Shiklomanovの工業用水・家庭用水の推計方法
- Shiklomanov (1999, 2000)、Shiklomanov and Rodda (2003)には、世界の26地域について、農業用水・工業用水・家庭用水の取水量・消費量が、1900, 1940, 1950, 1960, 1970, 1980, 1990, 1995, 2000, 2010, 2025年の11時点について示されている。
- この手法がShiklomanov and Rodda (2003)の3章3節(pp37-44)にまとめられているので、簡潔にまとめた。
- ここにもある。
- 個人的な印象だが、Shiklomanovの文章は難解で、長く、表現があいまいなことがある。以下のまとめでは複数の文章をまとめて意訳せざるを得なかったところがある。気になる場合は、原書をご覧いただきたい。
方法
- 約160カ国について国別に水利用を評価(assess)した。( 注:論文や統計データを集めたということらしい。)
- 得られた値を地域別に一般化(generalize)した。( 注:モデルを作ったということか。ただし文中ではモデルという言葉は一切使われていない。)
- ただし、この推計は国別のデータの入手可能性(availability)に依存する。いくつかの国については、国際機関や個人の著作によって、信頼性の高いデータが出版されている。例えばアメリカ、旧ソ連、ヨーロッパ、カナダ、中国、インド、パキスタン、メキシコ、キューバ、ブラジル、アルゼンチン、エジプト、ケニア、南アフリカ、日本、トルコ、オーストラリアなどである。
- しかし、これらのデータをまとめる際、著作ごとに引用する値が異なることが大きな問題となった。
- そこで、新しい手法(Specially developed methods)を使って推計した。これは社会経済発展レベル、人口、地形学・気候学的特徴を要因(factor)とするものである。国別のデータがない場合は、社会経済レベル、人口、地形学・気候学的特徴の近い地域のものを利用した。( 注:可能な限り文献値を利用し、ない場合は、社会経済レベル、人口、地形学・気候学的特徴の関数で補完したということか。)
家庭用水
- 人口に一人当たり取水量を掛けて求めた。
- 人口は統計年鑑の値を使った。
- 一人当たり取水量と消費量は国別のデータや国際機関の値を使った。
農業用水
- 取水量と消費量は国別の統計や似た国の値を使った。
- 将来推計は1965-95の人口(UN)、灌漑面積(FAO)、GNPを使って行った。
- 将来の灌漑面積は人口やGDPの関数を使って推計した。
- このとき、先進国か途上国か、土地資源があるかないか、農業生産の全産業生産に占める割合が大きいか、などで推定結果が変わるようになっている( このように読める。)
工業用水
- 工業生産性から推定する。
- 手に入る場合は工業用水取水量を利用する。
実際にどのようなデータが使われているか?
- 1900年から1980年のトレンドはShiklomanov and Markova (1987)というロシア語の文献の値を引用している。ただし、この期間中に他の文献値が得られる場合はクロスチェックしている(アメリカではSolley et al. 1998, 1993、カナダではTate, 1986, 1990、ヨーロッパでは5つの文献が挙げられている。)
- 1980年以降については、各種の文献を利用している。ヨーロッパではFalkenmark (1977) WRI(1990), Seckler (1998), Rijsberman (2000)など。アジアではUN (1992); Central Water Comission (1994); Margat, (1994)など。
Shiklomanov and Markova (1987)とは何か?
- Shiklomanov and Rodda (2003)のpp131に具体的な記述がある。
- アジアの場合、アジア大陸と7つの地域について、1900年から1980年代までの、取水量と消費量の"figure"がある。( 7地域はおそらく26地域分類と同じ。)
- これらの推定値は多くの国のデータに基づいている。( アジアについて孫引きされている文献は重複もあるが、20を超える。)
参考文献
- Shiklomanov, I. A., and Markova, O. L.: Specifc water availability and river runoff transfers in the world, Hydrometeoizdat, Leningrad, 1987 (in Russian).
- World water resources and their use, a joint SHI/UNESCO product:http://webworld.unesco.org/water/ihp/db/shiklomanov/, 1999.
- Shiklomanov, I. A. 2000. Appraisal and assessment of world water resources, Water Int., 25, 11-32
- Shiklomanov, I. A., and Rodda, J. C.: World Water Resources at the Beginning of the Twenty First Century, Cambridge University Press, 2003.