『自閉症ボーイズ ジョージ&サム』
(シャーロット・ムーア著 アスペクト 08年)
著者シャーロット・ムーアは3人の息子と暮らしている。そのうちの2人13歳のジョージと12歳のサムは自閉症だ。日常生活は、なかなか大変。嵐のような毎日がやっと少し落ち着いてきたところである。しかし彼らと共に自然の中で過ごす時間は実に気持ちがいい。ムーアは彼らの純真さ、一風かわった高潔さを愛している。兄弟はとても仲が良く一緒に寝ることも多いが、それぞれ違う個性をもっている。息子達を観察しながら、聡明な彼女が自閉症の学説を紹介し、自閉症について述べるくだりは興味深い。彼らは他人が自分とちがう経験をしていることを想像力で推し量ることができない。自分を社会的存在としてとらえられない。そのために人をいらいらさせ、物を壊し、人のことを考えない。しかし悪意がなく、すれておらず、器量よしでおもしろい。彼らには昔から熱心なフアンが少なくない、等々。自閉症は魅力的なテーマだ、というムーアは、自閉症への理解を静かに魅力的に伝えられる人だ。久々にほっと安らげる自閉症の本に出会ったと感じた。彼女なら、この2人の兄弟達とも違う多様な自閉症スペクトラムの人達をどうとらえ、その社会的スキルの獲得についてどう紹介してくれるのだろう。いつかまた自閉症について彼女が書いてくれることを期待したい。・・この本は京都市立図書館にもあります。・・(谷内)