第21回研究会
第21回研究会では,「大人と子どもの間合い」というテーマを設け,小島康生氏(中京大学)と大塚裕子氏(子中保育園)に招待講演をお願いしました.
テーマ趣旨
子どもの育ち・養育に関する研究は近年、親あるいは保育者と子どもが面と向かって直接的に接触する場面だけでなく、互いが離れてそれぞれの活動を行なうこと、大人と子どもの関係性の中で子どもを観察することなど、育ちにおける大人と子どもの「間合い」の側面にも着目しています。家庭でも保育施設でも、子どもの過ごす環境にはほぼ必ず大人がいる一方で、日常の中ではそれぞれが異なる活動に取り組んでいることも多いと考えられます。本企画では、養育における子どもと大人の間合い、近づくこと、離れることに焦点を当てたアプローチを通して、大人と子どもが取り得る異なる距離の中で、そこで得られる異なることについて考えてみたいと思います。
(企画者:西尾千尋(中京大学))
日程
2022年8月30日(火)13:00-18:00
場所
オンライン開催(Zoomを使用)
参加費用
無料
テーマ
「大人と子どもの間合い」および一般
招待講演
小島康生氏(中京大学)「子どもの事故やケガ,迷子の発生を軸にした親の環境操作と許容的態度」
大塚裕子氏(子中保育園)「保育の間合いを可視化する―ダウン症児と保育者との関わりを中心に―」
プログラム
13:00-13:10 開会挨拶・事務連絡
13:10-13:50 一般セッション
13:10-13:50
「心理療法における間合いの活用」(発表原稿PDF)
三島瑞穂(宇部フロンティア大学)
本研究では心理療法において生成、変化する間合いを紹介する。心理療法において、クライエントは他者との関わりや自己との対峙など様々な関係性を表出することが多い。心理療法の内容によっては、それらが描画や箱庭のオブジェクトを媒体に可視化することもある。そういった顕在化はセラピストの働きかけやクライエント自身の気づきを促し、治療的契機にもなり得る。本発表ではクライエントが認知する関係性の心理的距離や濃度を間合いと呼び、特にゲシュタルト療法によって変容した事例を紹介する。
14:00-18:00 テーマセッション
14:00-14:40
「遊びの即興的創発過程における子どもと保育者の「間合い」に関する一考察」(発表原稿PDF)
保坂和貴(秋田大学)
子どものごっこ遊びはあらかじめ決められた台本がないにもかかわらず、参加者同士がストーリーを即興的に生み出し、共有化し、展開していくと言われている(Sawyer,1997)。本発表では、そのようなごっこ遊びの過程において、保育者による言葉がけ以外にも、保育者の見守ることや距離をおくこと、眼差すことなど諸々の身体的なかかわり方(子どもたちと保育者の間合いの取り方)が、子どものひらめきや思いがけない展開を生み出す資源になっていることを検討する。
14:50-15:50 招待講演(1)
「子どもの事故やケガ,迷子の発生を軸にした親の環境操作と許容的態度」
小島康生氏(中京大学)
「間合い」という言葉には「程よい時期」,「ころあい」といった意味が含まれる。私の現在の関心テーマは,子どもと親の間で起こる身体的隔たり(離れる―近づく)の反復,及びその経験が子どもの自立にもたらす影響についてだが,本発表では,二つの事象(自宅での事故やケガ,屋外での迷子)に着目して集めたデータを紹介しつつ,子どもの自立や自信を支える親のさりげない環境操作や,適切かつころあいよく子どもの自由を許容する親の態度についてお話しする。
16:00-17:00 招待講演(2)
「保育の間合いを可視化する―ダウン症児と保育者との関わりを中心に―」
大塚裕子氏(子中保育園)
保育園で”間合い”を可視化する目的は、スキルの高い保育者と子どもとの関わりを外在化し、共有することにより、保育者全体の技術力を高めることである。本発表では、当園で実践している記録とふりかえりの活動について、全体のしくみと、個々の活動の目的および内容を紹介する。記録された内容を分析し、スキルの高い保育者が保育の中で“間合い”をどのように意識し、実践しているか示すことにより、保育実践における保育技術の熟達化について考察する。
17:10-18:00 総合討論
司会:西尾千尋(中京大学)