeoGebra,Cinderellaとも同じようなツールで描画します。
なお,作図するとき,GeoGebraでは「クリックしてマウスを移動しクリック」でも「ドラッグ」でも描けますが,Cinderellaでは「ドラッグ」だけです。
傾きつき直線
Cinderellaだけにあります。ある点でマウスボタンを押し,ドラッグして直線の傾きを決めてボタンを離すと直線が描かれます。1点だけなので,その点を移動すると,傾きを保持したまま直線が移動します。
長さを指定した線分
GeoGebraだけにあります。これで線分を描くと,始点(描き始めの点)を移動すると線分全体が移動し,終点を移動すると,線分の長さが一定のまま傾きが変わります。
Cinderellaでこれと同じ線分を描くには,「固定した半径の円を加える」で円を描き,半径を作図して,円を非表示にします。
点の間の折れ線
GeoGebraにあるツールです。「クリックしてマウスを移動しクリック」を繰り返し,最後にスタートの点をクリックします。
Cinderellaで同じことをするには,線分を加えるツールで「ドラッグして離す」を繰り返せばよいです。最後にスタートの点をクリックする必要はありません。
2点を結ぶベクトル
GeoGebraにあるツールです。Cinderellaではインスペクタを開き,「特別な表示方法」で矢線にします。
始点を指定したベクトル
GeoGebraにあるツールです。Cinderellaにはありません。
すでに1つのベクトルとそれ以外の点が描かれているとき,そのベクトルと同じベクトル(平行で同じ長さ)を,その点を始点として描きます。
Cinderellaで同じことを行うには,コンパスで同じ長さの半径を持つ円を描き,次に平行線ツールでそのベクトルに平行で円の中心を通る直線を描き,これを利用して円の半径を描きます。補助線(円と平行線)は非表示にしておきます。
垂線・平行線
GeoGebra,Cinderellaとも同じようなアイコンのツールですが,操作方法が異なります。
GeoGebra : 通る点をクリックし,次に直線(線分)をクリックします。逆でもかまいません。
Cinderella : 直線上でマウスボタンを押し,点までドラッグします。
垂直二等分線
GeoGebraにあるツールです。Cinderellaにはないので,中点をとってから垂線を引きます。
角の二等分線
GeoGebra,Cinderellaとも同じようなアイコンのツールですが,操作方法が異なります。
GeoGebra : 3点を順にクリックすると,2番目にクリックしたところにできる角の二等分線を引きます。
2つの直線をクリックすると角の二等分線が2本引かれます。
2つの線分の場合も直線と同じなので,目的の二等分線ともう1本の線が引かれます。
Cinderella : 2つの線分または直線を順にクリックします。このとき,角のガイドが出るので,目的の方を選択します。
したがって,引かれる二等分線は1本だけです。
接線
GeoGebraには接線を引くツールがありますが,Cinderellaにはありません。しかしCinderellaでも接線が引けます。
GeoGebra : 点と円または2次曲線を順にクリックすると接線が引かれます。
点が曲線上にあればその点での接線,曲線外なら,その点を通る接線です。
Cinderella : 2次曲線上の点における接線が引けます。
「点の極線を加える」ツールを選択し,点と極線をクリックします。
曲線外にある点からの接線を引くには,まず点の極線を描いておいて,交点を結んだ直線を引きます。
点の極線
GeoGebra,Cinderellaとも同じようなツールがあります。描き方も同じです。
最良近似直線
複数の点への距離の和が最小になる直線です。GeoGebraにはありますが,Cinderellaにはありません。Cinderellaで同じことを行うにはCindyscriptでプログラムを書く必要があり,ちょっと面倒です。
軌跡
GeoGebra,Cinderellaとも同じようなツールがあります。GeoGebraのガイドは少しわかりにくいですが,Cinderellaと同様で,はじめに軌跡を描きたい点,次に動かす点をクリックします。GeoGebraでは逆順に指定しても大丈夫です。
多角形
GeoGebra,Cinderellaとも同じようなアイコンのツールですが,でき方が少し異なります。
GeoGebra : クリックを繰り返し,はじめに点に戻ってクリックします。このとき,クリックしたところに点がなければ,新たに点を作ります。
Cinderella : 操作は同じですが,既存の点に限ります。クリックしたところに点がなければなにも起こりません。
正多角形
GeoGebra,Cinderellaとも正多角形を描くことができますが,方法が異なります。
