第3章 水資源・水利用・水逼迫とは何か

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この章では地球の水資源と水利用について紹介し、いま世界で何が問題になっているのかまとめます。水は私たちにとって身近なものです。身近であるがゆえに、よく考えないととても混乱します。本稿では、「人間社会の資源としての水」に絞って話を進めます。

3.1 水資源と水利用の基本

水循環と水資源

 地球の陸上には年間約110,000 m3/yearの降水量があります。降水量の多くは土壌に一度浸み込みます。このうち、約70,000km3/yearは土壌から蒸発したり、植物が根から吸い上げて蒸散したりして水蒸気となって大気に戻ります。蒸散量と蒸散量を合わせて蒸発散量と言います。

 降水量から蒸発散量を引いた残りの約40,000km3/yearが地表や地下水を移動して川に流れ込み、海に到達します。降水量から蒸発量を引いた量を流出量と言います。人間が利用できるのは淡水の液体の水だけなので、人間の水資源は流出量と一致し、年間約40,000km3/yearあるといえます。

水利用

 国連食糧農業機関(FAO)の水資源データベースAQUASTATによると、世界の年間の取水量は約4000km3/yearです。取水量は農業用水、工業用水、都市用水に大別され、それぞれ7割、2割、1割を占めます。農業用水はほとんどが灌漑に使われます。つまり、田畑に撒いて作物の水不足を防ぐために使われます。工業用水は製造用水と冷却用水に分かれます。製造用水は製品の材料や洗浄に使われます。冷却用水は汽力発電でタービンを回した時の水蒸気を液体に戻すときに使われます。日本では汽力発電所はほとんどが沿岸にあり、冷却用水には海水が使われますが、世界には内陸の汽力発電所も多く、河川水が冷却用水として利用されています。これらの内訳は半々と推定されています。生活用水は家庭用水と都市活動用水に分かれます。前者は料理や洗濯などに使われ、後者はオフィスや公園などで使われます。

3.2 水逼迫の基本

 年間の水利用量は年間の水資源量の約1/10しかないのですから、水不足など起こりそうもないと思えます。ところが、世界では深刻な水不足の問題を抱えている地域がたくさんあります。ここで考えなければならないのは水利用と水資源の空間的・時間的分布です。

 世界には多くの気候があります。熱帯雨林では年間を通じて流出量が多く、砂漠・ステップでは逆に少ないです。このため、水資源量である流出量も、熱帯雨林では大きく、砂漠・ステップでは小さくなります。地理的に言うと、赤道直下の南アメリカのアマゾン川流域、アフリカのコンゴ川流域、東南アジアのインドネシアを代表とする島々では流出量が極めて大きく、アフリカのサハラ砂漠、アラビア半島のアラビア砂漠、中国北西部のタクラマカン砂漠、同北部のゴビ砂漠、オーストラリア砂漠などで極めて小さくなります。

 また、世界のほとんどの地域に明瞭な季節があります。私たちにも馴染みの深い、東南アジアには明瞭な雨期と乾季があります。タイ(バンコク)の年間降水量は約1200mm/yearですが、その8割は5月から9月までの雨期に降ります。残りの約7か月の乾期はあまり雨が降りません。河川流量は雨期の終わりの9月から10月の2か月間に集中し、年によっては大規模な洪水をもたらします。また、ヨーロッパや北米などでは、冬に降水量が多くなります。このため、河川流量が最大になるのは融雪期の春になることが多いです。

 農業用水にも強い季節変動があります。取水量の7割を占めるのが農業用水で、主に灌漑に使われることは既に述べました。日本のコメは田植えから4~5か月程度で収穫されます。このうち、特に水量が必要な期間は田植えの前の代かきの前後(関東では4月ころ)、水不足を特に避けなければならないのは穂が出る前後です(関東では7月ころ)。同様に、世界各地の灌漑農業には明らかに必要な水量が集中する期間があります。広い地域に対し、短い期間に大量の水需要が集中すると水不足は起きやすくなります。

 このように考えると水不足は3種類あることが分かります。第一は砂漠などのように年間を通じて水資源がないという水不足、第二はアジアのように雨期と乾期が明瞭で、乾期に水資源がないという水不足、第三は農業用水のように、需要集中による水不足です。特に2番目と3番目は、雨が少ないために灌漑がより多く必要になるという形で連動する性質があります。

3.3 水資源と水利用の基本用語

蒸発と蒸散

流出と流量

取水量と消費量

3.4 世界の水問題

表流水の過剰取水と下流の水不足

地下水の過剰取水と地下水位の低下

ダム建設と河川生態系・土砂輸送

水質の問題