『治ってますか?発達障害』南雲明彦ほか著 2015年花風社刊
2010年の『発達障害は治りますか?』から5年、花風社の勢いはとまらない。
学習障害の当事者である南雲明彦氏も、栗本啓司氏の『自閉っ子の心身をラクにしよう!』『芋づる式に治そう!』を読んで「ラクになれる方法があるならやってみよう」という空気を作りたくなったと言う。今、しんどい思いをしている子どもや親に身体の緊張を緩め、脳をラクにする考え方のあることを知らせていきたい、と言う。もともと持っている高機能の脳と身体、その脳の余裕、身体の余裕が、学習の土台になる。その土台作りこそが大事だ、と訴える。
そして、南雲氏は学習障害であっても、障害があることをあきらめてはいけない、生活をしていくために、社会で生きていくために、今困っているところを整理し、学び続け、経験も重ね、そのための力をつけていくべきだ、と言う。社会で生きて行くルールも大事。発達障害者だから許される、社会が理解してくれる、というのはおかしい。努力をあきらめひとところに囲い込まれて生きて行くのはよくない。ただ才能をいかせばいい、と見極めもないまま簡単には言えない、というのも説得力がある。「本人もできる限りの努力はするべき、社会は思う以上に寛容で努力している人には優しいもの。」外とつながることによって自分を理解してもらうことが一人一人にできること、だと言う。
「発達障害者の抱える生きづらさを短絡的に社会のせいにしてしまうとその言論を真に受けて、図に乗る当事者も出てきます。ややこしい当事者も出てきます。ややこしい当事者は、結局社会を批判する世界でしか生きていけなくなります。そんなことを考えている暇があれば、生きて行く力をつけることに専念する、その力をつけるために支援者は存在するんです。」という言葉は力強い。
南雲氏を見直した。そして、今回は、やたら関係者にかみついている浅見氏よりも南雲氏が大人に見えたのがおかしかった。 (谷内)