月刊福祉 特集「障害児支援を考える」を読んで
2014年7月厚生労働省は「今後の障害児支援の在り方について」という報告書を発表した。
この報告書では障害児を「他の子どもと異なる特別な存在ではなく、他の子どもと同じ子どもであるという視点を欠いてはならない」として、障害児の地域社会への参加・包括の実現の必要性が謳われている。
雑誌「月刊福祉」2月号でも、「障害児支援」の特集を組み、いろいろな視点からの検討を行った。報告書では、障害児は「小さな障害者ではない」という視点から「子どもとしての育ちを保障」することが重視され、地域での療育や相談事業などが盛り込まれているが、実現には課題も多い。また放課後等デイサービスについては、あるコンサルタント会社が「低リスク、高リターン」「障害の知識は必要ありません」といううたい文句で放課後等デイサービスの企業セミナーを開催しているとの話もあるらしい。おそろしい〜。現場では10対2の人件費しか保障されていないため、十分な人的配置が難しいという。質的に高い事業を実現するには課題が山積しているといえる。
特集にあたり、山本たつ子氏は以下のように述べている。
「障害児・者支援の思想として生まれたノーマライゼーションからインテグレーション、そしてインクルージョンをめざす考え方は決して最近のことではない。1981年の国際障害者年を契機として、我が国においても障害児・者支援政策は、大きく転換されるものとの期待が大きかったが、さまざまな進展をみせたものの、まだ不十分であるといわざるを得ない。特に、地域社会への参加や包容をどのように具体化するのか、みえてこない部分が多い。
障害児支援の地域社会への参加・包括を妨げている要因のひとつに、障害児を取り巻く支援体制が地域のなかで育っていないということがある。専門性に特化するあまり、地域社会との関係を構築できる環境になっていないのではないだろうか。障害児への支援は、長い間、そして今日においても、早期発見・早期療育がめざされている。それは決して否定されるものではないが、それだけを特化し、議論すべきではない。人として、社会に存在する個人として、生きる力を育てていくことも同時に行われるべき大切な要因である。」
タンタンの活動と重なるこの32年、地域ですべきことはまだまだできていないと言わざるをえない。 (谷内)