第18回研究会

第18回研究会では,「しゃべりの間合い」というテーマを設け,岡本雅史氏(立命館大学)と片岡邦好氏(愛知大学)に招待講演をお願いしました.


  • テーマ趣旨

 「しゃべり」は人々の日常的な営みである。そこにも間合いは満ちあふれている。会話時に話し手が交替する際、相手の発話に合いの手をはさむ際、沈黙をやぶる際など、さまざまな機会に参与者間での間合いの駆け引きがある。漫才や落語などの「しゃべり」を技能として観せる芸能では、演者と観客の間の間合いも重要である。魅力的な政治演説や研究発表は、内容のみならず聴衆との絶妙な間合いが重要な要素となっている。ヒップホップのMCや、ライブのコールアンドレスポンスなども聴衆との間合いを顕在化するある種の「しゃべり」である。さらに、実況中継やYouTubeなど、眼前に聴衆がいない状況でも、目に見えぬ聴衆との間合いをうまく作ることでコンテンツのおもしろさは決まるのではないだろうか。
 本企画では、日常のさまざまな場面での「しゃべり」を対象として、そこに見られるさまざまな間合いについて議論したい。

(企画者:伝康晴(千葉大学))

  • 日程

2021年3月7日(日)13:00-17:50

  • 場所

オンライン開催(Zoomを使用)

  • 参加費用

無料

  • テーマ

「しゃべりの間合い」および一般

  • 招待講演

    • 岡本雅史氏(立命館大学)

  • 片岡邦好氏(愛知大学)

  • プログラム

13:00-13:05 開会挨拶・事務連絡・テーマ趣旨説明

伝康晴(千葉大学)

13:05-14:30 テーマセッション「しゃべりの間合い」(1)

13:05-13:45

「会話の「間」の多様なる意味と役割 -映画「セトウツミ」を題材として-」(発表原稿PDF)

熊谷啓孝(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)

本研究では、日常会話で我々が暗黙的に理解している「間」の意味が何によって規定されているかを模索する。手法として、高校生の日常を描いた映画「セトウツミ」を題材に、作中で登場した「間」を観察し、その意味や、会話における役割をもとに36の小分類と5つの中分類を作成した。この分類を元に「間」の意味が非言語行為としての身体動作や前後の文脈によって規定されることを論じる。

13:50-14:30

「「ガヤ」とは何か —バラエティ番組の二人称的解釈に基づきwho/what/how条件を探る—」(発表原稿PDF)

浮田翠(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)

本研究は、ガヤの事例分析によりガヤの条件を探究し、「ガヤとは何か」に迫るものである。会話の参与者や視聴者は、ある発言がガヤか否かが身体でわかるのに、ガヤの定義や条件を述べることは難しく、ガヤは暗黙知の最たるものだと捉えた。本研究では、ガヤの事例収集した後、who/what/howの観点で精査し、条件の仮説を見出した。ガヤの認識には状況依存的な要因があり、ガヤの必要十分条件を定めることは困難だという考えに至ったが、ガヤの必要条件や、ガヤにならない充分条件を見つけ、ガヤとは何かということに迫ることができた。

14:45-15:45 招待講演1

「漫才のテンポからみる対話の間合い―インタラクションリズムの重層性の解明に向けて―」(発表資料PDF)

岡本雅史氏(立命館大学)

キャッチボールが無意識にボールを投げるテンポを協調させて一つの滑らかなリズムを相互構築する志向性があるように、対話もまた参与者間のリズム生成に対する無意識な志向性があると考えられる。本講演では、こうした協調的リズムへの志向性を日常会話より明確に示す漫才対話に着目し、リモート漫才と対面漫才の比較から、演者がどのようなストラテジーを用いてテンポの良い対話リズムを創出・維持しているのかを考察することで、非言語情報も含めたインタラクションリズムが重層的なリズム構造を有する可能性を示す。

16:00-17:00 招待講演2

「政治演説における「間」を考える――オバマ/トランプ演説における自己抑制をもとに――」(発表資料PDF)

片岡邦好氏(愛知大学)

本発表では、政治演説における演者と聴衆との相互行為の中で、演説中の「間」がどのように生起し、利用されているかを考察する。その実例として、第44代および第45代アメリカ大統領であったバラク・オバマおよびドナルド・トランプ両氏による支援者集会での演説に焦点を当て、従来プロンプターを用いて「脚本で演じた」オバマ氏と、しばしば「即興で演じた」トランプ氏の演説が、どのような「間」取りの差を生むのかを、マルチモーダル分析により考察する。

17:10-17:50 テーマセッション「しゃべりの間合い」(2)

17:10-17:50

「国会指名における間と間合い」(発表原稿PDF)

宿利由希子(東北大学)

本研究は,歴代衆議院予算委員会委員長4名(鹿野氏,中井氏,河村氏,棚橋氏)の「指名発話の長さ」「指名発話中の間」「前後の発話〜指名発話の時間的隔たり」の関係を調べた.その結果,鹿野氏,中井氏,棚橋氏の指名発話中の間と長さの間に正の相関が認められた.また棚橋氏のみ,これらと前後の発話〜指名発話の時間的隔たりとの間に正の相関が認められた.この結果は,棚橋氏の指名発話の間が長い時、棚橋氏が指名するのも答弁者が答弁するのも遅いということを意味する.