コロナ禍第6波がまだまだおさまらない中ではありますが、本日は演奏会にお越しいただき誠にありがとうございます。Withコロナで、練習活動の仕方や演奏会の開催の仕方など、感染対策を行った「新しい様式」での音楽活動が定着しつつあり、皆様も少しずつ演奏会などを楽しまれているのではないかと思います。コロナ禍でのアルスの演奏会も今回で3回目となります。昨年は、一昨年行う予定だった2つの演奏会をそれぞれ1年延期して行いました。特に、第50回記念演奏会では、緊急事態宣言などで思うように練習場を確保できないなどの困難もありましたが、臨時の管楽器メンバーが参加してベートーヴェンの2曲の交響曲を演奏することができ、感慨深いものがありました。創立25周年の特別プログラムでもありましたが、今後も意欲的なプログラムや弦楽合奏の枠をこえた企画の演奏会を行っていくつもりです。
本日の演奏会では、弦楽合奏の原点に立ち返り、音楽を演奏する楽しみ、音楽を聞く楽しみを単純に味わうことができるように、親しみやすく聞きやすい曲を中心にプログラムを構成しました。前半は、バロック音楽からコレッリとヘンデルの合奏協奏曲を演奏します。どちらの曲も長調で、明るくのびやかな楽曲です。後半のウォーロックとレスピーギはいずれも近現代の作曲家ですが、いずれの楽曲もルネサンスから16世紀頃に作られた古い舞曲を弦楽合奏用に編曲したものです。元が舞曲なので、楽しく、かつどこか懐かしい雰囲気を味わっていただけると思います。
本日は、まんえん防止等重点措置期間ということもあり、本来の定員の50%制限で1席ずつ席をあけて座っていただいています。感染防止のため、マスク着用はもちろん、開演前や休憩中の会話は、極力お控えください。皆さまがお互い気持ちよく演奏を楽しめますよう、感染対策へのご協力をどうぞよろしくお願いします。
イタリアバロック音楽を代表する作曲家の一人であるコレッリは、17歳でボローニャのアカデミア・フィラルモニカの正会員となった。会員資格が20歳以上であるこの音楽家協会に特例として10代で入会を認められたのは、彼と100年後のモーツァルトだけであったと言われていることからも、その優秀さがわかる。少し後に活躍したバッハやヴィヴァルディが多作家であったのとは対照的に、コレッリが残した曲は80曲程度と少ない。自らがヴァイオリニストであったこともあり、そのほとんどが弦楽器のための作品である。
バロック時代に流行した形式である合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)は、独奏楽器群(コンチェルティーノ)と弦楽合奏(リピエーノ)の掛け合いで構成され、その両者が通奏低音によって伴奏される。代表作の一つであるOp.6は1680年代に作曲され、没後の1714年に出版された。全12曲中、第8番(クリスマス協奏曲)が最も有名で、この作品はヘンデルに影響を与えたといわれている。ヘンデルは、この作品の形式に基づいた合奏協奏曲Op.6を残している。
第1楽章 独奏楽器群と弦楽合奏が一体となり、明るく輝きのあるニ長調で曲が始まる。その後AllegroとAdagioが交互に現れ、緩と急を繰り返しながら曲が進む。
第2楽章 美しいコンチェルティーノで曲が始まり、導かれるように弦楽合奏もそれに応える。中盤からはヴァイオリンの細かい動きと低弦の時を刻むような動きが緻密に絡み合う。
第3楽章 哀感を帯びた美しいメロディーで幕を開け、爽やかなフーガが後に続く。
第4楽章 ジーグ風の楽しい踊りの音楽。次々と調性が変わり、最後は冒頭のニ長調に戻り曲が終わる。 (Va.柿崎)
合奏協奏曲集Op.6が作曲されたのは、イギリスで活躍していたヘンデルが54歳であった1739年、かの有名な「メサイア」が作曲される2年前のことでした。12曲からなるこの曲集は、わずか1カ月という短い期間に一気に書き上げられました。そのためインスピレーションが素直に反映され、自由で色彩豊かなヘンデルらしさにあふれる傑作となっています。
