研究は、辺境への孤独な旅に似ています。そこは常に未知の世界であり、未知は往々にして混沌であり、また暗いものです。その暗闇の中に身を置き、さてどちらに足を踏み出そうかと悩むところに、研究者という名の旅人にとって、わくわくとした醍醐味があります。

　灯したわずかな光で足元を確かめつつ着実に歩を進め、振り返っては自らの足跡を確かめ、次の一歩の構想を練ります。ときには脱兎のごとく、果敢に駆け出すこともあります。また、底無しの沼に落ちてもがき苦しむこともあれば、大きな荷物を背負い、流れに逆らって川を渡らねばならないときもあります。その沼がどのような広がりを持つのか、その川がどこからどこへ流れようとしているのか、時間と空間を越えて想いを馳せるのもまた爽快な魅力です。旅人は、あとに続くであろう人々への道しるべを作り、橋を架けます。そこには辺境を旅するパイオニアとしての誇りがあります。

　より良い未来に向けて、いつかは到達するであろう楽園を夢見て、無限の汗を流してきた旅人が、ここにも一人います。一企業の研究所を主たる舞台として辺境の旅に出て以来、早いものでもう半世紀以上が過ぎました｡この間に踏破した荒野はいまだに辺境の地であって、そこにほんの一筋の小道を開拓できたという程度に過ぎなかったのかも知れません。しかしその道端には、私という一旅人の、思い出という草花が咲き始めています。その思い出の一端を綴ったのがこのホームページというわけです。どうぞご高覧のほどを！

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