第12回研究会

第12回研究会では,ゲスト企画者として児玉謙太郎氏(神奈川大学),清水大地氏(東京大学)にテーマセッションの企画をお願いしました.「Beyond Synchrony To Maai」というテーマで,岡崎俊太郎氏(早稲田大学),藤原健氏(大阪経済大学)の2名に招待講演をしていただきました.


  • テーマ趣旨

近年、Interpersonal Coordination/Joint Actionに関する研究領域で、Beyond Synchronyというテーマが掲げられている。個人内/個人間で身体動作などが同期するという単純なシンクロ現象を越えて、モダリティや種を越えたモノ同士の同期や協調、同期しないこと(ずれ、時間的な前後関係、ターンテイキングなど)の意味、対称から非対称へ(相補的関係、Leader-Follower関係など)、また、教育や医療などの実践におけるシンクロなど、複雑なシンクロ現象の側面が明らかにされてきたのだ。本企画では、このような動向を踏まえ、単純なシンクロを越えて複雑なインタラクションの実態にアプローチし、その際のキーワードとして「間合い」を考えたい。

(ゲスト企画者:児玉謙太郎(神奈川大学),清水大地(東京大学))

  • 日程

2018年11月17日(土)12:30-17:50

  • 場所

東京大学本郷キャンパス教育学部棟 158号室

  • テーマ

「Beyond Synchrony To Maai」および一般

  • 招待講演

    • 岡崎俊太郎氏(早稲田大学)

    • 藤原健氏(大阪経済大学)

  • プログラム

12:30-14:00 テーマセッション「Beyond Synchrony To Maai」

12:30-12:40 テーマ趣旨説明

児玉謙太郎(神奈川大学),清水大地(東京大学)

12:40-13:20

「小空間でのインタラクションの時間・空間的変化 -茶事とトランプ配りの事例から-」(発表原稿PDF)

佐野奈緒子(東京電機大学),古賀誉章(宇都宮大学),土田義郎(金沢工業大学)

建築学においてコミュニケーションを促し、また隔てる空間について検討するために、発声や体動による情報とそれが伝搬される時間・空間と伝搬過程に注目して検討を行っている。本報告では、インタラクション時に生じる体動の引き込みに注目し、①茶事における亭主と客のインタラクションの時間的変化、および②小空間における2者間での共同作業(トランプ配り)時の、対人距離と室空間の広さの違いによるインタラクションの変化について、体動の加速度の相互相関により検討した。

13:20-14:00

「理学・作業療法士によるハンドリング技術の分析 ー熟練セラピストが感じる知覚に支えられた周囲とのインタラクションとは?ー」(発表原稿PDF)

宮本一巧(地域医療機構りつりん病院),阪上雅昭(京都大学),塩瀬隆之(京都大学)

理学・作業療法士は治療の中で、患者の身体に直接的に手を添え、行為の遂行を支援していく場面が多々ある。このような徒手的介入の総称を「ハンドリング(handling)」という。しかし、その技術は経験主義的な部分に負うところが多く、技術を伝達していくには困難を伴う。本研究は、起立動作に対するハンドリングにおいて、運動学的なデータから熟練者と非熟練者を比較することで、まずは熟練者が持つ技術の高さを示す。加えて、熟練者が「協応する身体」として知覚している周囲(患者の身体や支持面など)との複雑なインタラクションについて「間合い」を踏まえて述べる。

14:10-15:10 招待講演(1)

「二者間の非対称な情報伝達が同期を超えた社会的相互作用を成立させる」

岡崎俊太郎氏(早稲田大学)

「なぜ我々は社会的相互作用をするのか?」という問に対して,これまでは同期(synchrony)という複数の生体システムが自然に組織化される現象を中心に研究がなされている。一方で単純なsynchronyに陥ることなく安定した状態を取れる社会的行為を分析した例は希少だが,最初の問に対する包括的な理解に重要である。本発表では,二者が個別の目標や意図を持って社会的相互作用する例である「教育」と「追いかけっこ」を対象とした実験を紹介する。二者間の相互作用を因果的影響量とインパルス応答から分析することで,二者間の非対称な情報交換がsynchronyを超えた社会的相互作用に重要であることがわかった。

15:20-16:20 招待講演(2)

「リズム同期の輪郭:二者,小集団の相互作用場面を対象とした検討」

藤原健氏(大阪経済大学)

相互作用する個体の間に同期(synchrony)が生じることは,多くの研究で示されてきました。本発表では,人―人相互作用において生じる同期現象の輪郭を描き出すべく,同期に先立つ要因や同期が生じることによる社会的な帰結について,二者や小集団の相互作用場面を対象に行ってきた実験研究をご紹介します。発表者のバックグラウンドは社会心理学ですが,より多様な分野の先生方と研究交流できるのを楽しみにしております。

16:30-17:50 一般セッション

16:30-17:10

「歩行中のモノの知覚と行動調整 ―身体部位によって異なる"間合い"のとりかたー」 (発表原稿PDF)

渡邉諒(首都大学東京),樋口貴広(首都大学東京)

日常場面では,身体にモノを身に着けた状態で巧みに行動を行うことができる。こうした状況では,視覚情報以外に,身体の接触部から触覚を通じてモノの空間位置を知覚し,環境物との位置関係の中で動作を調整していく必要がある。本発表者は,ダイナミックタッチと呼ばれる触覚プロセスに着目した研究を通じ,歩行時にも物体の抵抗感の情報を利用することでモノの位置を認識し,その情報を環境物との距離の調整に利用していることを報告する。

17:10-17:50

「保育園におけるリフレクション実践 −「遊び」を捉える方法の模索−」

桑山菊夏(慶應義塾大学),大塚裕子(子中保育園/公立はこだて未来大学),桑田幸生(子中保育園),篠香澄(子中保育園),大野亜海(子中保育園),伊藤千晶(子中保育園),諏訪正樹(慶應義塾大学)

保育園にいる子どもたちは、没頭し、迷い、互いに触れ合いながら遊ぶ。その遊びかたに、保育士は、それぞれの視点から多様なやりかたで寄り添う。その場にいる人々の行為が遊びの成り立つ空間を生み出しており、その空間には多様な間合いが共存すると考えられる。筆頭著者は、自らと子どもがどのようにその空間を成り立たせるか、ある一場面について省察する。さらに、保育士たちの視点を得ながら対話的に省察を重ねることで、空間の生み出し方を多角的に捉えることを試みる。