• 第8回研究会
第8回研究会では,「<動物=動くもの>どうしの間合い」というテーマを設け,動物行動学がご専門の藪田慎司氏(帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科)およびストリートダンスの身体表現について研究されている清水大地氏(東京大学大学院教育学研究科)に招待講演をお願いしました.

[テーマ趣旨]
間合いについて考える際,個体間での身体表現を用いたインタラクションのダイナミズムを微細に捉えることが重要になる.しかし,個体間のインタラクションの代表例とも言える人間の会話ではインタラクションの構造が順番交替などの言語的なやり取りを中心として構成されている側面が大きいと考えられているため,身体動作を用いたディスプレイは
周辺的なものと位置づけられてしまうことも多い.そこで,今回は<動物=動くもの>というキーワードを掲げることによって,「間合い」というテーマについて,身体間の距離や身体の動きによる表現,互いに相手の動きを読み取って自らの身体の動きを調整していくといった側面からアプローチすることを試みたい.招待講演としては動物行動学におけるディスプレイ行動やブレイクダンスのバトル場面といった,身体表現を核としたやり取りを対象とした話題を予定しているが,もちろん,言語を用いたインタラクションについても,そこに見られる身体動作の役割を焦点としたものなどは本テーマに強く関わるものであると考えている.

・日程:2017年6月11日(日)13:00-17:50
・場所:慶應義塾大学三田キャンパス大学院校舎1階313教室
・テーマ:「<動物=動くもの>どうしの間合い」および一般
・招待講演:藪田慎司氏(帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科)
      清水大地氏(東京大学大学院教育学研究科)

プログラム

13:00-14:10 招待講演(1)

「動物の『出会い』と『間合い』と『ディスプレイ』」
藪田慎司氏(帝京科学大学)

動物の個体同士の出会いにおいて「間合い」はどうなっているのだろう.古典的な動物行動学では,動物の個体間距離について,「攻撃距離」「逃避距離」「臨界距離」,あるいは「個体距離」「社会距離」といった概念と言葉が使われてきた.しかし,このような距離(=「間合い」)は固定したものではなく,出会った相手の行動によっても変わってくる.本発表では,動物の個体間の出会いの映像を見ながら,彼らの「出会い」時の「間合い」に,「ディスプレイ」行動がどのように影響を与えているかを見ていくことにする.「ディスプレイ」とは,動物が社会的出会いで用いる定型的行動パターンで,信号機能を果たしているとされる行為である.

14:20-15:30 招待講演(2)

「ブレイクダンスにおける共演者との相互作用:距離を用いた検討」
清水大地氏(東京大学)

舞台表現,特に即興的にパフォーマンスが営まれていく活動では,共演者や観客,音楽といった様々な要素との豊かな関わり合いを披露することで,魅力的なパフォーマンスが構築されていく.本研究ではブレイクダンスのバトル場面,サイファー場面という競争的・協働的な性質を有する活動を取り上げ,ダンサー同士の距離を指標とし,パフォーマンス中の相互作用の解明を試みた.熟達者を対象にした実験を行った結果,距離に関して,一定の時間経過に伴って変化する動的なパターン性が現れる可能性が示唆されている.

15:40-17:00 テーマセッション「<動物=動くもの>どうしの間合い」

15:40-16:20
「サッカーにおける攻撃側チームによる時空間的余裕の貯金:
 「ボールへの予測到達時間」の相対差の最適化への志向」(発表原稿PDF)
高梨克也(京都大学)

対人球技のうち,ゴール型かつ多人数型のゲームであるサッカーにおいては,攻守のどちらのチームの選手もボールに直接関与できるため(高梨2015a),個々の選手の行動は各選手間での「ボールへの予測到達時間」の相対比較に基づいて選択されることになる(高梨2015b).これらの考察に基づき,今回の発表では,攻撃側チームが個々のパス交換の機会に「ボール保持可能かつ最少」の予測到達時間の差に志向してプレーすることによって,一連のパス交換を通じて,プレーのための時空間的余裕をチームとして蓄積していくことが可能になっていることを例証する.

16:20-17:00
「「動き」を介した相互行為における一体感の醸成」
幸田瑞希(日本女子大学)

日々の生活の中で、私たちは発話だけでなく他者の「動き」を資源として行動している。それにより、参与者間の一体感が醸し出されていると感じることがある。ここでの「一体感」は、相互行為における間合いのひとつの姿と捉えられる。本発表では1) 立ち話において周囲の人々の振る舞いを気にかけて会話を中断、再開、終了する場面、2) 厨房において調理人同士が互いに相手の作業状況を見て自らの行動を選択する場面を観察し、そこで醸し出される一体感としての間合いを考察する。

17:10-17:50 一般セッション

17:10-17:50
「創作に着目したダンス教育プログラムのデザインとその効果:
 他者との関わり合いに焦点をあてて」
中野優子,清水大地,岡田猛(東京大学)

ダンスが専門ではない大学生の「ダンス創作」を活発に引き起こすにはどのような仕組みが必要であろうか。またそのような大学生が「ダンス創作」を存分に体験することでどのような効果がもたらされるのか。本発表では、著者らがDBR(Design-based research)の枠組みに則り、実証研究と教育実践を繰り返す中で構築したデザインの指針に基づき、デザインした教育実践のうちの「他者と積極的に関わりながら」ダンスを生み出し,作品として精緻化・発展することに着目したものを中心に紹介する。