20回研究会

第20回研究会では,「アフォーダンスと間合い」というテーマを設け,青山慶氏(岩手大学)に招待講演をお願いしました


  • テーマ趣旨

従来,アフォーダンスは行為主体と対象物や環境との間,間合いは行為主体同士の間の関係性をそれぞれ対象として用いられることが多かったが,この状況はいかにももったいない.行為主体と対象物の間の「間合い」という議論も,行為主体同士の間での「アフォーダンス」という議論も成り立ちそうに思える場面も多いからだ.その一方で,これらの概念が完全に同じものだということにもおそらくならないと思われる.では,これら両概念の間にはどのような共通点と相違点があるのか.アフォーダンスは本研究会の設立以来掲げられてきた重要キーワードの一つであるものの,これまではこれを正面から扱った発表やディスカッションの機会は必ずしも多くなかった.そこで,今回はこうした理論的な側面により踏み込んだ未来展望型の議論を集中的に行えればと考えている.
(企画者:高梨克也(滋賀県立大学))

  • 日程

2022年2月27日(日)11:00-18:00

  • 場所

オンライン開催(Zoomを使用)

  • 参加費用

無料

  • テーマ

「アフォーダンスと間合い」および一般

  • 招待講演

青山慶氏(岩手大学)「間合いと出会い:行動はなにを制御しようとしているのか」

  • プログラム

11:00-11:10 開会挨拶・事務連絡

11:10-12:30 一般セッション(1)

11:10-11:50

「学習塾内自習室における自己調整行動と親和性に関する研究」(発表原稿PDF)

浅見貴則(東京工業大学)

学習塾内に設けられている自習室では、塾生徒複数人が同時に自習することが多い。自習者は、はかどらない時に自分のペースで休憩したり席を立ったりして自己調整を行う。その際、自習空間内の他の自習者の様子や自習空間全体の雰囲気を見て、その行動を取っていいかどうかを判断している。本研究では、自習空間における自習者の自己調整行動と、自己調整行動に影響を与えると考えられる他の自習者との親和性や自習空間の親和性との関係について、間合いという切り口から考察する。

11:50-12:30

「鉄道駅自動改札口における利用客どうしの回避行動」(発表原稿PDF)

海野瀨志乃(早稲田大学),細馬宏通(早稲田大学)

近年の鉄道駅自動改札口には、双方向から利用できるようになっているものがある。見知らぬ利用者どうしは、改札口にアプローチする際、どのようにお互いの利用時空間を調整し、衝突を回避しているのか。本研究では、一つの改札口の両端から複数名が同時に利用を試みる25例を分析し、参加者がお互いの視線・動作を変化させながらお互いの進路を予測し、行動を変化させていく過程を記述した。この結果について、Goffman(1971)のBody Gloss、Scanning概念を用いて考察を行った。

13:30-14:50 一般セッション(2)

13:30-14:10

「サッカーの間合い ―ボールを触りそうな契機(Likely to Touch)における選手間の相互作用―」(発表原稿PDF)

山本研(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)

サッカーの間合いについて、事例を微視的に分析することで明らかにすることを試みた。選手の意図と行為の時空間的な相互作用について、選手の、「ボールを触りそうな契機(Likely to Touch)」というオリジナルな概念を導入して分析することで、より詳細かつ豊かな様相を提示するに至った。また、Likely to Touchの瞬間に、各選手間で生じる「受動性」のやりとりについても分析を試みた。第17回の間合い研究会で発表した際の「選択可能性」も扱いながら、サッカーにおける間合いについて論じる。

14:10-14:50

「水を編むまち「三茶」-まち歩きの眼差しの体得-」(発表原稿PDF)

上羅裕加(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)

本研究は三軒茶屋というまちを対象に、「まち歩きの眼差し」の体得を探求したものである。手法として写真日記を取り入れ、著者が82個の「まち歩きの眼差し」を見出した過程を論じている。まちに身体が誘われるかのようなエネルギーを感じとり、著者が「まち歩きモード」に入った事例や、暗渠という水空間に着眼し始め「暗渠空間に潜みたくなる」という意識が生まれた事例を写真日記から分析した。著者のまちを観る眼が変わるにつれて、まちと著者のあいだに新たな「間合い」が形成されたことを主張したい。

15:00-18:00 テーマセッション「アフォーダンスと間合い」

15:00-16:00 招待講演

「間合いと出会い:行動はなにを制御しようとしているのか」

青山慶氏(岩手大学)

本発表では、J.J.ギブソンの直接知覚論の展開であるエンカウンター(出会い)の概念を中心に、「間合いと出会い」について検討したい。前半では、ギブソンによる初期の研究、Gibson(1979)から第13章の「移動と操作」についての議論、その展開としてエンカウンターの概念を紹介する。後半では、複数の行為主体が関わるような場面をいくつか紹介しながら、具体的に「間合いと出会い」について検討する。

16:10-16:50

「アフォーダンスと間合いの精神病理」(発表原稿PDF)

加藤圭祐(京都大学)

心の病とは何か。心の複雑性を考えた時、その病は個人のなかで生じている出来事にとどまらず、他者や環境など様々な要因が絡み合いながら生じる問題と捉えられる。だからこそ主体と他者・環境とのインタラクションを想定した「アフォーダンス」や「間合い」の視点から、心の病を検討することに大きな意義がある。本研究は、心の病をアフォーダンスや間合いとの関連から考察することを目的とする。

17:00-18:00 総合討論

司会:高梨克也(滋賀県立大学)

登壇者:青山慶氏(岩手大学)ほか