『里山資本主義』(2013年角川書店発行)と「コトノネ」(はたらくよろこびデザイン室発行)のご紹介
『里山資本主義』(角川書店 2013年)は発行から数年たっても、まだ本屋さんに平積みされている、話題の本である。「里山資本主義」とは、「生きるのに必要なのは、お金ではなく水と食料と燃料だ」という考えにたち、お金に依存しないシステムの再構築を呼びかける。里山には買ってこなくても身近に「水と食料と燃料」があり、それらの資源を活用して生きる例を紹介している。たとえば広島県庄原市では、高齢者が畑を作っているが食べきれずに野菜を捨てていた。しかし、それに目を付けた福祉施設の職員が一案を出し、捨てられるばかりだった野菜を買い取りに出かけていくことにした。もちろん、買い取りに行くのは障害施設の利用者のお仕事。この野菜が今では施設の食材の半分近くになる。買い取りに支払われるのは地域通貨。施設の開設するカフェレストランでは、この地域通貨でランチを食べることができるしパンを買うこともできる。また間伐材を利用してガスを作り、燃料にしている。さらに近くの保育園では高齢者も遊び相手になり若い人達が働きやすい地域つくりを目指している。
障害者の仕事つくりを斬新な視点で取り上げている雑誌『コトノネ』の9号(はたらくよろこびデザイン室 2014年2月発行)にも、ちょうど庄原市のこの取り組みが紹介されていた。題して「里山の障害者」の特集。みれば庄原市だけでなく、今や全国各地でそんな取り組みがはじまっているようで、嬉しくなる。何より、みんなが自然の恵みの中で安心して暮らしていける。お互い様の循環の中で、高齢者も障害者も小さな子ども達も若いお母さんも、助け合いながら生きて行けるなんて、私たちが一番目指したい社会ではないだろうか。
里山でのこういった循環作りには及ばないかもしれないけれど、自然の中でのお仕事は子ども達の将来の一つの理想像じゃないかと思う。お金ではかれないもの、効率や技術より自然とともに生き、自然の恵みのなかで暮らせたら、誰もが幸せになれるような気がする。福祉施設での作業に限界を感じたお父さんが立ち上げた農園もそんな動きと同じかもしれない。2014年12月9日放映されたNHKのハートネットテレビで取り上げられた四国松山の「メイド・イン・青空」の自然農法の農園。ここも、これからの仕事つくりの可能性を示していると思う。
最近読んだ、石川憲彦氏の『みまもることば』(ジャパンマシニスト社 2013年)にもこんな言葉があった。「経済成長期のような子育てや教育は意味がない。もっと、したたかに、ふてぶてしく居直らないと。・・でもこのピンチはチャンス。人と人の関係をつくりなおす、支え合うネットワークを作り直す絶好のチャンス。ほんとうの希望は、欲ボケした今の時代からの再生に向かうところから始まると思う。」
そう、今までのような高学歴で高額の収入を目指す時代ではないとすれば、福祉の世界に新しいビジネスモデルが生まれる時代がきた、といえるのかもしれない。
(「コトノネ」は二冊ずつとっていますので、お声かけ下さればお分けします)
(報告:谷内)