第9章 水リスクツール


このページの完成度(2021/9/30

☆だいたい完成した段階
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全体を下書きした段階
重要な部分だけ下書きした段階
★ページを作った段階


9.0 概要

  • H08水リスクツールはWRI Aqueductを参考にして作った水リスク指標のビュワーです。

  • Google Mapの上にGrADSで描写した図を透過表示しています。

9.1 何が示されるのか

データ

第7章で紹介した全球水資源モデルH08を、第8章で紹介したISIMIPプロジェクトフェーズ3のプロトコル(共通計算手順)に従ってシミュレーションし、得られた結果を第4章で紹介した指標に変換したものです。ここで、シミュレーション結果は年々変動(暑い年・寒い年、雨の多い年・少ない年)があり、そのまま示すと地域間の比較が難しいため、結果には全て21年移動平均をかけました。つまり、2020年として表示されるのは2010-2030年の21年の平均値となります。

世界資源研究所のアキダクトとの関係

コントローラやデザインは世界資源研究所のアキダクトに似たものになっています。これは自前のアイディアがなくて真似したのではなく、デファクトスタンダードとなったアキダクトとの比較を容易にするための措置です。

 指標も計算方法や閾値をアキダクトに合わせました。こちらも、比較を容易にするためです。H08独自の指標として、水の持続可能性指標も表示できるようにしています。

マップ

指標を閾値に合わせて色付けしたものです。一つのモザイクが0.5度の格子を表します。

時系列

アキダクトにはない機能として、時系列の表示があります。選択されている変数・地点の時系列データが右上のグラフに表示できます。最大4つの変数を同時表示することができ、変数間の関係を知ることができます。

9.2 どのようにして動くのか

原理

コントローラに入力されたユーザのリクエストに応じて、該当するデータをサーバ内で探し、主に気象学で使われるGrADSというソフトウェアを利用してタイル画像※に変換し、それをGoogle Mapに重ね合わせて表示を行っています。

※他の要素と区別するため、黄色~茶色で示される水リスク指標の格子の画像を「タイル画像」と呼ぶことにします。

地図

地図はGoogle Mapを利用しています。Google Mapは地名の表記や国境線などについて様々な課題があることは承知していますが、タイル画像を地図に重ねるという機能が容易に実現できるかという観点から採用しています。投影法はメルカトル図法です。

タイル画像

H08の計算結果は全て緯度方向に0.5度、経度方向に0.5度の広がりを持つ格子データとして出力されます。地球の表面は、経度方向に360度、緯度方向に180度あるため、720 x 360 = 259,200個の格子に分割されています。指標への変換も格子データのまま行われます。この格子データをGrADSで読み、各指標の値の閾値を与えて、メルカトル図法でタイル画像(jpeg)に変換しています。

重ね合わせ

GrADSで描写したタイル画像はただのjpeg形式のファイルなので地理情報を持っていません。そこで、タイル画像の四隅の緯度経度をGoogle Mapに「教える」ことで、地図とタイル画像を重ね合わせています。ここで、タイル画像の四隅の緯度経度が厳密に指定できないこと、GRaDSとGoogleMapで投影結果が厳密に一致しないことから、タイル画像の格子が地図上の緯度経度にぴったり合っていません。例えば明石市に東経135度の経線があることはよく知られていますが、明石市付近を拡大すると、タイル画像の格子の端(東経135度の経線)は西の加古川市あたりにあります。

 また、マップを大きく拡大するとタイル画像がぼやけるのはjpegの性質によります。この問題を回避すべく、コントローラの「オプション」にはjpegの解像度を上げる機能がありますが、描画までにかなり時間がかかってしまう難点があります。こうした問題は、Leafletという別のデータ表示技術を使うことで回避できる可能性があり、移行の検討をしている状況です。

コラム 緯度経度0.5度の意味するところ

H08の空間的な最小単位は0.5度(赤道付近で55km)の格子です。これまで、降水量、流出量、流量、取水量と呼んできたものは全て0.5度の格子の平均値です。これはかなり大きな範囲であることには十分注意してください。都心を中心とする格子があった場合、だいたい国道16号線(都心から30-40km離れた環状道路で横浜市、町田市、相模原市、川越市、さいたま市、柏市、木更津市などを通る)の内側が一つの格子に入ります。川の流量についても、こうした格子単位の流出量が全部一本の河道に集中することを想定しています。