第27回間合い研究会のご案内
日本認知科学会の研究分科会「間合い−時空間インタラクション」(間合い研)は,実生活のあちらこちらで遭遇・体感する「間合い」という,曖昧模糊とした現象を対象に,身体知・コミュニケーション・アフォーダンス・共創システムなど(これらに限られるわけではありません)のさまざまな学問分野の考え方を持ちより,アプローチすることを目指して発足した分科会です.
第27回研究会では,「展示における間合い」というテーマを設け,井上明彦氏(美術家/京都市立芸大名誉教授)に招待講演をお願いしました.
(企画者:元木 環(公立はこだて未来大学))
[テーマ趣旨]
さまざまな空間において「ものを並べてみせる/みる」という実践は,実践者が認知している間合いの表れでもあり,体験する人に向けて新たな間合いを作り出す行為ともいえます.また,そうした展示によって新たな間合いを作り出す行為や,作られた間合いに触れることにより,物事への既存概念や眼差しを問い直すきっかけとして働くこともしばしばあります.
広い意味での「展示」をめぐって,それぞれの事例における「展示における間合い」が言語化され議論を深められる試みとなることを期待します.このテーマに関する発表を募集します.
あわせて,このテーマに関わらない一般発表も募集いたします.
・日程:2026年7月18日(土)13:00-17:30
・場所:東京工科大学 蒲田キャンパス 12号館 5階 M512
https://www.teu.ac.jp/campus/access/006648.html
※本研究会のオンライン配信やアーカイブ公開はいたしません
・参加費用:無料
テーマ:「展示における間合い」および一般
招待講演(実習):
井上明彦氏(美術家/京都市立芸術大学名誉教授)「Out of Control」
「展示」というと、通常は展示物の「コントロール」と考えられるが、本講演は「Out of control 」というテーマによるワークショップ形式で行われる。前半は、展示における間合いを考えるきっかけとして、井上氏の美術家としてのこれまでの活動をもとに、ミュージアム・エフェクトの視点を交え、フランス語で展示を意味する「exposition」に含まれる意味のひとつ「遺棄」から、メタ展示論的な話題が提供される。後半は、京都市立芸術大学造形計画研究室教員として、学内外でさまざまな造形実験やワークショップを行ってきた井上氏による実習を体験する。
※実習には次のものをご持参ください。
1)各自好きな画材(色鉛筆、マーカー、クレパス、筆など自由)
2)片手で気軽に持てる何らかの物体(果実、石、木片、時計、瓶など自由)を一つ以上
3)各自、動きやすく汚れてもいい服装
※画材の種類は自由ですが、どうしても見当たらない場合に備え、ある程度会場に用意する予定です。
井上明彦氏のホームページ:https://akihiko-inoue.com/
造形計画研究室ページ(アーカイブ):https://akihiko-inoue.com/lab/lab_about.html
[現在のプログラム]
13:00–13:05 開会挨拶・事務連絡(今宿未悠)
13:05–13:15 趣旨説明(元木環)
テーマ発表
13:15–14:00 発表1
子ザル「パンチ」をめぐるSNS上のフレーム変容 ― 市川市動植物園の事例 ―
榎本美香(東京工科大学 メディア学部)
本研究では、SNS上の投稿を「展示」の一形態と捉える。市川市動植物園の子ザル「パンチ」をめぐるSNS上の投稿を対象に、人々の出来事を見るフレームが変容していく過程を分析する。パンチはSNS上に「健気な子ザル」というフレームでデビューする。ところが、その後すぐに拡散した「引きずられ動画」は、「虐待」「かわいそう」という解釈を生み、動物園への批判へとつながる。呼応して動物園が公開した一連の声明は、「群れ社会における規範の学習」「人工哺育から群れ入れまでの成長」「主体的な自立」といった新たなフレームを提示し、SNS上の解釈や感情を段階的に変化させた。本研究は、SNSにおけるフレームが一般の投稿者によって形成・増幅されるだけでなく、公式発信との相互作用を通じて継続的に交渉・更新されていくことを明らかにするものである。
14:10–14:55 発表2
空気は鑑賞の対象たりうるか ― 現代アート「空気採集」による見えないものを不可視のまま作品化する実践考察
夏川真里奈(LIRIC Link/株式会社MIMIGURI)、西村歩(株式会社MIMIGURI)
「空気採集」では展示の参加者が「心が揺らいだ瞬間の空気」を小瓶に採集し、ラベルに採集日と概要を記した。並べられた31個の空気は鑑賞対象となり、不可視の現前を通して、主体と外界、空気と感情、鑑賞者同士の間に固有の間合いを生み出した。見えないものを見えないまま扱う本実践の意義を考察する。
15:05–15:50 発表3
親密さと暴力をめぐって(仮)
今宿未悠(筑波大学)
親密さと暴力は、たがいに浸透する概念である。発表者は、芸術実践において、広義の皮膚感覚(熱や圧迫、振動、よろめき等)に働きかけるメディアを用い、自他の境界を揺さぶる装置や状況を構築する。そして、そこに自身や他者を巻き込む実践を通して、
親密な二者関係、あるいは公共空間における、新たな共在のあり方を提示している。このとき、実践は親密にも暴力にも見える。2つの概念がいかに、人においてあらわれるかを検討する。
16:00–17:00 招待講演(実習)
井上明彦氏(美術家/京都市立芸術大学名誉教授)
17:00–17:20 質疑応答・総合討議
17:30 閉会