『ぼくらの中の発達障害』青木省三著 2012年 ちくまプリマー新書
『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』本田秀夫著
2013年 ソフトバンク新書
この二つの新書は、先般開催された「高機能自閉症セミナー」の販売コーナーで「スタッフのお奨め」とされていた本である。すぐ売り切れたのだが、京都市図書館にもありすぐに借りることができた。いずれも本人や家族、支援者への直接的で具体的なメッセージがあり、「お奨め」の意味がよくわかった。
青木氏は64歳の思春期青年期の精神療法を専門とする川崎医大の教授。巻末にはいろいろな本の紹介があり、これまでの議論を広くまとめておられることがよくわかる。「発達障害は異なる文化をもつ異質性があるのは確かだが連続性もあり敬意をもって理解したい」という基本的な姿勢から「コミュンケーションが障害されていることから、より本質的なコミュニケーションを生む可能性がある」「人の気持ちをより深く理解し共感できる」とし「環境的心理的負荷が加わると(発達障害の特徴が)際立ちやすい。二次障害も同様で、負荷がなくなると急速に消退する傾向がある」とし、発達障害の特徴は強まったり弱まったりかなり変化することを注視している。誰ものうちにも薄められた発達障害があり、誰もがグレーゾーンを生きている、というのが青木氏の主張である。
本田氏は50代の精神科医師。横浜市総合リハビリテーションセンターで20年間臨床と研究をし、2011年から山梨県立こころの発達総合支援センター所長。
20年間、幼児期から成人期までを一貫して観察してきた経験から、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強い」ことを特徴とする自閉症スペクトラムは人口の10%にのぼるとしている。本田氏自身もASだと言い、臨床では境界線はないという。この特徴はたとえ認知機能が発達しても消失しない。自閉症スペクトラム(AS)は、自閉症の特徴がより強い「狭義のASD群」とうつや不安障害の強い「併存群」の二つの群から成る「自閉症スペクトラム障害」と、それ以外の「非障害自閉症スペクトラム」に分けられるとしている。ストレスに晒されやすい自閉症スペクトラムの人が障害をもつかもたないかは、得意分野を生かすことや、相談相手を見つけておくことなど社会的なスキルによるとし、早期発見のポイント、療育や支援の方法など具体的な提案が興味深かった。ただ、行政の相談機関だからだろうか、不登校への否定的な記述が気になった。田中康雄氏のように、時には自主的に休む提案のほうが受入れやすいように思う。