本日演奏する第2番は穏やかで素朴な美しさがある曲で、「田園風」と呼ばれることもあります。実際この曲を聴いていると、柔らかな日差しの中、気ままに散歩しているような気分になれるのです。ヴァイオリンソロのトリルが、鳥たちのご機嫌なさえずりにも聞こえてきます。
曲は四つの楽章からなり、中でも第3楽章Largoの美しさは格別です。お気に入りの森の中を歩きながら、時に立ち止まり、あぁいい気持ちと深呼吸をしてまた歩き出す、そんな情景が浮かぶ前半部分。そして後半は、雲間から差し込む光のような、神々しささえ感じる美しさで、幸せに満ちた優しい時間が流れていきます。
バロック音楽というと少し堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、伸びやかで情感豊かなヘンデルの音楽には、すっと心に入ってくるような親しみやすさがある気がするのです。緑あふれる季節が恋しい今日この頃、この「田園協奏曲」で皆様の心に一足早く暖かな風を吹かせられたら、と願いを込めて演奏します。 (Vc.吉江)
『オルケゾグラフィ』(舞踏体系)という当時のダンスの踊り方を楽曲とともにまとめた指南書が1588年に出版された。その中のいくつかの舞曲を元に、イギリスの作曲家ウォーロックによって作られたのがカプリオール組曲である。太鼓のリズムや笛の素朴な音色、リュートの繊細な響きなど、当時の雰囲気を感じさせつつ、原曲にはない新しい表情も見せてくれる。
第1楽章 バス・ダンス。フランス語で「低い踊り」という意味で、男女のペアが行列を作り、抑制された雰囲気の中、足を床に滑らせるように踊られた。
第2楽章 パヴァーヌ。北イタリアの古都パドヴァを語源とするイタリア起源の踊りで、「パドヴァ風の踊り」の意味。2拍子で、男女のペアが威厳のある行列を作って踊られた。
第3楽章 トゥルディオン。16世紀前半に盛んだったフランスの3拍子の踊り。
第4楽章 ブランル。フランス語のブランレ(揺れる)という言葉に由来
する。男女の組が輪を作って左回りに踊る五つの輪舞。
第5楽章 ピエ・アン・レール。ダンスで重心を片脚にかけた際に、残った空中にあるもう一方の脚を指すフランス語。
第6楽章 マタシャン(ソード・ダンス)。踊り手たちは小さな胴の鎧(よろい)をつけ、房飾りの肩章とつるしを絹地の上のベルトにつけている。兜(かぶと)は金色の厚紙でできていて腕はむき出し。足の上には鈴をつけている。右手に剣、左手には盾を構える。2拍子の独特な旋律で踊り、剣と盾のガチガチ鳴る音を伴う。 (Va.小坂井)
ボローニャ高等音楽学校で弦楽器・作曲・音楽史を学んだレスピーギは、20代は主に弦楽奏者(ビオラ、バイオリン奏者)としてキャリアを積み、30代から本格的に作曲家への道を進んだ。ギターの原型となるリュート曲などルネサンス後期の音楽に関心を寄せ、古楽の楽譜を探すのを楽しみとしていたとされ、本曲にもバロック時代とは少し違った不思議な和声が感じられる瞬間がある。それらを弦楽合奏曲にリメークしてくれたレスピーギに感謝しつつ、原曲が生まれた時代に思いを馳せながら演奏したい。
第1楽章 イタリアーナ(作曲者不詳、16世紀頃)。ところどころに登場するチェロのピチカートに原曲のリュートの伴奏の形がそのまま残っている。
第2楽章 宮廷のアリア。フランスのリュート奏者ベサールのリュート曲集からいくつかのアリア(原曲は歌とリュート伴奏)を集めて一曲にした。他の楽章に比べるとフランスらしさが感じられる。
第3楽章 シチリアーナ(作曲者不詳、16世紀頃)。 叙情的なメロディと付点のリズムが特徴的な曲。カゴメのテレビCMでリュートの原曲が流れていたので耳馴染みがある方も多いはず。
第4楽章 パッサカリア。イタリアのギター奏者ロンカッリの「スペインギターのためのカプリッチョ」の中に収められている組曲のうちの一曲。 弦楽器の各パートが重音をフォルテやフォルティッシモでかき鳴らしながら(ギターによる原曲に比べるとかなり重厚感がある)、曲の終わりに向けて疾走する。 (Vn.森本)