昨年あるシンポジウムで、野沢和弘氏が、知的にハンデイをもつ人の暮らしについて、「例え世界中が敵にまわったとしても自分を愛している人がそばにいたら彼らは本当に生きているといえるのではないか、その代替を医療や福祉や制度やサービスに求めていないか?」と発言し多くの関係者の胸を打ちました。「愛している」は「彼らが彼ら自身として生きることを認めそばで寄り添って生きること」と言い換えることができるかもしれません。新聞記者としての仕事の他に、ひとりの親として彼らの「権利」を考えてきた野沢氏には、仕事以外で関わった本と活動があります。「措置から契約へ」大きな福祉の転換期に熱い想いで世に送った本『施設にはもう帰らない』(中央法規 2002年)。ここには当事者達の生の声が集められています。ただし編集者のフィルターを通し、それだからこそ聞き取れた声だと紹介しています。この言は新聞記者の本領発揮でしょうか。『知的障害のある人を理解するために』(下記2005年)というパンフレットは犯罪被害を受けやすい彼らへの理解を警察官にむけてわかりやすく書いたものです。今全国では、スーパーの店員や一般市民を対象に、こういった啓発冊子を作る活動が盛んです。最後に昨年秋、千葉県で成立した「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」。傍聴席で条例成立を喜ぶ支援者の中に彼の姿がありました。「障害」が「障害」とならない暮らしを、との想いが彼の粘り強い活動を支えているのだろうと思います。