GeoGebra : 1つの線分を1辺とする正多角形。辺の数はダイアログボックスに入力します。
Cinderella : モードメニューの「多角形」から「正多角形」選びます。1つの線分を1辺とする正多角形。
辺の数はドラッグで決めます。その他いくつかメニューがあります。星形(芒星形)もあります。
剛体多角形・ベクトル多角形
GeoGebraにだけあります。
円・弧
円と弧の描画は両者でよく似ています。描画手順もほぼ同じですが,描画後の動作が異なります。
・中心と円周上の1点で決まる円 : 円周上に点がとられます。
共通点 : 中心をドラッグすると中心の位置と半径が変わります。
円周上の点をドラッグすると半径が変わります。
中心と円周上の点の両方を選択してドラッグすると全体が移動します。
異なる点
GeoGebra : 円周をドラッグすると全体が移動します。
Cinderella : 円周のドラッグは無効です。
・中心と半径で決まる円 : 円周上には点はとられません。
共通点 : 中心のドラッグで移動します。
異なる点
Cinderella : 円周のドラッグで半径が変わります。GeoGebraにはこの機能はありません。
・固定した半径の円 : Cinderellaだけにあります。半径はインスペクタで入力します。
・コンパス : 2点をクリックして,その間の距離を半径とし,任意の場所でクリックして円を描きます。
できた円は中心をドラッグしての移動だけできます。
これは両者共通です。
・3点を通る円 : 両者で共通です。
・2点を通る半円 : GeoGebraだけにあります。
・中心と弧上の2点で決まる円弧 : GeoGebraだけにあります。
・3点を通る円弧 : 両者に共通です。
・扇形 : GeoGebraだけにあります。Cinderellaで同様の作図をするにはCindyscriptでプログラムを書きます。
作り方は「Cindyscript 基礎と応用」ー「幾何図形の描画」をごらんください。
2次曲線
楕円・双曲線 焦点と通る点を指定して楕円を描きます。両者に共通です。
放物線 焦点と準線を指定して楕円を描きます。両者に共通です。
5点を通る2次曲線 両者に共通です。
角度・距離・面積
角度
角度を測るツールは操作方法,機能に違いがあります。
GeoGebra : 3点を順にクリックする方法。クリックする順序によって,180°より小さい角か大きい角かが決まります。
2直線をクリックする方法。線分か直線かにより動作が異なります。
線分のとき : クリックする順序によって,180°より小さい角か大きい角かが決まります。
直線のとき : その直線を決めた2点の位置によってどの角を測るかが決まります。
表示される角は,0°〜360°
Cinderella : 3点を順にクリックする方法はありません。
2直線または線分をクリックする方法。ガイドが出て,どちらの角を測るかが簡単に決められます。
表示される角は一般角。
角の表示位置がそのままドラッグで移動できることは共通です。
大きさを指定した角度
GeoGebraだけにあります。ある2点(線分であってもなくても)に対し,指定した角度にある点を作図します。つまり,指定した角度になる2直線(線分)を簡単に描くことができます。
下図のようにとって,このあとAB,AB'を作図すればよいわけです。もちろん,もともとABが線分または直線であっても構いません。
Cinderellaで同じことをするには,Cindyscriptで第3の点の位置を決めます。
たとえば,点Cを作図しておいて
z1=complex(A);
z2=complex(B);
C.xy=gauss((z2-z1)*(cos(45°)+i*sin(45°))+z1);
を実行します。複素平面で計算しています。
距離・面積・傾き
距離と面積は両者でほとんど同じです。直線の傾きの表示はCinderellaにはありません。
鏡映・回転・平行移動・拡大
幾何変換です。これについては,GeoGebraとCinderellaではかなり様相が異なります。
まず,ツールバーに用意されているものは
GeoGebra : 直線に関する鏡映,点に関する鏡映,円に関する鏡映,点の周りに回転,平行移動,
倍率と中心点を指定してオブジェクトを拡大(相似変換)
Cinderella : 鏡映
Cinderellaにはツールが一つしかありませんが,これで,直線・点・円に関する鏡映がどれでもできます。はじめに「鏡になるもの」を選ぶので,それが直線か点か円かで,どの鏡映かが決まるのです。
Cinderellaにはさらに,「モードメニュー」に「変換」があり,この中に,回転,平行移動,アフィン変換,相似変換,射影変換,メビウス変換などがあり,さらにこれらの逆変換や合成変換を定義することができます。
元に戻す・やり直し
どちらにも似たようなアイコンで,元に戻す(Undo),やりなおす(Redo)ができます。