この夏、NHKで放映された「君が僕の息子について教えてくれたこと」は反響が大きく、すでに二回も再放送がありました。まだみておられない方はタンタン事務局にお問い合わせ下さい。タンタンメンバーの一人がバッチリ録画しています、とのことです。この番組で紹介された東田直樹さんは自閉症の青年です。東田さんの『僕が飛びはねる理由』を読んで自閉症の息子のことをやっと理解することができた、と感じたアイルランドの作家が英語に訳し、世界中でベストセラーになったのです。私も彼の書いた本の存在については知っていましたが、実際に手にとって読んだことはありませんでした。このたびすっかり彼の虜になったタンタンのメンバーから『自閉症の僕が飛びはねる理由』『自閉症の僕が残してきた言葉たち』『飛びはねる思考』の三冊をお借りできたので、一気に読ませてもらいました。
読んでいて一番胸につまったのは『自閉症の僕が残してきた言葉たち』です。ここには彼が4歳から小学生の時に書いたというフアンタジーや詩の数々が収められています。冷たい視線、嫌われている自分、消えない涙、消えてしまいたい自分、しかし、僕もみんなと一緒にいたい、誘ってくれたら出て行きたい、作品を通して小学生の彼からこんな風に打ち明けられて、本当に胸に迫ります。4歳でしっかり難しいお話をつくる才能のあった彼だから、小学生の辛い気持ちをしっかり伝えてくれています。
そしてQ&A式で書かれた『自閉症の僕が飛びはねる理由』で一番印象的だったのは自閉症の人の楽しみはなんですか?という質問に対して「自然と遊ぶこと」と答えていることです。以前読んだ『自閉症ボーイズ ジョージ&サム』という本にも「彼らと共に自然の中で過ごす時間は実に気持ちがいい」という表現があったことを思い出しました。タンタンのキャンプでも、野外活動でも、風の中で、山の中で、湖の岸辺で、彼らと共に自然と遊ぶことの清々しさを実感するのですが、やはり、彼ら自身が自然に優しく包まれたと感じ、一番穏やかで楽しめる時間だと感じているのだと思います。自然の中での活動、やっぱり、大事にしていきたいですね。
『飛びはねる思考』は、清冽、清廉な印象を残す文章です。「小さい頃、自閉症は悪い人間だと考えていました」という彼が「成長するにつれてそれは間違いだと気づいたのです」として「持って生まれたものが何であれ、僕はこの命に感謝しています」と言い、「行動に悪意がないのは、自分が一番よくわかっています。僕は僕自身のために生きることを決心しました」と書くところには本当に感動を覚えます。そして、この彼を支えている家族の愛。お母さんが、泣く彼を抱きしめて、思う存分、泣かせてくれたこと。「抱っこ法」もそれなりの意味があったんですね〜彼は感謝して言います。「母の腕の中で、泣きたいだけ泣くことができたのは。本当に幸せでした」と。「僕の望みは、気持ちを代弁してくれる言葉かけと、人としての触れ合いだったと思います。どんな自分も受けとめてもらえる体験ができたからこそ、僕は壊れずに生きてこられたのでしょう。」という告白は、貴重だと思います。いつも心においておきたい言葉です。そして、彼のまっすぐな気持ちに、こちらも清められた気がした本でした。
東田さん、私たちに、たくさんの大事なことを教えてくれて、本当にありがとう!
(谷内)