『発達障害は治りますか?』神田橋條治ほか著 2010年花風社刊
ニキ・リンコさんの『自閉っ子、こういう風にできてます』などで一世を風靡した花風社さん。実はかなり長い間「ニキ・リンコは存在しない」と主張し続ける自閉症の人に営業妨害等の被害を受けていたらしい。精神的に疲弊し、もうこれでこの分野から手をひこうと思っていた矢先に出会ったのが神田橋條治先生の「発達障害は発達します」という言葉。そしてできたのがこの本、カリスマ精神科医といわれる神田橋條治氏と、作業療法士の岩永竜一郎氏、元気になった当事者の藤家寛子氏、臨床心理士の愛甲修子氏、花風社の浅見淳子氏の5人の対談の記録である。
神田橋医師によれば、発達障害は脳のシナプスに発育のおくれがある状態ではあるけれども、一般の人とは連続性があり、千人千通りの症状がある。それぞれの脳神経の機能レベルにあわせて診断や対応が整理されるべきだという。そして東洋医学を勉強し身体状況に働きかけて脳にかかっているプレッシャーを減らし、脳の自然治癒力を働きやすくする、という治療を試みている。治しやすいところから試してみて、気持ちよくなったら、改善されていく、という。完全に治るのではないけれども、確かに「発達する」のだという。まだ全てのメカニズムが解明されたわけではないけれども、脳が楽になった人は多い。一部の漢方の療法については他の医師も注目しているので、おいおい、そのメカニズムは解明されていくだろうと思う。
花風社では、この脳と身体のメカニズムに注目して、『活かそう!発達障害脳』(長沼睦雄医師)『伸ばそう!コミュニケーション力』(森嶋勉著)『自閉っ子の心身をラクにしよう!』(栗本啓司著)『芋づる式に治そう!』(栗本啓司著)『治っていますか?発達障害』(南雲明彦著)と立て続けに出版。それぞれ、花風社の浅見社長との対談であり読みやすい。特に自閉症の多くの身体機能の特徴、それを楽にするための体操などが載っている。リラックスの方法のいくつかは音楽療法でも取り入れられているし、機能訓練には昔からの遊びも有効だという。他にも、これをしたら楽になるかな、といくつもの具体的なヒントが見つかる。すぐにもできる実例集だ。最近あまり本を買わなかったのだが、今回は全部アマゾンで買ってしまった。
今、パニックに処方されるお薬の量の見直しが言われているらしい。神田橋医師の処方の評価もまもなく出るのではないかと期待している。
(谷内)